昨夜のpro-ject狂騒曲から一夜明けて今日はそぼ降る雨のなかNさん宅へ
LM69の納品。Nさんは永きに亘り
QUAD ESL-63pro+専用サブウーハーをバイアンプで愛用されてきた大のクラシックファンです。
63proは繊細感があり音場感も良く出る私も大好きなスピーカーの一つですが、唯一の弱点は経年によるエレメント(振動板)の劣化です。高温多湿な日本では環境により15年~20年程度でノイズが出始めるのですが一旦この症状が現れると結果的に4枚で構成されている他のエレメントもパチパチ言い出して結局は全交換しないといけなくなります。Nさん宅の63proはこれまで2回オーバーホールでお預かりしたのですが、費用がかなり高価で今後いつまた同じ状況となるか分からない不安もあって今回どうするか悩んでおられました。結果的に63proの味わいに近い音質で信頼性の高いモノということでLM69を選ばれました。
LM69についてはこれまであまり多くを語ってきませんでしたが、私が最初にベースモデルを聴いた時に
AXIOM 80の音質に使いものを感じたことが当社仕様製造のきっかけになっています。トランジェント(立ち上がり)がシャープで非常に情報量豊かなこのユニットの魅力を活かしながら低域の量感と響きを引き出すため、当社指定のユニットのマウント方法(これだけでかなり音質が変化)とダクトチューニングによって今のLM69サウンドが確立出来たと思っています。
MIDが製造終了となった後、私どものメインスピーカーとして活躍してくれている事は多くの方がご存じの通りです。
これがLM69を鳴らすNさんの入力系と増幅系。イタリア製の真空管バッファ付CDプレーヤーとカセットデッキ,アナログプレーヤーがSV-722(マランツタイプ)に繋がりパワーアンプはEL34pp(VP-3488SE)と300Bpp(VP-3000SE)の2台でマルチを組ませて頂いたのが10数年前。増幅系はこれまでノートラブルですがLM69はしばらく300Bppに任せることになりそうです。音を聴かれたNさんが”柔らかく鳴りますねえ”と喜んでおられて私もLM69に決めて頂いて良かったと感じているところです。
ところで静岡のAさんからSV-Pre1616D/
ASC 4.7uF仕様の写真が届きましたので許可を頂いてアップさせて頂きました。
Pre1616ユーザーの半数以上がこのASCを導入され音質向上を図られている訳ですが、一部に”モノが大きすぎて果たして上手く実装できるのか?”という不安をお持ちの方もおられるようです。
確かにデフォルトのフィルムコンとは比べ物にならないサイズですがご覧の通り実装は無理なく行っていただけますし価格以上の効果が得られますので、まだ交換されていない方は是非お試し頂きたいと思います。
人間の顔が一つとして同じでないようにパーツ配置や配線も人それぞれ。時々アンプの修理などで皆さんの力作を拝見しますが、裏蓋を開けた瞬間にアンプが何か言っているような気持ちになります。言い換えれば作って下さった皆さんの想いが湯気のように立ち上ってくるのです。抵抗やコンデンサーのリードの曲げ方やハンダづけ…リード線の被覆の焦げ跡が”ここは大変だったんだよ~!”とか”ここは上手くいったでしょ!”と語りかけてくるようで、オンリーワンの作品を見させて頂くのが私の何よりの楽しみだったりします。
”音は人なり”とはよく言ったもので、選んだパーツや真空管で音が変わり、機器の組合せによっても音は千変万化。当然セッティングや聴くソースや音量によっても出音は全く違ったものになります。NさんのLM69もそう…AさんのPre1616もそう。結局オーディオというものは”自分が鳴る”…別の言い方をすれば自分の美意識の発露によって開花するのがオーディオという芸術なのだと改めて感じる今日このごろです。