

最初にこのアンプで聴いた曲は引退を発表し4月に最後の日本公演が予定されているマリア・ジョアン・ピリス(ピレシュ)のピアノ。実にふくよかでスムースな音を聴かせてくれました。

後半は300Bシングル(TC-300BH)。TC-805から打って変わったコンパクトサイズ。敢えて出力を2Wに抑え、これでも本格的トランスドライブ回路を奢った小さな巨人です。ヘッドフォンアンプとしても一般的なパワーアンプとしても使えます。

Yさんは続けます。”40Hzと400Hzを重ねた波形をアンプに入力し、スピーカーから出た応答波形を観測すると半導体アンプでは40Hzだけ90度位相が遅れていることが分かるんです。これはアンプ単体では真空管も半導体も大きな差はありません。スピーカーを含めた総体としての測定でしか分からない結果です。エレキベースプレーヤーが何故真空管アンプを使うのか…それは同じタイミングで弾いていても半導体ベースアンプでは僅かにテンポがずれて聴こえるからなんです”…私がこの業界に入って20年。これまで全く聞いたことのない新説(異説)でありました。しかしYさんは工学博士であり測定のプロフェッショナル。印象や定性に流される方でないことはオンエアの口調を聴いて頂ければ直ぐに分かります。つまりYさんが仰りたいのはアンプ単体で諸特性を評価すること自体が誤りなんだという主張です。