如何に雨を降らせるか…井筒さんのLPに賭けた生島さんの想い

今週は予期せぬAMAZON旋風が巻き起こったりしてバタバタだった訳ですが、その他にも重要な出来事が幾つかありました。今日はその一つ、真空管オーディオフェアのメインイベント

10/8(祝)16:00~17:00
井筒香奈江 新譜LP”Laidback2018”発売記念トークショー
出演:井筒香奈江(シンガー),高田英男(レコーディング・エンジニア),生島昇(ディスクユニオンjazzTOKYO)

の打ち合わせをしてきましたので、そのレポートを…。

このイベントではレコーディングを担当したレジェンド高田英男さん(ミキサーズ・ラボ)と今回のフルLPのディレクションを担当した生島昇さん(ディスクユニオンjazzTOKYO店長)と井筒さん本人の鼎談を通じて如何にLaidback2018というプロジェクトが特別なものであったか、その一端は以前このブログでも書きましたので、ご記憶の方もおられるかもしれません。

その後、ハイレゾ版や日本オーディオ協会の11.2MHzマスターのLP(三曲収録)を経て10/10(水)に全曲所蔵のLPが発売されることになりました。詳細は

TWITTER
https://twitter.com/JazzTOKYO/status/1039835605016825856

BLOG
http://blog-jazztokyo.diskunion.net/Entry/36443/

にアップされていますが、今回レコ発イベントとしてトークショーと先行発売(会場限定)+サイン会を真空管オーディオフェアSUNVALLEY audioブースでやろうということになった訳です。各界の第一人者が何を語るのか…私も興味津々な訳ですが、そのテスト盤が上がってきたということで生島さんのプライベートシステムで試聴させて頂けるという僥倖にあずかりました。
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井筒さん(左)が持っているのがテスト盤、そして生島さんが持っているのがオーディオマニア垂涎のラッカー盤です。
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今回のトークショーでは高田さんが手掛けた11.2MHzダイレクトカッティング版(手前)と今回のLP(192kHz/32bitマスター)の比較試聴も敢行予定。マスター違いで音にどんな変化が現れるかも皆さんの耳で体験できる稀有の機会となることでしょう。
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試聴システムの中核はJBLパラゴン。この写真は生島さんからお借りしたものですが、今回お邪魔した時はフロントエンドや増幅系も変化していて音質的にもどんどんバージョンアップしていることが分かります。
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サンプル盤を眺める私。このあと実際に音を聴かせて頂いた訳ですが、今まで何度となく聴いてきたパラゴンの音と生島さんのそれは大きく違っていることにまず驚きました。
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Wikipediaより転載

この図をご覧ください。現代のスピーカーでは考えられない左右ch一体のエンクロージャー。中央部にマウントされたウーハー(LE15A等世代により異なる)から導かれた長い音道の途中に075(ツィーター)が置かれ、コンプレッションドライバー+ホーン(375 or 376+H5038P) が音道の出口にレイアウトされるという、phase coherent(位相整合)という概念がまだなかった頃のユニット配置。加えて言えば各ユニットの指向角は極めて内向きになっており中央のアーチ状のRefrection Panel(反射板)に当たって反射し。左右chの信号がモノラル的に合成されてリスニングポイントに向かうという設計です。

時代性に鑑み基本増幅系は真空管で鳴らす方がほぼ100%な訳ですが、その鳴りっぷりは良い意味で豪放磊落。私が知る限り最高の音で鳴っているパラゴンは横浜にある訳ですが、巨大なフルレンジのような中域の熱気と音が前にせり出すパワー感は他のスピーカーでは味わえない世界です。

しかし、です。生島さんのパラゴンを今回のテスト盤で聴いてみると…
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アナログ系フロントエンドのメインはガラード301+オルトフォン。いつも各所で音を聴かせていただく時は今までの経験から”だいたいこんな音”というイメージがある訳ですが、生島システムから出た音は全く暴れのない極めてモニター的な音でした。パラゴンの弱点として音像が肥大(いわゆるビッグマウス的な現象が発生)することが挙げられますが、生島さんのパラゴンの出音は反射板の中央手前に極めて精緻な音像を浮かび上がらせる感じ。いわゆるドンシャリ的な感覚は全くありません。

生島さんによればパラゴン導入前はEXCLUSIVE(パイオニア)のスタジオモニターでずっと鳴らされてきたということですので、そのモニター的チューニングがしっかり身についていらしゃるのでしょう。加えて様々な音源の厳しい音質評価の場でもあるこのシステムが過度に悦楽的でなく適度な客観性を有しているのは或る意味で当然と言えるかもしれません。
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生島さんといえば”アナログの鬼”。LPを扱う所作の一つ一つや盤に対する愛情はいつも見ていて感心します。ひとつの文化としてのLPを次世代にしっかり伝え遺していくために生島さんのような方がいらっしゃることは業界にとっても大きな力といえるでしょう。

生島さんと一緒にLPを聴きながら何度も仰っていたのは”雨を降らせられるか…”ということ。どういう意味かと尋ねると、Laidback2018に収められている”雨の鼓動”という曲から、まさに雨が降っているようなしっとりとした質感、アナログでしか味わえない柔らかいテクスチャーと湿度感が出ているか…に最も配慮してマスタリングエンジニアと大いに議論したと仰っていました。

CDにはCDの、ハイレゾにはハイレゾの良さがあるようにLPでしか聴けない音が厳然と存在します。今回のテスト盤、そして秘蔵のラッカー盤の音を是非フェアのイベントタイムで体験してみて下さい。生島さんが仰る”如何に雨を降らせるか…”の意味が皆さんにも伝わる筈です。



by audiokaleidoscope | 2018-09-16 23:59 | オーディオ

SUNVALLEY audio公式ブログです。新製品情報,イベント情報などの新着情報のほか、真空管オーディオ愛好家の皆様に向けた耳寄り情報を発信して参ります。


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