今週の東京は西麻布からスタート。

これまで何度かお邪魔したミキサーズ・ラボ。日本を代表するレコーディングスタジオの一つです。今回の目的はレジェンド高田英男さんとの対談。高田さんのことは皆さんご存じだと思いますが、本ブログだけでも数多くの
高田さんネタが出てくるほどの方。今年でレコーディングエンジニア歴50年ということで改めて高田さんの音楽観やレコーディングエンジニアとしての想いを伺ってきました。

いつも心躍るスタジオ。私たちオーディオファンにとって最も神聖な場所の一つです。この日もメジャーな歌手が歌入れで使っておられました。

意外と思われるかもしれませんが、ミキサーズ・ラボに限らずハイグレードなスタジオではマイク,コンプ,イコライザー等に真空管機器が今でも当たり前のように使われており、ゴージャスなスタジオほどその傾向が顕著です。上の写真のレコーダーやメインの卓に至るまでアナログ環境でないと出ない質感が重視されていると言い換えても良いでしょう。

対談の内容はいずれ陽の目をみた段階で改めてお知らせしたいと思っていますが、
演奏も録音も再生も最終的には人の力(感性と言い換えても良いかもしれません)によって創りあげられるものであるという一点に集約されるように思います。それは同時にオーディオ再生においても使う側の感性と経験が大きくモノを言うという点において全く変わりません。
以前から「原音」の定義について私は"心の中でいつも想い願っている「こう鳴って欲しい」というイメージそのもの"と申し上げてきました。CDのピット,LPの溝に刻まれている信号そのままに再生すること以上に「なんて美しい音だろう」と思えるような再生に自らが積極的に関与出来ることこそがオーディオの最大の魅力ではないかと常々考えているからです。
もし客観的,物理的"原音"なるものが本当に存在し、それを十全に再生できる装置があるならば世のオーディオは一種類あれば事足りる筈です。しかし世の中にはオーディオ機器が溢れています。それは言い換えれば機器の数だけ、人の数だけ"それぞれの原音"が存在するから・・・とは言えないでしょうか。無論私どもの機器が全ての方にとっての原音であると申し上げるつもりもありません。
高田さんは音を録る前にいつもミュージシャンに出したい音のイメージをしっかり聞いてから録音に入ると言われていました。つまり演奏する側のイメージを掴んでそれを音にして返す…そしてその音を聴いた本人が更に高まっていく。そのスパイラルアップがうまく行った時に本当に良い音楽が出来上がるのだ、とも仰っていました。
オーディオも当然押さえなければいけない基本をクリアしたうえで、聴く側である皆さんにとっての”原音”がどのベクトルなのかを理解して私ども提供側が如何に皆さんに寄り添えるかが問われている筈。その大切さを改めて思い出させてくれた高田さんとのひと時でした。