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魔法のヴェール

今週末は東京で試聴会の打ち合わせやら納品やらで大変充実した時間を過ごすことが出来ました。まずは都内のKさん宅でのこと。
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まず私を迎え入れたのは巨大な送信管アンプ。先日の収録で聴いた4212かと思いきやKRのT1610という球。シングルで50W/chという大出力も然ることながらこれをステレオシャーシで製品化するところが凄いです。
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今回納品したのはプリアンプSV-300LB(右下)とSV-284D/845(上中央)の組合せ
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元々KさんはSV-2PP(2009)を2セット(4台)お持ちなのですが、シングルならではのキレを求められた結果導入されたのがSV-300LB/SV-284D直結の組合せ。今後はB&W 800D3の高域284D/低域SV-2PP(2009)のパッシブバイアンプはもちろん…
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SV-91B/PSVANE WE300B仕様+SV-284Dのブースターモードも当然視野に入ってくるでしょうし、いずれはSV-284D(2台)のバランスドシングルMONOへの発展も計画されていらっしゃる由。私どもとしては来月に都内でアヴァンギャルド(独)+SV-284Dの納品も控えており、ますますハイエンドスピーカーと真空管アンプの組合せがメジャーになっていくのは大変嬉しい事です。未だに腑に落ちないのは1桁~2桁ちがうスピーカーに当社の真空管アンプを使う方がどうしてこんなに増えているのか、という事です。
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Kさん宅のガレージで静かに開梱を待つsonus faberのIL CREMONESE(イル・クレモネーゼ)。ソナスのスピーカーを845と組合せた時の甘美なサウンドは定評のあるところ。次回お邪魔させて頂く時には是非聴かせて下さい、とお願いして失礼しました。

そしてもう一件…今回非常に興味深い体験をしたのでご紹介しておきます。場所は都内のライター鈴木裕さん宅。前回お邪魔したのが去年の6月。本当のはなし”の対談時ですので約8ヶ月ぶりということになります。きっかけは”聴かせたいものがあるんだけど少し時間ない?…”とお誘いを頂いたこと。事前に読んでおいて、と言われたのが鈴木さんが書いたこのコラムでした。

テーマは”電磁波”。オーディオは物理的にも電気的にも常に振動に晒されている…というのはよく言われる話ですが、外来の波、それも電磁波の影響がどれほどのものかを体験したことは今まで一度もありません。
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最初お部屋に入った時は逆光でよく分からなかったのですが、アンプに目を遣ると…
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これが鈴木さんの仰るヴェール。アンプに飛び込む電磁波を対策した結果の姿ということなのでしょうか。
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その前に先ず"並列型電源フィルター”のありとなしの比較実験からスタート。つまり電源由来のノイズ対策の効果や如何に?を聴いてみようという訳です。鈴木さんクラスともなると電源ラインの引き回しも極めて構築的で造形的美しさも感じる訳ですが注目すべきは引き回しでなくテーブルタップの空き口に挿入されているACアダプター程度の大きさのアタッチメント。これが並列型電源フィルターです。

詳細は鈴木さんのコラムを読んで頂くとして、結論から言うとリスニンポイントから”見える”音像の高さ(鈴木さんのスピーカーAVALONはまさに音がスピーカーから離れてポッカリと浮かんで見えるよう)が僅かに下がって聴こえること。それは高域情報が減ったのではなく、むしろ逆に三次元的定位が深くなり聴感上のSNが上がっているにも関わらず中低域の弾力が増している感覚と書くと分かりやすいかもしれません。鈴木さんによれば時間帯や平日/土日で電源の汚れ方には差異があり、効果も変化するとのことでしたが、私がお邪魔した週末の昼間でもしっかり効果が確認出来ました。

オーディオアクセサリーは使い方を誤ると音が引き算されていってギスギスの骸骨のような音になって場合によって逆効果となる印象が拭い去れなかったことを吐露しますが、鈴木さん宅では対策が音の色彩感,空気感,密度感,実体感…全てプラスに効いているところが素晴らしい。

