2019年最初の収録…そして真空管オーディオ大放談最後の収録(二本録り)。一本目はハイエンドブランド特集第七弾”CSポート大研究”でした。
これまで
EAR,
フェーズメーション,オーディオノート,
ウエスギ,
ウェーバック,
オーロラサウンドという個性豊かなハイエンド真空管アンプブランドの音を聴いてきたこの番組ですが、今回は2014年にデビューし業界の話題を席巻した
CSポートの音の魅力に迫っています。オンエアは3/1(金)20時~22時です。

収録前にプリヒートされるパワーアンプ
212PA。この大きさをどうお伝えしたら良いのでしょう…写真の出力管
STC 4212Eは全高約35㎝,直径約10㎝…例えが適切かどうか分かりませんが大根くらいの大きさですからアンプのサイズ感がお分かり頂けるかもしれません。
4212Eは電気的定格も図抜けていてフィラメント14V/6A,プレート最大定格3kV/350mA(プレート損失275W)といいますから845/211がヒヨッコに見えるほどのスーパーチューブ。これを1.4kV/130mAという余裕あるオペレーションで動作させているとはいえ通常の電源回路でこれを実現させようとすると更に非現実的なサイズ,重量,消費電力となってしまいます。
そこでCSポートでは専用の高圧スイッチング電源技術を駆使し実消費電力400W/台に収めているところが大きな特徴でしょう。最大出力は公称40W/chとなっていますがこれはTHD1%時の値ということですので実出力は低く見積もっても50W(以上)といえます。
番組ではまずフロントエンドから…フォノイコライザー
C3EQ, プリアンプ
C3PRを試聴します。これまでの大研究シリーズの経験同様、ハイエンド機器ならではのSNの良さが際立っていることを先ず特筆しておきます。C3EQがバッテリードライブという点が大きな魅力となっておりトランス入力(MC専用),トランス出力という拘りも含め大変魅力的なフォノEQでした。なにより音が温かい、そして自然。

C3PRもC3EQ同様トランス入力,トランス出力のラインプリで無帰還というところがポイント。C3EQ+C3PRの組合せでは単にSNが高いだけでなく音そのものの温度感が高く帯域バランスが適切で高域,低域の質感が極めてニュートラルであるところに非常に好感をもちました。
注意点としてはC3PRの入力インピーダンスが7kΩというところ。一般的な真空管プリの入力インピーダンスは50k~250k程度ですからかなり低い訳ですが、フォノEQ側の出力インピーダンスは1.5kΩ以下であれば問題ないとのことでした。個人的には電気的にも音色的にもセットで使うことで最良の結果が出る組合せだと感じました。
続いて212PAを加えたフルCSポートシステムでの試聴に入ります。212PAをスタジオに移動してスイッチON。しばらくするとこの手の大型送信管がそうであるようにプレートが赤熱しはじめました。これが試聴OKのサインです。

212PAの他のCSポート機器同様、入出力にトランスを配し且つ無帰還となっています。845や211アンプでは音色を整える目的も含め軽くNFBをかけることが常道ですが、無帰還アンプに散見される高域の暴れや滲み感は微塵もなく且つしっかりと低域が制動されていて高域から低域まで音色が変わらずに聴感上の位相特性が優れていることが大きな魅力です。
本モデルを企画,設計した町野さんは”シングルでなければならない、プッシュはもちろんパラシングルですら音は濁っていると感じる。その当然の帰結としてシングルで大出力が得られる212(4212E)に辿りついた”とのことでした。電源のプロが目指したSNの高さと音色の色付けのなさ。でも明らかに真空管の音色(ねいろ)と響きを感じるCSポートの音。これまでのハイエンドブランド研究シリーズのなかでもトップ3に入る結果(音)であったと感じています。

前列左が町野社長。右が技術顧問の高松さん。髙松さんはアキュフェーズで専務をされていた方で各地のオーディオショーで髙松さんのデモを聴かれた方もたくさんいらっしゃる筈。私は20数年ぶりの再会で久しぶりに大先輩のお話をお伺い出来てとても嬉しかったです。6月のOTOTENでの再会を約束して1本目が終了。
そして収録2本目(オンエア3/15 20:00~)は「ありがとう!真空管オーディオ大放談」というタイトル。2015年4月から約4年間にわたり沢山のゲストの皆さんと沢山のリスナーの皆さんに支えて頂きながら番組を作ってきた訳ですが、ついに最終回の収録となりました。
いつもはスタジオの多くのアンプを持ち込んで音を聴いて頂く訳ですが、最終回は永世ゲストであり大切な友人でもあるTさんと共に4年間の歴史を振り返りながら、この番組で掛けてきた様々な楽曲を聴きつつ2時間思い出話に浸ってみようということになりました。


これが番組全104回のリストです。第二期(2016/1以降)にTさんがこの番組に参画されたことで大きく流れが変わりました。それぞれに思い出があるのはもちろんですが、何より音楽とオーディオを通して沢山の方と出会えたことが最大のご褒美ではなかったかと思っています。業界の重鎮と言われる皆さんや最前線で活躍する第一人者はもちろん、同じ業界でお互いに切磋琢磨している先輩や仲間とこの番組を一緒に作ってこられたことが大きな誇りとなりました。そして昨年10月には番組本
「大橋慎の真空管・オーディオのはなし」が刊行されたことも本当に名誉なことでありました。
4月以降に関しては全く分かっていませんが、ひとまずここで大きな区切りを迎えることとなりました。これまで番組を聴き一緒に笑い、頷き、そして一緒にオーディオについて考えて下さった全ての皆さんに心より御礼を申し上げたいと思います。
