

仕事柄よくお客さんのリスニングルームにお邪魔させていただく訳ですが、広さや残響の長さとともに湿度の差が大きいことに気付きます。一般にオーディオに最適な湿度は40%~50%と言われますが一番悪いのは乾期と雨期の差が大きいこと。これはオーディオ機器に最大の静的ストレスとなります、冬はストーブつけてカラカラ、夏は聴く時以外は閉め切りでジメジメ…というのがいちばん厳しい訳ですがHさんのリスニングルームは別棟で建屋自体が植栽にカバーされて直射日光から回避されていることもあり湿度的に安定していることが機器にとっても良い環境であることがよく分かりました。そういえばHさんは建築業…その辺りの要諦は私が申し上げるまでもないことでした。


A5のHF側(コンプレッションドライバー/ホーン帯域)のアッテネーション(ネットワークN500F-Aの高域レベル)を僅かに下げるとHFとLFの繋がりが更にシームレスになりフルレンジにような自然さに。いままで聴いてきたA5の音のなかでも1,2のバランスの良さです。シアター系スピーカーは雑で大味…というのは明らかな間違いで多くの場合はアンプとのマッチングが悪いかHF/LFのバランスがおかしいかのいずれかです。

まずはレンジ感。P1616Dに替えた瞬間に音の温度感がグッと下がりクールでモニター的な音に早変わり。ベースが俄かに締まり音像が小さくなる代わりに音場が大きく開く印象です。いちばんの変化は写真でいうところの絞り。211は絞りを開けてアン・バートンだけにスポットが当たっているような印象だったのがKT120プッシュプルではF値を小さくしてステージ全体を明晰に魅せる感覚です(絞りと写真の関係についてはSONYさんのホームページに詳しく解説されています)。
もちろんPA用アンプのような粗さは微塵もありません。コアなジャズファンはこっちの方が好きかも…というクールでハイスピードなサウンドでした。これがKT150辺りになるともう少し円やかさが出ることでしょう。この多様性が真空管アンプの楽しさの真髄です。
