中国三日目は佛山の工場で打ち合わせからスタート。試聴室に関して
前回伺った時にちょっと低域の残響が長めで、これではモニタリング目的では使い難いよね…という話をしていたのですが、今回はバッチリ対策されていて反射や回折が抑えられ音がずいぶん良くなっていました。
開発方針も少しづつ変化してきていて、先代が元々WE機器のメインテナンスを生業としていたこともあり、数年前まではWEアンプ,スピーカーの完全復刻を大きな柱にしていたのですが(その集大成が
LM91A,LM86Bであった訳です)、代が替わって現在はヴィンテージテイストを枕にしながらオリジナルのアンプやスピーカーを作り上げていこうという方針に変わりつつあります。
相変わらずオール手配線による一台づつのハンドメイド的手法に何ら変わりはありませんが、デザイン,回路とも新開発のモデルが数多く並んでいました。
そんななかでちょっと面白いなと思ったのがこのバッファアンプ。プリ/パワー間に入れることを想定している訳ですが、設計意図を確認するとパッシブバイ(トライ)アンプをした時に
プリに複数の負荷(パワー)がぶら下がることで合成インピーダンスが下がって音が鈍ることが懸念される訳ですが、それを回避するためのインピーダンス整合用バッファとのことでした。少々規模が大きくて日本のユーザーには敷居が高いところもありますが、考え方的には大いに共感できるところであり、今後も意見交流をしていずれ再びコラボモデルを作り上げられる日が来ることでしょう。
別室には先代が作り上げた大作が並んでいます。今でこそ中国には沢山の真空管アンプメーカーがありますが、実は礎(いしずえ)を築きあげたのが先代でした。いまから20年…あるいはもう少し前だったでしょうか。日本に初めて入ってきたと言ってもいい中国量産真空管アンプ
Spark530を手掛けたのも先代でありました。
今回私が話をしたかったのはこれ。ALTEC系のホーンが入手出来難くなってきているなか、現行品のセクトラルホーンを作っているのは此処ぐらい。これはALTECで言えば805を少し小型にした感じのホーン。例えば802系のコンプレッションドライバーと416系ウーハーを作ることが出来ればオールドアメリカン的スピーカーを手掛けることが出来るかもしれません。
あと今回の”めっけモン”はこれ。よ~く見ると分かる人には分かるCD歴代ドライブで最も音が良いと言われる某ブランドのCDメカです。経緯は不明ですが何故か20年余の期間を経てこのドライブがゲットできたということで現物を見せて頂きました。今やCD専用ドライブは絶滅危惧種と言ってもよく、カーオーディオ用かPC用は入手出来てもピュアオーディオ用のメカ(特に良いもの)はなかなか手に入りません。まさかこの時期にこのドライブが多量に出回ることは予想だにしておりませんでしたが、もしこれが有効利用できて製品として陽の目を見る日が来るのであれば大センセーションになることでしょう。あるところにはある…ということですね。
打ち合わせを終えて客家(はっか)料理のレストランへ。去年はなかった野菜コーナー。これを食べたい!というとすぐに料理してくれます。美味しかった!
佛山を出て高速道路で約2時間の珠海へ向かいます。
順徳(じゅんとく)SAにて。ブルース・リーの出身地です。
スタバもあります。私が初めて中国に来た10年前は高速道路網も十分整備されておらず、一般道も逆送する車はいるし、信号機は意味がないのも同然という状態でしたが、あの頃と思うと道もキレイになって走り易くなりました。
珠海では今回の渡航目的のなかでスピーカーの検品と同じくらい大きなテーマであった新アナログプレーヤーの試作に関する評価。
今月の試聴会に間に合わせることが至上命題ですので、懸案事項を今回の打ち合わせで全て共有したうえで量産移行する必要があります。詳細はここでは述べませんが去年の5月にスタートしたこのプロジェクト、一年経ってやっと形が見えてきた気がします。
9インチのアーム。長年の希望であったユニバーサルタイプがやっと出来つつあります。
これはベースのサンプル。ホワイトオークのツキ板です。インシュレータはアルミの無垢。今回プラッターもアルミにする予定で当然ベルトドライブです!欧州製のACモーターを採用する予定で、モーターは今回外付けでなくベース内蔵タイプで設計しています。
打ち合わせは極めて長時間に及び、やっと食事に出られたのはかなり深い時間になってから。今回中国最後の晩餐は”潮州料理”のレストランでとることになりました。二次会が終わったのは朝の4時過ぎ。
不夜城ともいうべき中国。こんな時間でも道沿いには屋台がいくつも軒を並べて商売しています。ホテルに戻ってシャワーを浴びて仮眠しようという頃にはすっかり朝になっていました。
少しだけ寝て香港経由で帰国します。香港国際空港は今日も大勢の人で賑わっていました。
機中で膨大な議事録を読み返しながら今回の成果、反省点、宿題をもういちど頭の中で反芻して優先順位をつけて明日からの業務のなかで展開していかなくてはなりません。東京三日間、中国四日間でまるまる一週間会社を留守にしましたので半分浦島状態ですが、明日から現場復帰して様々な案件に対し速やかに対応していきます。
機中からの眺め。今回の中国は主目的であった受入検査が出来ただけでなく、将来への展望に関しても具体的に拡がりを持てたという点で非常に大きな成果があったと思います。この写真のようにスカッとした感覚で帰国できて本当に良かったなと感じています。