(2/1_1)WAVAC(ウェーバック)大研究

今日はMUSIC BIRDの収録日。一本目は先日のUESUGIアンプ大研究に続くハイエンド真空管アンプブランド企画として「WAVAC(ウェーバック)」を特集したプログラムです(4/27(金)オンエア)。
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山形県米沢市から収録のためお越しいただいたWAVACのお二人。キット屋を始める前から”宍戸式イントラ反転アンプ”には大きな関心をもっていた私にとっては願ってもない機会を頂きました。805や808や833という堅牢な送信管を使い、特殊なトランスドライブ回路によりシングルアンプでありながら数十Wから150W(!!)級のアンプを作っている、知る人ぞ知るアンプブランドがWAVACなのです。
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巨大な削り出しシャーシの上に805が屹立するモノラルパワー。姿態は845に似ていますが、トッププレート球でプレート損失125Wの上位球です。プレート電流140mAというド級アンプ。シングルでありながら出力60Wというモンスターです。

最初にこのアンプで聴いた曲は引退を発表し4月に最後の日本公演が予定されているマリア・ジョアン・ピリス(ピレシュ)のピアノ。実にふくよかでスムースな音を聴かせてくれました。
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プリはPR-435。WE435(四極電圧増幅管)を2本使ったトランス出力のラインレベル専用プリです。聴感上のSNが非常に高い印象の端正な音のプリでした。WAVACの音は非常にスムースで繊細。大出力なのにガサツな感じが微塵もない典雅な表現でした。

後半は300Bシングル(TC-300BH)。TC-805から打って変わったコンパクトサイズ。敢えて出力を2Wに抑え、これでも本格的トランスドライブ回路を奢った小さな巨人です。ヘッドフォンアンプとしても一般的なパワーアンプとしても使えます。
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実はここからが今回の収録が本番でした。私がなんとなくYさんに”真空管アンプのメリットって何だとお考えですか?”と伺った時のこと。Yさんは”それはトランスを使えることだ”と断言されたのです。これには私も大変驚きました。真空管アンプがOTL(トランスレス)になり、その後半導体アンプに変化した過程は言い換えれば”トランスを排除するための技術的変容”といってもよく、裏を返せばトランスはバンドパスフィルターであり無いに越したことはないんだ…というここ数十年の定説とYさんの主張は本質的に異なるからです。

Yさんは続けます。”40Hzと400Hzを重ねた波形をアンプに入力し、スピーカーから出た応答波形を観測すると半導体アンプでは40Hzだけ90度位相が遅れていることが分かるんです。これはアンプ単体では真空管も半導体も大きな差はありません。スピーカーを含めた総体としての測定でしか分からない結果です。エレキベースプレーヤーが何故真空管アンプを使うのか…それは同じタイミングで弾いていても半導体ベースアンプでは僅かにテンポがずれて聴こえるからなんです”…私がこの業界に入って20年。これまで全く聞いたことのない新説(異説)でありました。しかしYさんは工学博士であり測定のプロフェッショナル。印象や定性に流される方でないことはオンエアの口調を聴いて頂ければ直ぐに分かります。つまりYさんが仰りたいのはアンプ単体で諸特性を評価すること自体が誤りなんだという主張です。

対して私はその原因はアンプではなくてスピーカーネットワークにあるんじゃないですか?と申し上げたらマイクもスピーカーも単体ではPhase Coherent(位相特性に乱れのない状態)であっても殆どのケースで同じ結果が出ると仰います。何故段間/出力にトランスを抱いたアンプではその位相回転が起きないかという私の問いに対する”それはスピーカーのL(リアクタンス)分と真空管アンプのトランスのL分のマッチングが影響しているからではないか…というYさんの推測は実に新鮮で目から鱗のお話でした。アンプ定格の歪率(0.0001%等)とは全く違うアンプ評価の機軸をYさんは提唱されており真空管アンプこそが最良の選択であると断言された瞬間が放送音源として記録されたことは実に大きな意味があると思います。Yさんの主張詳細についてはこちらをご覧下さい。半導体アンプの子音的要素(サシスセソ)が目立って不自然という一部の主張とは符合する部分もあるかもしれませんね。

その後、Yさんの主張はシングルアンプの回路的メリットに移行する訳ですが、プッシュプル=厚みがあり響き豊かという定性的理解は間違っていないが、出力トランスを小型化しても出力を確保できるという発想では良いアンプは出来ないし、スピーカーが小型化したことによって潜在化した低域の位相遅れが大型スピーカーを使った途端に馬脚を現すことがオーディオ衰退の一因でもあるというYさんの確固たる主張には微塵も懐古的嗜好がなく、同じ土俵でモノづくりをさせて頂いている者にとっても大変刺激的で大いにインスパイアされた素晴らしいひと時でありました。是非オンエアをお聴き頂きたいと思います!


by audiokaleidoscope | 2018-02-01 23:12 | オーディオ

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