今回の収録はオーディオライターそしてMUSIC BIRD「
オーディオ実験工房」,「
激辛優秀録音・音のびっくり箱」パーソナリティとしても絶大な人気を誇る炭山アキラさんをスペシャルゲストにお迎えし、接点クリーニング,各種ケーブル,インシュレータ,その他炭山流真空管アンプ音質改善術の全てを体験してみようという企画。オンエアは7/20(金)です。
昨年の
ケーブル交換体験の回でもオンエアで明示的な音の変化が分かってリスナーの皆さんにもたいへん好評でしたので今回はその続編的な意味合いも含め様々な音質向上対策グッズのなかから炭山さんが真空管アンプ用に厳選したアイテムがスタジオに用意されました。
そもそもの機器選びの観点から申し上げると一番音への影響が大きいのはスピーカー。次にスピーカーにマッチングしたパワーアンプが選ばれることが極めて重要で、スピーカーとパワーアンプが決まった時点で再生音の方向性は七割方決まると申し上げても良いと思います。これを踏まえて音場型のプリを選ぶか音像型のプリを選ぶかにより絵で言えばキャンバスの大きさ(スピーカー)、絵の具(パワー)、構図(プリ)まで決まってきます。”オーディオ機器選びは出口から”というセオリーである訳です。
しかし炭山さんによればアクセサリーは逆で入口から攻めるのが常道であるとのこと。信号レベルの低い段階できちんとした対策を施すことで、信号レベル(ゲイン)があがるとともにその効果がより大きなものになるという考え方です。

まず炭山さんがイチオシ!と出してこられたのが”アンダンテラルゴ”の接点クリーナー
”トランス・ミュージック・デバイス”(TMD)でした。今回リファレンスソースとして選んだのがCDでしたのでSV-310で実験します。炭山さんの提案で入出力のRCAプラグでもなく電源ケーブルインレットの接点でもなく真空管のピンを綺麗にしてみようということに…製品付属の綿棒で丹念に塗布し10分放置、その後綺麗に拭き取ってから試聴に臨みます。本来は一昼夜置くのがベターということでしたが収録という都合もあり塗布開始から拭き上げまでで約20分…この間に起った音の変化に一番驚かれたのは持ち込まれた炭山さんご自身だったかもしれません。
今回のようなオーディオ系対策グッズは音に対して何らかの変化をもたらすものとしてPRされ消費されている訳ですが、このTMDに関しては変化というレベルではなく、解像度,透明度,量感…全ての面でベースそのものが上がるという点で画期的なもので昨年業界を騒然とさせたということもなるほど頷けます。スタジオでの炭山さんやゲストTさんもその効果(敢えて変化とはいいません)の高さに大変盛り上がりました。今回はヴィンテージ球ではなく全て現行球のラインナップで且つブリの真空管ピンのみの対策。もしこれがソケット,入出力プラグ,電源インレットを含め全ての機器で行ったら一体どうなるんだろう…という想いがスタジオにいた全員の想いだったに違いありません。
今回の収録は基本SV-310で行っていった訳ですが、次に試したのは…

フルテック 電源プラグ支持器
NCFブースター。上の写真では分かり難いかもしれませんが左のメーカーリンクに飛んで頂くと概要がお分かりいただけると思います。炭山さんによれば昨年のアクサセリー系オーディオアワードをTMDと共に席巻したということで期待大でした。有り体にいえば電源ケーブルを下から支え、コンタクトをよりしっかりさせるという目的とケーブル自体を様々な振動からアイソレートすることによりピュアサウンドが得られるというもの。NCF=ナノ・クリスタル・フォーミュラという特殊素材の略で静電効果もあるとのこと。音が締まり低域が伸びることはオンエアで再生音を聴いて頂ければ皆さんにもお分かり頂ける筈です。TMDとこのNCFブースターはチューニングというよりも基本レベルの向上ということで私も導入してみたいと感じました。
以下にその他の各種アクセサリーが登場しますが試聴結果を個別的に多くを書きません。何故ならオーディオアクセサリー個々があたかも”固有の音”をもつような印象は個人的に違和感があるからです。アクセサリーの使用によって再生音が変化するのは紛れもない事実である訳ですが、それは電気的接触の改善であったり制振効果であったりします。つまり基本的には何かを足すのではなく”何かを除去”することにより音の純度を高めるベクトルです。
今回の収録でも体験したのが単独では効果があっても他のアクサセリーと併用することによって”引き算の組合せ”になる事例がありました。炭山さんがオンエアのなかでいみじくも仰っている”真空管アンプの音から離れていく”組合せも事実あった訳で闇雲に使えば良いという訳ではないこともオンエアを聴いて頂ければお分かり頂ける筈です。
今から10年以上前のことですが或る著名なオーディオコラムニストから”ありとあらゆるアクサセリーを試していたんだけど、そのうち何がナンだか分からなくなっちゃってね…一旦全部外してみた訳ですよ。そうしたらそれが実は一番自然に感じた”という話を直接伺ったことがあります。これは少々オーバーな表現かもしれませんが、今回の試聴を通じてSV-310+SV-91Bがもつ豊潤さが減じて感じられるものもありました。そういう意味ではケーブル,インシュレータ等の組合せは実にクリティカルで相乗的に効く両刃の剣である難しさも感じました。
今回の収録で使ったのは他に…

