NFB(負帰還)の功と罪

今日も来ました組立レポート!今日は手配線初挑戦で見事SV-S1616Dを制覇したIさんです。今でこそ最初のキットが300Bという方も多くなりましたが、私が真空管アンプに興味をもった頃300Bは”声聞けど姿見えず”…技術系オーディオ雑誌などで記事が出るたび”凄いなあ”と眺めるのが関の山で音を聴く機会はもちろん現物を見る機会すら全くありませんでした。当時300Bアンプは羨望の的でシングル50万,プッシュ100万(以上)が当たり前の時代。実に良い時代になったものです。

早速ですがIさん渾身の作品。
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手配線ファーストトライでこの出来は二重丸、いや三重丸と言えましょう。最初はどうしてもリードを最短で切るのに勇気が要って気がついたらクモの巣配線になりがちなもの。Iさんのように潔くワイヤリング出来ないものです。
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真空管はJJ 12AT7/12AU7-PSVANE 300B-SOVTEK 5AR4の組合せ。しっかりと300Bらしい豊かな響きを満喫するためNFBはごく軽く3dB程度…300Bは薄化粧がいちばん似合います。

Iさんからは

購入しましたSV-S1616D 300B仕様が苦労の末やっと完成いたしました。
キットの梱包を開封し、まず思ったことが自分にはハードルが高いなと、気合を入れるように製作前に何度もマニュアルを読み注意するところにアンダーラインを引いたりネットの製作記事を参考にしたりと準備をしたつもりでしたが、やはり完成後のチェックでミスを見つけてしまいました。製作に没頭するあまり事前準備が生かされないこともありました。
しかし今まで製作したどのキットよりマニュアルもわかりやすく、部品の梱包もセクションごとに分かれており、工夫されているなと感心いたしました。

ちなみに製作は3月30日から4月8日の間で延べ20時間ほどです。
電圧測定は全て規定内でした(デジタルテスターが500Vまでしか測定できないのでそれ以上はアナログテスターでの測定ですが)。

視聴時の対応の丁寧さ、完成までの作業と完成した時の充実感もちろん音質にも大変満足しております。今後も1616シリーズが増えることを期待しております。少し時間をおいて今度はSV-Pre1616Dに挑戦しようと思います。

というメッセージを頂いております。今日電話で”この前お邪魔したIです。アンプ完成しました!”と伺った時の嬉しさは言葉に表せません。

そういえば上に出てきた”NFB”というワード。真空管アンプの音作り(設計)をする上で最も重要なテーマの一つです。ときどき”無帰還(ノンNFB)アンプの方が音が良いんですか?”というご質問をいただくことがありますしメーカーによっては無帰還をコマーシャルワード的に使っているところもあります。では本当に無帰還アンプの方が優れているのでしょうか?

たとえ話になりますが無帰還=”スッピン”と言うとイメージが湧きやすいかもしれません。少々下世話ですがスッピンでも美しい女性は確かに魅力的ですし、真空管アンプでいえば素材感(真空管の持ち味)を一番素直に見せてくれるのが無帰還であることに異論はありません。しかしながらこの数十年でオーディオ(特にスピーカー)は大きく様変わりしました。1970年代までの100dB/w/mに迫る高能率スピーカーならまだしも現代の低インピーダンス/低能率スピーカーでは無帰還アンプの内部抵抗の高さ(ダンピングファクターの低さ)が最大の弱点になってしまうケースも残念ながら少なくないのです。

1937年にWestern ElectricとAT&Tが設立したベル研(Bell Lab.)のH.S.Blackが発表したNFB理論によってアンプの静特性は飛躍的に向上しました。そして1947年Wireless World誌(UK) に発表されたウイリアムソン・アンプが一世を風靡したことは多くの方の知るところです。しかし特効薬ほど副作用も強いという事実…帰還を掛けることで測定上の歪みを減らし広帯域化が可能となる一方、過重なNFBによって音の鮮度や生気が失われ曇った音質になるという事実は如何に定量と定性が一致しないかということを如実に示しています。

私どもで言えば軽めのNFBを掛けるのが流儀。それぞれの出力管の個性(持ち味)をしっかりと際立させつつ適度なNFBによって音のキメを整えスピーカーのドライブ力を担保することを旨としています。料理で言えばNFBは最後の”味の素ひと振り”的に使うのが粋でありNFBに頼ったプアな設計は決してしない…それが開発者としての良識だと考えています。

アンプを作っていると”この抵抗は何のためにあるんだろう?”…”このコンデンサーの容量が変わると音はどう変わるのかな?”…といった疑問が湧いてくるものです。その一つ一つに意味があり、人の顔がみんな違うようにアンプが10台あれば10台の個性(言い換えれば魅力)がある…そんな事を考えながらアンプを組み立てていると一層愛着も深まるというもの。SV-S1616Dはお好みによってノンNFB/3dB/6dBからお好みの帰還量が選べるようになっています。たった一本の抵抗を替えるだけでこれだけ音が変わる…真空管アンプはそれほど繊細でニュアンス溢れる存在なのです。
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SV-S1616D組立マニュアルより(抜粋)



by audiokaleidoscope | 2018-04-09 22:08 | オーディオ

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