そして更に凄かったのが上の写真のヴェール。商品名は「アダマンタンADM- 003」というもので有り体に言えばステンレスの極細目の金網(太さ3/100ミリ)ですが、触ってみると非常にしなやかで金属感はほとんどありません。米軍規格MIL-STD285,IEEE-Standard 299-1997という国際規格をクリアした優れものです。技術的資料(電磁波除去能力)はこちら
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よく私たちの身の回りには見えない電磁波の嵐が吹き荒れている、なんて言ったりしますが実感としては殆んどありません。しかし実際には無数の電磁波が常時私たちの体を貫通しているのは事実ですし、真空のガラス管の中で陰極(カソード)から陽極(プレート)に向かって引っ張られている熱電子がその嵐の影響を少なからず受けているだろうことは想像に難くありません。鈴木さんはそれを実証的に確認してみないか?と私を誘って下さった訳です。

真空管アンプにおいて熱源である真空管が露出しているのは放熱の見地から言えば必然の形であり、真空管100年の歴史の中でも基本的に変わっていません。しかし電磁波の影響という目線で比較した時、真空管が発明された1920年頃と今では全く状況は違う筈です。

実験はヴェールありとなし以外のパラメーターは一切不変とし、同じ曲の同じ部分を同じゲインで聴いてみます。正直言って聴くまでは半信半疑です。リスニングポイントで写真を撮ったりしていたのですが…
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最初にヴェールあり、その後にヴェールなし…その差は上の並列型電源フィルターの比ではありませんでした。先ほどまで感じていたハイエンド機器にありがちな無機質な感じの全くないリッチな音色と極めて見通しの良い音場の完璧なまでのバランス感と比較して、まず空間(特に奥行き)がいきなり半減し高域が荒れて賑やかな印象に変化。聴かせて頂いた11.2MHz/DSDの曲目は分かりませんが、声の立ち上がりの直前のふわっと一瞬揺らぐ空気感が何処かへ行ってしまいました。

語彙がプアで良い例えが見つかりませんがデジカメで撮った画像を専用のアプリケーションでコントラストを上げると明暗がはっきりしてパッと見きれいになったようで実は陰影感やグラデーションが飛んでしまったような…そんな差異です。少々呆気にとられながらも鈴木さんに感想を申し上げると”やはりそういう風に聴こえましたか。真空管アンプを作っている人にこの違いを知って頂くことは決して無意味ではないと思ったので誘ったんです”と初めて真意を教えて下さいました。

この差異が全ての真空管アンプで現れるかどうかは検証が必要です。845という高電圧/大電流の出力管で一本当たり約100mAも流している状態のA級プッシュプルだからこの差異なのか、東京都内の住宅街という環境も影響しているのか…鈴木さんによればPCが多く稼働している時間帯ほど差異が大きいとのことでした。

この実験、追試は容易ですが一点だけ十分にお気をつけ頂きたいことがあるのは、このヴェールが金属製であるということ。基本的に活電部がシャーシに出ているアンプは殆どないと思いますが万一スピーカーターミナルのHOT(+)とCOLD(-)がこのヴェールによってショート状態になると間違いなく大事故となりますし、それによって発生する損害は自己責任になるでしょう。特にYラグや電極が露出しているバナナプラグをお使いの方は細心の注意をすべきです。

鈴木さんはこれをオーディオの対策として広く知らしめるのでなく、あくまで実験としてレポートされたに過ぎないことを私からも明確にお伝えしたいと思いますが、それにしても今回の体験は実に啓示的でありました。長期的に見れば今後の真空管アンプデザインに一石を投じる…そんな可能性すら感じたひと時でした。

(追記)鈴木さんから追加情報を頂戴しました。

1)電磁波遮断効果を確認した音源
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2)その他の電磁波対策アクセサリー

今回は聴けませんでしたが鈴木さんによれば大きな効果が得られたものとして、電源トランスから発生する電磁波を中和するアクセサリーのご紹介も頂きました。電源トランスの下に置くと良いそうです。
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by audiokaleidoscope | 2019-02-03 23:59 | オーディオ

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