電源ケーブル
オーディオみじんこ 大蛇(オロチ)Cu。まさに名は体を表す…実際這わせてみると蛇が横たわっているような圧倒的存在感です。

これがオロチをSV-310に装着したところ。質量の大きいケーブルほど重さで下に傾きやすい訳で、そういう意味でも所謂極太ケーブルほどNCFブースターとの効果が高まるということが言えるでしょう。”太いケーブルは太い音がする”という定説とは少々違う端正で締まった音。

中村製作所 ノイズフィルター
アモルメットコア NS-285。オーディオシステムに進入するノイズを防ぐフィルタです。よくACアダプターなどでスイッチングノイズを低減させるためのフェライトコア(グレーの筒状のアタッチメント)がついているのを見たことがあると思います。ケーブルから発生する磁界がフェライトの持っている磁束を集める力〔μ”〕により熱変換されノイズ放出を低減させる効果がある訳ですが、中村製作所のNSシリーズはこのオーディオグレード品と理解すると良いでしょう。メーカーではラインケーブル, スピーカーケーブル, ACアダプターの出力側等さまざまな使用で効果があると謳っていますが今回は炭山さんの指定でSV-310の入力側に使ってみます。コアサイズにより仮にL/R二本通すことが出来たとしても単独で使うことが望ましいとのことでした。解像度が上がりSNが良くなる印象です。

アンプのインシュレーターを替えることによって音が変化するのは既に常識ともいえる訳ですが、これは
アコースティック・リヴァイヴ RMF-1。強力なネオジムマグネットにより仮想的にアンプを”浮かせる”ことにより設置面からの振動の輻射から逃れられるというもの。販売は一個単位(48,000円税別)ですが今回は四個使いで試聴。音のニュアンスと弾力性が高まる印象。

せっかくSV-310EQを持ち込んだので試してみたヘッドシェル。ヤマキ電器
ZHS-01Bです。スタジオ標準のドライカーボン製のシェルも有名メーカー製の立派なものでしたが炭山さんご自身がシェル交換をして聴いて音は明らかにヘッドルームが上がりピークがない自然な音に変化。これにはゲストTさんも歓喜の声を上げていらっしゃいました。オーディオで最も低い電圧を司る部位だけに、それだけ変化も大きかったということでしょう。

最後の参考出品は1m(ペア)で何と880,000円(!)のラインケーブル。アコースティック・リヴァイヴ
RCA-1.0absolute-FMが登場です。これについては
鈴木裕さんのコラムで詳説されていますので是非読んで頂きたいのですが、銀と銅のハイブリッドケーブルならではの分解能の高さと実体感の両方を兼ね備えているケーブルと感じました。当社のリファレンス機器3台の合計価格よりも高いラインケーブル…作る側の情熱だけでなく使う側の強い動機も求められるハイエンドアクセサリーです。

今回いろいろなアクセサリーを紹介して下さった炭山さん。誰が呼んだか”業界の良心”…というニックネームに相応しいレビューが聞きものです。何でも持ち上げる訳ではない、好ましくなものはちゃんと言う…そういう姿勢が多くのメーカーだけでなく多くの炭山ファンを生み出している所以でしょう。炭山さん、どうも有難うございました!!