今週のもう一つの目的は”真空管一本勝負”の収録でした。4月から
”大橋慎の真空管ワンダーランド”(三時間の帯番組)になってその前編が”一本勝負”な訳ですが、今回は
初心者のための真空管アンプ一本勝負 その3「送信管アンプ編」(OA:6/14(金)20時~21時)
からスタート。シングルアンプの冴え冴えとした音の良さ+プッシュプル並みの大出力を兼備した、或る意味究極の存在として改めて注目を集めている送信管アンプの特集です。アンプは
SV-S1628D固定で211を3種類, 845を3種類聴き較べました。

そしてもう一本は
現行300B一本勝負(OA:6/28(金)20時~21時)
オーディオ用の真空管で最も人気のある300Bの代表的現行球と廉価帯から高級ゾーンまで一気に聴き較べよう!という人気シリーズの最新版です。

アンプは
SV-S1616D。これは新進の真空管ブランド
ELROG社のER300Bです。その他 参考出品で本家WE300B(9952)も登場したり…必聴です。


これが今回登場した300Bたち
実は今回の2本録りで共通テーマがありました。それは以前お知らせしたNATURE SOUND(林籟之音)という謎の新進ブランドから出ている真空管についてです。
きっかけは
こちらをご覧ください。このポストを行った直後かなりの反響があって”NATUREのWE300BとPSVANE WE300Bはブランド違いなだけで同じモノ(OEM)なのか?、或いは似て非なるものなのか?”という憶測を含んだ議論が巻き起こりました。それも当然で見た目は本当に良く似ている…というか瓜二つですから無理からぬことです。
そこで今回はNATUREを販売されている秋葉原の
クラシックコンポーネンツさんに協力をいただきPSVANE WEとNATURE WEを番組の中で比較試聴しているのがハイライトと言えるでしょう。

これは211の比較。左がPSVANE WE211。右がNATURE WE211です。ベースの仕上げが僅かに異なりますが外観は全く同じといっても過言ではありません。

そして300B。ガラスの大きさが外観上の差異ですが、
以前別の個体で比較した時はここまでのサイズ差はありませんでしたので或いは個体差かもしれません。内部構造,電極の仕上げ等に明示的差異はありません。
収録前、私個人としては”NATUREはPSVANEのOEM品だろう”と内心思っておりました。同じ湖南省長沙市で設立年次も近いことから両社は何らかの関係性があるのではないかという根拠のない推測です。しかし音を聴いてみないと分からない…そこで今回の収録では公開の場でリスナーの皆さんにも音を聴いて頂いて独断と偏見で判定してしまおう!という内容になった訳です。
音の違いは是非OAをお聴き頂き、ご自身の耳で判断をお願いしたいと思うのですが、私と永世ゲストTさん、そして収録に立ち会って下さったプロデューサーIさん共通の判断は”似てはいるが別のモノではないか?”という判定となりました。あくまでN数(被検個体数)=1という状態ですので、本当のところは現地へ行かない限り不明です。
ただしWE211については明らかにPSVANE WEの方が2本ともフィラメントの輝度が高かったこと、そしてWE300Bに関しては今回の比較で言うと外形サイズの差異がかなり大きかったこと、そして何より音の違い…WE211に関してはPSVANEの方がレゾナンス(響き)に深さがあり響きが豊かであったことが判断の根拠となりました。WE300BにおいてはNATUREはたいへん良い音でした。一般的な現行300Bよりも音の奥行き感(音場表現)が見事で通常の300Bの倍(以上)の価格差以上のグレード感は確かにあったと思います。
しかし、です。PSVANE WE300Bは更に一枚うわてであったと言うのが偽らざる印象です。音の色気と言うと余りに定性的と言われるかもしれませんが、倍音の質においてPSVANE WEの方が飴色の芳香を湛えている、言い換えればNATURE WEの方がクリアでサッパリしていると言えるかもしれません。
…という訳で今回の暫定的仮説としては両者は極めて近似していて共通のマテリアル(部材)も採用しながら細部において異なる仕様(ではないか)というのがスタジオに居合わせた全員の結論であったことをご報告したいと思います。いずれより正確で詳細な情報が入る可能性は十分にありますし、幾分NATURE WEの方がPSVANE WEよりも価格的に安いことを差し引いてもNATURE WEが品質的,音質的にも大変よく出来た真空管であることが確認出来、大きな収穫があった今回の収録でありました。