20年来の”聖域”へ

今日の東京は肌寒く朝から冷たい雨でしたが、興奮からかいつもよりも早く目覚めて向かった先は埼玉。この仕事を始めるずっと前から雑誌のグラビアなどで拝見しては溜息をついていた…そのお部屋に伺うことが出来て今日は忘れられない一日になりました。

b0350085_20385633.jpg
そのリスニングルームの主(あるじ)はTさん。90年代半ばのステレオサウンド誌で瀟洒なリスニングルームに美しく佇むTさんのJBL S9500+フル Goldmundのシステムを見た時の羨望は今でも忘れません。その後わたしが中古でM9500Mimesis 29.4を求め、機器と不釣り合いな見すぼらしいリスニングルームで悦に入っていたのも間違いなくTさんの影響でありました。

その後、期せずしてオーディオの仕事に身を賭すことになって20年。幾つかの奇跡のような出来事があった訳ですが、その一つが若き自分が憧れてやまなかったTさんに自分が手掛けた製品を納めさせていただく僥倖に恵まれたこと。先日のSV-310EQそしてこのたび頂戴したSV-284D/セトロン845仕様のご注文。”この機会を逃してなるものか!”とばかり実機のテストをしていただく大義名分で今日Tさんのリスニングルームにお邪魔させて頂くことが出来ました。そこはまさに私にとっての聖域でした。
b0350085_21090076.jpg
現在のTさんのメインシステムはフルTAD。スピーカーR1を鳴らすプリアンプC600はモノ×2台。パワーアンプM600はバイアンプで合計4台。ケーブルはオール銀線という超弩級のラインナップです。
b0350085_21211899.jpg
こちらはフロントエンド周り。ターンテーブルは4台あります。まずこのリファレンスシステムでアナログレコード数枚を聴かせて頂きましたが、かなり大きな音量であるにも関わらず音像が肥大することもなく、大型システムに時々見られる帯域によって定位が動く現象も全く見られません。更にこのシステムで観た150インチ4K映像とのマッチングの素晴らしさは圧巻でした。小澤征爾さんが振るベルリンフィルのライブ映像などはまさに等身大のオーケストラの迫力。

ひとしきり音と映像の洪水に浸ったあと、スクリーンが自動で上がり部屋の照明が明るくなってTさんが悪戯っぽく微笑みながら”時々真空管で鳴らしたくなるんですよ”と仰って聴かせて頂いたのがイタリア”Unison Reserch”の真空管アンプシステム。
b0350085_21333544.jpg
プリはユニゾンの”Mistero”。パワーアンプは”Smt 845”です。 中央のSV-284Dはこの時点で仮置きで電源は入っていません。Smt845は出力16W。真空管シングルとしては大出力でも、これでTAD R1が鳴らせるのか未経験の私には予想もつかなかった訳ですが、いざ鳴らしてみると屈託なく寛いだ音を聴かせてくれています。今まで4台のM600にきりきり舞いさせられたいたR1がリラックスした表情を見せ重心も若干下がっているようです。Tさんが”この音でここ一番のパワー感が出れば申し分ないのですが”と仰ったのを聞いて今回のご注文の意図が分かりました。845シングル+845ブースターによって何が起こるのか…これぞTさんの興味であり目的だったという訳です。

早速SV-284Dに灯入れします。心なしかドキドキする気持ちを抑えつつ結線。
b0350085_21520765.jpg
”じゃ聴いてみましょうか”…とTさん。フルTADで聴かせて頂いたリファレンスソースを曲順もそのままにプレイバックが始まります。

ブースターアンプの目的はパワーの増大だけでない…このブログでも何度も申し上げてきました、増幅系のゲインが上がることで今まで零れ落ちていた微小レベルの信号を拾い上げ、広大なダイナミックレンジの獲得と音楽の情報量(表情)が格段に豊かになる…それこそがブースターアンプ導入の真の目的であると。果たしてTさんのR1でもSmt845単独ドライブとは全く違った音の世界が現れました。

ひと言でいえば”音の彫りの深さ”…全帯域において音のエッジが立ち、写真でいえばフォーカスがシャープになるだけでなく6kHz~8kHzの聴感レベルが1dB程度上がって聴こえ、60Hz~80Hzの帯域の音階が明晰になり、今まで聴こえて来なかったニュアンスまで聴こえるようになります。更に言えばM600バイアンプ使用時はアナログのサーフェスノイズがかなり鋭角に聴こえていたのがSmt845+SV-284Dでは音というより”フッ”という気配に変化する感じで、まさに真空管アンプの真骨頂ここのありという鳴り方に変化しました。

声を発せず黙して音楽に集中していたTさんが仰ったひとこと…”合格”。半世紀以上に亘りオーディオの可能性の限界に挑んできたTさんの言葉は私にとっても大変重いものでありました。
b0350085_22104488.jpg
”記念写真を撮りましょう”と仰って下さったTさんとの一枚。お許しを得てアップさせて頂きます。Tさん、今日は長時間有難うございました。

埼玉を出て向かったのは有楽町東京国際フォーラム。明日から始まる”音展”で行われる最後のイベント(日曜15時半~)、公開収録の現場下見と機材チェックです。
b0350085_22142765.jpg
ここが公開収録が行われるD棟5階ホールD5。スピーカーはJBL DD67000。アキュフェーズのモノラルパワーアンプが接続されていました。
b0350085_22200085.jpg
ターンテーブルは目下業界の話題を席巻しているテクニクスのSL-1000Rです。
b0350085_22240012.jpg
フォノEQはSV-310EQ, プリはSV-310を使います。軽く音を出してみた感じではDD67000を直置きしていることもあってか若干ローが重めに鳴っている感じもあるので、当日時間が取れれば少々やってみたいことも頭に一つ二つ浮かんできています。ウイリアムス浩子さんとのトークショーでかけられる曲は精々2曲ですが、折角の機会ですし出来ることは全てトライするのが出させて頂く側の務めであろうと思っています。

明日は別件で私は会場には居ませんが、公開収録当日は早めに会場入りして各ブースを回らせて頂きたいと思っていますので、もし見かけた方は是非お声がけ下さい。オーディオ談義に華咲くのもこういうイベントの楽しみの一つです。楽しみにしています。



by audiokaleidoscope | 2018-06-15 22:43 | オーディオ

SUNVALLEY audio公式ブログです。新製品情報,イベント情報などの新着情報のほか、真空管オーディオ愛好家の皆様に向けた耳寄り情報を発信して参ります。


by SUNVALLEY audio
カレンダー
S M T W T F S
1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30