ヘロヘロで東京から帰ってきた訳ですが、今回のメインのミッションは製品開発のための打ち合わせでした。前にもお話しましたが今年は私どもの創立20周年。その記念碑的な製品を開発すべく半年ほど前から構想を練ってきました。
通常アニバーサリーモデルというと超ド級の製品を立ち上げるのが普通。モノづくりに携わる者として日ごろ想い描いている夢の製品を具現化する絶好のチャンスとも言える訳ですが”逆もまた真なり”…振り返ってみると10周年記念モデル「SV-192S」では当時海外のハイエンドでもほとんど類例のなかった192k/24bit可変サンプリングD/D+真空管バッファというプラットフォームのD/Aコンバーターの開発に着手。空前のヒットとなったことを記憶されている方もおられるのではないでしょうか。
そして今年は20年という節目の年。ずっと前から様々想いを巡らせて訳ですが現在皆さんに一番応援して頂いている1616フォーマットで何か出来ないか、それも従来私どもでやりたかったけど出来なかったもの(機能)を盛り込んで価格は限界まで抑えてオーディオの楽しさを共有できるもの…さまざまな候補案のなかから最終的に浮かび上がったのがフォノイコライザーでした。

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これは私の頭のなかにあるイメージを単にポンチ絵に描いてみただけのラフ案ですが、要は”SP盤からLP、それもRIAAだけでなく全てのイコライザーカーブに適合するマルチパーパスなフォノEQ”というイメージです。
頭の整を兼ねて製品仕様(仮)を列記してみますと…
・回路形式:CR型フォノイコライザー
・入力:2系統
・出力:1系統(STEREO/MONO切替可)
・対応カートリッジ:MM(47kΩ),MC(50Ω)
・MC昇圧:FETヘッドアンプ
・ゲイン:MM36dB~40dB,MC+25~32dB(試作にて決定)
・真空管:増幅段:12AX7(2),カソフォロ段:12AX7,12AU7,12AT7から任意に選択可
・整流器:標準/ダイオードモジュール,オプション/各種整流管(5AR4,274B,5R4等使用可)
・ターンオーバー周波数調整:切替式(RIAA,EU系SP盤,US系SP盤,AES,NAB,COLUMBIA等に対応)
※ターンオーバー周波数だけでなく低域特性も各EQカーブに合わせて同時可変
・高域ロールオフ調整:ON/OFF選択式(ON時:連続可変 RIAAほか各種カーブに対応)
…ざっとこんなところです。まずは試作を上げてみないと何とも言えませんが出来れば上記全てを満足したかたちで製品化したいものです。デザイン,サイズはSV-Pre1616Dと同一のイメージです。
市場を眺めるとデジタル的にプリセットされたカーブを選択する形式のマニアックなフォノEQが既に存在しているようですが、私どもはディスクリートでこれをやってしまおう…それもキットで誰が作っても特性的なバラツキの出ない形で製品化したいと思っています。電源部とEQ部は基板,その他はラグ板を使った手配線になるでしょう。
最速で10月の真空管オーディオフェアで試作品の展示+デモ。その後量産に入って3月に出荷開始という日程イメージですが実際はやってみないと分かりません。あらゆるオーディオ機器のなかで最も高利得(ハイゲイン)なフォノイコライザー。技術的ハードルの高さと設計性能の追い込みの難しさも最上級です。私ども20年間の集大成として恥ずかしくない品質と価格を是非とも現実のものとしたいと思っています。どうぞご期待下さい!