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忘れえぬ一台

いま試聴室ではMUSIC BIRDオンエアが流れています。今日のプログラムはMCカートリッジ比較試聴編。こうやってリスナーの立場で聴いてみるとカートリッジによって実に音質(味わい)が変わるものだ…真空管機器の出力をミキサーに直接入れて収録することで機器やアクセサリーの違いが出るんじゃないか?…そう思ったのは何時だったか分かりませんが、我ながら良いアイディアだったなあ、と思いながら聴いている訳ですが、単にリスニングをしているだけでなく真空管をMullard CV4003に替えてエージングしているところなのです。
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この192S、2009年製造でシリアルNo.なしのスペシャルモデルで私にとっての宝物…決して忘れられない一台です。何故ならこの個体こそが初めて私どもの製品がプロの現場、それも超一流のミュージシャンのツアーで採用された個体だったから。

当時のことを旧店主日記から振り返ってみたいと思います。2009年11月25日~25日の書き込みからの抜粋です。

エンジニアの方が「最近チャンデバをデジタルに替えてからどうも高域の質感がね・・・痛い訳ですよ。だったら前のアナログの時の方が良かったかなあ、って。でもデジタルの方が結局作りやすいのでアナログに戻すのも勇気が要るんですよね。そんな風に煮詰まっている時にサンバレーさんのコレを紹介されまして。音的にはイメージした方向に効いていますよ」とのこと。後は明日、ミュージシャンが入ってサウンドを詰めながら方向性が見えてくるのだと思います。

そういえば驚くような偶然というのがあるもので、日頃からメールをやり取りさせて頂いていたKさんが「私もステージでトロンボーンを吹きます」とのこと。今回の件もそうですがキット屋の仕事を通じて沢山のご縁を頂き普通では私如きが居られる筈がない場所で超一流の方たちと一緒に仕事出来るというのが夢のようです。本当に有難いことです。
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2日間に亘って●●ホールでの得難い経験は本当に忘れられないものになりました。偶然ですがトロンボーンのKさんだけでなく弦セクション(チェロ)で参加されているSさんも私どものお客さまであることが分かり、ステージ上に4人も私どもがお世話になった方が乗っていること自体が私には奇跡のように思えましたし沢山のスタッフの方々から「へえ、タマなんだ。いいねえ、頑張って!」と声を掛けて頂いて本当に嬉しかったです。
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今日のゲネプロで聴いたSV-192S+A/Dインサート「ON」の音を一生私は忘れません。たった2日間だけでしたがファミリーの一員になれたようで夢のようなひと時でした。

…この写真に写っている個体がまさにいまMullardをエージングしている実機。この本番を聴かれた約1万人のオーディエンスは誰一人真空管の音で鳴っている事を知らなかった訳ですが、私にとってはまさに天上の音楽に聴こえたことを今でも覚えています。

その後、噂が噂を呼んだような形になって様々なミュージシャンから声を掛けて頂くようになり、ツアーやレコーディングで使って頂けるようになったのが現行SV-192pro。電源部を強化し、よりS/Nを稼げるようになった後継機です。192Sから始まったプロユース真空管D/Aコンバータの歴史も今年で10年を迎える訳で、まさに光陰矢の如し。

デジタルの進歩はまさに日進月歩。いまや768k/24bit, 11.2MHz/1bitの時代ですが未だに多くのプロやオーディオマニアのもとで現役なのは特性でなく音…音楽性の高さを評価して頂いているからでしょうか。真空管が半導体に変わり音色(ねいろ)よりも特性が重視されるようになって約半世紀。データよりも感性で真空管機器を選んでいただく方が多いのは本当に有難いことです。

…そんな事を思いながらMUSIC BIRDのオンエアもどんどん進んでいます。DL103→DL110→DL301→DL103Rときてオーディオテクニカのカートリッジの試聴が始まるところ…アナログも特性でいえばデジタルに勝てるところは一つもありません。では何故いまこんなにアナログが見直されているのでしょう…それはまさに音の滑らかさ、聴き疲れのなさ、潤い感があるから。人の耳は決して特性だけを聴いているのではないという点で真空管機器とアナログの親和性の高さを改めて感じているところです。



by audiokaleidoscope | 2018-04-20 09:46 | オーディオ

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