先日ご紹介した
音楽之友社「Stereo」誌 10月号の見本誌が今日届きました。特集”秋の夜長の真空管”がどんなものか楽しみにしていたのです。
オーディオ系に限らず、この20年で雑誌の在り様は随分変わりました。既に情報は有価でなくとも幾らでもネット経由で入手できる時代。レストランでいえばお品書きや価格表は店に行かずとも事前に分かる世の中です。皆さんが重視するのは”クチコミ”…行ってみてお店が清潔だったのか、店員さんのサービスは良かったのか、肝心の料理は美味しかったのか…そういうスペックに現れない何かに価値が見いだされる時代になってきたのかもしれません。
オーディオもまたしかり、です。アンプで言えば出力,周波数特性,歪率,ゲイン…例えば300Bシングルでいえばどのメーカーもスペック的には似たり寄ったりな訳です。つまり数字は見えて本質はなかなか見えにくい。言い換えれば自分が求めるアンプかどうかはなかなか伝わってこない。
そういう背景もあって写真とスペックと技術的特徴と識者のコメントで成り立つ製品の紹介記事に対する重要性というのは残念ながら相対的に下がっていると言わざるを得ません。特に近年若者のオーディオ離れや活字離れも相まって各誌さまざまな工夫を凝らしています。
Stereo誌はオーディオ雑誌では前例のなかった付録つき(デジタルアンプ,スピーカーユニット等)企画で先んじ、それだけでなく付録を素材としたコンテストの開催などで多くの読者の関心と共感をあつめています。そう、今読者が求めているのは情報でなく共感そのものである訳です。
発売されたばかりの10月号でも単なる製品批評的な記事に留まらない様々なアイディアが垣間見られます。韻文的な格調高い評論よりもリアリズムを感じる散文的気軽さのなかに内在している真実は何かを探している読者のニーズに寄り添おうという姿勢が受け入れられているのでしょう。
”秋の夜長の真空管”特集のなかで、30年ぶりにハンダごてを握るというカメラマンTさんが悪戦苦闘しながら
JB-320LMを組むという記事。そのレポートを通じて多くの読者の皆さんは”自分にもできるかな?”という想いを寄せておられるのでしょう。三人称的(論評的)記事が当たり前だったオーディオ雑誌が一人称的ドキュメンタリーになっている…とても良いことだと思います。

写真掲載許可:Stereo編集部
今回の製作記事は6ページ。締め切りに追われながら頑張るカメラマンTさんのモノづくりの記録です。いちユーザーの目線で書かれているリアリズムはどんな評論記事よりも参考になるかもしれません。

別のページでは平間さんが当社ショールームにお越しになって
ケーブル大会をやった時の記事も出ていました。この際に写真を撮りレポートを書かれているのが今回JB-320LMを組んで下さったTさんその人。この時にはアンプ製作の話なんて全く無かった訳ですから、ご縁というのは本当に不思議なものです。
世の中がどんどん変化していくなかでオーディオ業界だけが旧態依然としているようではいけません。Stereo誌が照らした私たちが向かうべき先に目線を向けて私たちメーカーサイドも変わっていく必要を感じたStereo10月号でした。