Forbes Japanによれば、昨年の世界でのアナログレコードの年間売上枚数は4,000万枚に達し市場規模は1,000億円の大台を回復したということのようですが、一方で最盛期(1981年)の年間10億枚以上のセールスからすれば何十分の一という数量に過ぎないという言い方も出来るし、現在の音楽市場全体の規模(約1.6兆円)からみると僅か数%に過ぎないという見方も出来る訳で所謂アナログ(ブーム)の実態については私自身もその本質を理解出来ていないのかもしれません。
よく”真空管アンプがブームなんですってね”とか”レコードが盛り上がってるらしいじゃないですか”という話を振られる訳ですが、こういう話は”外からの視点”であって、私たちからすればブームとか流行とかに関係なくレコードをずっと聴いてきた訳ですし、アンプについてもガジェット的,インテリア的にどうこうという視点とは関係なく、音が良いから真空管アンプを使っているに過ぎません。つまりファンは流行り廃りとは全く関係なくこの世界に常駐してきた訳で、今あらためて流行と言われてもなんだかくすぐったいような気持ちになる訳です。
一方で井筒さんのLPがまる一日経たずに完売だったり、
Pro-Jectの2Xperienceについても7月末入荷分は既に完売という状況は正直私の予想を遥かに超えるものであることも事実。AIスピーカーに”元気になる曲をかけて”と喋って流れてくる音楽と、レコード棚からジャケットを取り出し片面20分で裏返すという”儀式”が必要なレコードがが本質的に異なることを理解することも必要ですし、便利さよりも大切な何かがあるという事に気付いている方がいる(増えている)ことも注目すべき事実です。
今日の”
FMジャズ喫茶”の収録でもそんな話になりました。ちょうど今日の中日新聞(地方版)に、番組コ・パーソナティをお願いしている地元ジャズ喫茶の店主Kさんのお店が紙面の約1/3を割いて大々的に紹介されています。記事は”はっくつ 新 三河遺産”。レコード(あるいはレコードを聴くという行為)は果たしてLegacy(遺産)なのかTrend(流行)なのか?…これは難しい問題です。若者が”ちょっと格好いいよね”という視点でレコードを手にしてくれるのは勿論とても嬉しいことですが、出来るなら一過性のファッションでなく根付いた文化として残ってほしい…良い音で音楽を聴くための一つの必然の選択として50年後も100年後も続いて欲しいと思うのは私だけではない筈です。
フルアナログ,フル真空管システムで収録している”FMジャズ喫茶”もジャズという文化を次の世代に伝え遺していく…そんな気持ちで毎回マイクに向かっています。
