ヨドバシ試聴会ぶじ終了いたしました。会場にお越しいただいた全ての皆さんはもちろん、サポート下さった売場や本部の皆さんに改めて御礼申し上げます。とても楽しい二日間でした。
今までの東京試聴会は”サンバレーアンプ ユーザーの集い”的な感じがあって、それはそれでとても楽しかった訳ですが、昨日も書いた通り今回は新規の方が大半。皆さん本当に真剣にデモを聴いて下さったので喋る方の私も初心に立ち返ってお話が出来たと感じています。

結果的には従来の東京試聴会並みの来場者をお迎えすることが出来ましたし、ご注文も沢山…ビギナーズラックというには少々出来すぎな感じもします。
折角の機会なので今回どんなデモをしたか流れを振り返っておきたいと思います。まずは真空管アンプに共通した特徴としての豊かな高調波成分=倍音感について情報を共有しました。

しかしその倍音感は出力管によっても勿論変わるし、シングル/プッシュでも変化することをお知らせしたうえで、じゃあ実際に比較してみましょう!ということで最初に聴いたのがS1616D/KT88と300Bの比較です。

パワーアンプ以外は全て同条件であるのは当然ですが出力トランスも電源トランスも共通で異なるのは出力管とドライブ回路のみというS1616Dならではの特徴を活かしたシビアな比較が出来たと思います。実際この最初のA/B比較ではほぼ100%の方が300Bの方が中低域の響きが豊かであるという感想を持たれ、自分の耳に自信がないと仰る皆さんが実はちゃんと音の違いを感じておられることを自分で理解し自信をもつことが出来たと思います。
因みにリファレンスCDはこれ。

5曲目の”モナ・リザ”を聴くとイントロのアコースティックギターの胴鳴り,空間に拡がる響きの雰囲気が出力管によって別物のように変化します。聞き耳を立てている皆さんの顔を見ているとその違いにちょっとビックリされている様子が此方にも伝わってくるほどです。

続いての比較は同じKT88と300Bのプッシュプルです。単にプッシュは出力が大きいだけでなく、回路的にはシングルアンプのように直流磁化の影響がなく広帯域で素性の良さが得られやすい代わりに設計によってA級にもAB級にも出来、特に出力優先の設計をされているアンプは音質を犠牲にしている場合もあることをお話しました。P1616Dは定格出力の1/2まではA級で動作させていますのでその点は安心です。
もう一点大切なことはスピーカー側からの要求によって真空管アンプにも大出力化の波が来ていること。例えば能率92dBのスピーカーで得られる音量を能率86dBのスピーカーで出そうと思うと出力は実に4倍も必要であり、仮に能率92dBのスピーカーで2Wで聴いていたとすると86dBのスピーカーでは8W必要ということになりシングルアンプではギリギリである現実は押さえておかねばなりません。現在市場のスピーカーの能率を平均すると恐らく86dB~87dBあたりではないかと思いますので、最近特に多極管(KT88等)プッシュプルがシェアを伸ばしているのは考えてみれば当然のことなのかもしれません。
対して300Bプッシュプルは真空管アンプのカテゴリーの中でも最も趣味性の高い…言い換えればマニアックなソーン。

多くの300Bプッシュプルユーザーが大型フロアタイプのヴィンテージ系スピーカーであることをお伝えし、実際その濃い音を聴いていただくと納得される方も多かったようです。実際300Bシングルで十分と感じておられる方が多いなかで敢えてプッシュプルを高能率な大型スピーカーで使う…これこそが趣味の王道たる所以かもしれません。
ここまで真空管アンプの4類型(
昨日のブログ画像を参照)を体験しそれぞれの得失を理解したうえで実はユーザーだけでなくメーカーとしても”シングルアンプの音質でプッシュプル(並み)の出力”こそが理想の真空管アンプと考えている人が少なくない…例えば先日収録で聴かせて頂いた
CSポートの212PAがシングルで40W(以上)という実力も含め或る極致として捉える方が居るなかでサンバレーが90年代から一貫して845アンプを手掛け、現在も世界唯一の845キットサプライヤーであるのも、それだけニーズが高いからであることを改めて共有しました。

そして同じ直熱三極管でありながら中低域が豊かな300Bに対して中高域の倍音が立ち、いわゆる”音場感に優れた”再生が特徴の845という真空管の魅力も十分お伝え出来たのではないかと思っています。事実ヨドバシさんではS1628Dのセールスがダントツであるのも、この外観だけでなくスペックや音質的魅力も含めての反応でありましょう。
…だいたいこんな感じで1時間、もちろん曲も含めての話でありますが今回ヨドバシさんで行った”はじめての真空管アンプ”セミナーの流れでありました。
楽しかったのは最後のデモが終わってからのフリータイム。もう後は片付けだけで時間もあまり気にしないで良いという開放感も手伝って気が着くとオフ会状態でした。お客さんのCDでアンプを聴き較べて”300Bプッシュプルはいいねえ!”って皆さん盛り上がったりS1616Dの300Bを
ELROG 300B(独)に替えてみたり。アンプより出力管の方が遥かに高価という組合せですが、こんな実験も試聴会からではという感じで最後に心行くまで楽しませて頂きました。

片付けも終わりヨドバシさんと色々お話をさせて頂いたなかで今後定期的に年何回か秋葉原店でイベントできると良いね!というお話になりました。もし実現したら最高です。今までは年1~2回のイベントでしか関東地区の皆さんとお会い出来ませんでしたが、これからは気軽に”ヨドバシAKIBAで会いましょう”と言えますからね。
是非第二回にもご期待下さい!