今日はお初の試聴のお客さま。でもずっと前から知ってる方のような楽しさ…これを同好の誼(よしみ)というのかもしれません。
その方、Uさんは自作のスピーカーを携えていらっしゃいました。やはり自分のスピーカーで聴くと印象も一層リアル。改めて日ごろ聴いている音がどんなだったかも理解できる絶好のチャンスです。
このスピーカーのユニット、ずっと前私どもでも扱っていたもので素性はよく分かっています。最低共振周波数を下げて口径の割には密度感のある低域が出るだけでなく高域のリニアリティも高くて定位の良さが際立つ良いユニットですがエンクロージャーのチューニングを間違うと低域の解像度が確保できず鈍重な音になる難しさも…。Uさんはベースの音に注目して音を評価すると仰られ、このブックシェルフからスケール感と低域の音階表現の正確さを求めた真空管アンプ選びが始まります。
きっかけは
youtube。著作権保護のため音源部分は殆どカットしている訳ですが、しっかり聴いて頂いてKT66がお気に召したということでS1616D/P1616Dで聴き較べることに。選んだのは
Gold Lion KT66です。パワーアンプの素性のみを感じていただくため、あえてプリを除きSV-192PROからの直結モードで試聴頂くことにしました。
まずはシングルから。ハイエンドまで伸びた高域と端正な低域で爽やかさが際立つ印象の音。Uさんのスピーカーでは3kHz~5kHzあたりが僅かに盛り上がった輝かしくクリアな音色にUさんも予想通りといったご様子です。改めてyoutubeの情報伝播力を知った思いです。
続いてP1616DにKT66を挿して同じソースで比較試聴。ライブハウスで聴いているような奥行きが現れて間接的情報も格段に増しているのが分かります。ただベースの締りや音の近さはシングルの方がお好みの様子。高域の鮮度を保ちながら些かも緩みなく沈み込む低域を得られるタマは何か…きっとそうお考えと推測し用意したのは
Tung Sol KT120です。
シングルで聴くKT120はKT66よりもスケールアップしながらも音像は大きくならない鋼(はがね)のような強さを秘めた音。ある意味で真空管らしからぬ音の近さと浸透力が印象的です。
最後はP1616DでKT120プッシュプルにトライします。これは出色でした。KT66ではシングルとプッシュで大きく印象が異なったのですが、KT120はシングルの印象そのままにライブネスが上がる感じ。こうやって聴いてみるとKT66はシングル,KT120はプッシュプルに歩があるな、という印象を持ちました。優劣というよりも球の持ち味(個性)をよりストレートに出す形式はどちらか…という方が正確かもしれません。
KT66の清冽な音はシングル向き…対してKT120はシングルでもプッシュでも自分らしさを失うことのない強靭な個性の持ち主といえる訳ですが、そういえば…と思って
TU-8340SVの受注データを確認してみたら出力管つきでの注文は七割方がKT150仕様、次いでKT88,EL34ということで、皆さんちゃんと分かっていらっしゃるんだなと思った次第です。
あと印象的だったのが今日Uさんがお持ちになった試聴ソースの音の良さ。私も思わずポチっとしたのがこれ。
こういう素晴らしいソースとの出会いも試聴のご褒美の一つです。