今日は名古屋へパーツの調達に行ったあとSさん宅へ。Sさんとは10年ほどのお付き合いになりますが、数年前からご自宅の建て替えを機にリスニングルームを作りたいというお話を伺ってきて、部屋の縦横比や天井の形状など今まで関わらせて頂いたお客さんの成功事例や私自身の失敗経験をお話ししながらプランを練り上げてきました。そしてついに完成!というご連絡を頂いて今日念願の訪問と相成った訳です。
伺ってみると敷地1000平米以上,建坪約300平米という豪邸にまず驚愕。建屋全体に無垢の天然木が多用され、リビングには薪ストーブを配した別荘のような雰囲気。そして案内されたリビングから続くリスニングルーム。

定在波を避けるために様々な工夫と対策が施されたリスニングルーム。アンプやスピーカーが小さく見える大空間です。

入力機器はアナログがメインでデジタルはネットワークプレーヤー。増幅系は
SV-310EQ,
SV-310,
SV-91B という布陣。スピーカーの背後に十分な距離を取り、スピーカーの内振り角度の適切さが奏功して音が完全にポッカリと浮かび上がるさまは快感のひと言でした。

更に素晴らしかったのが映像系。大型プロジェクター+140インチの大画面でBS放送の録画映像を見せて頂いたのですが黒の沈み込みの深さとタップリとした奥行きを感じさせるフィルムライクな表現には言葉を失いました。プロのインスーラーが一日がかりで追い込んだというのも納得のスーパーリアリズム。

これはアラビアのロレンス。いまから50年以上の作品とはとても思えない凄い奥行感。まるで3D映画のよう。
今から10年くらい前からでしょうか…リビングオーディオという言葉が聞かれるようになりました。その昔、お父さんが自分の部屋で独りで聴いていたオーディオの居場所がリビングに変わり、薄型液晶TVとオーディオが同居することが一般的になってきました。TVの両脇にトールボーイスピーカーが配され、TVの下のラックの中にDVDプレーヤーと真空管のプリメインアンプが居て音楽も映画も1台のプレーヤーで楽しむ。そしてTVの音楽番組も真空管アンプで…そんな映像と音楽の新たな蜜月が始まった時期です。そしてTVの大型化,低価格化がどんどん進みリビングオーディオも段々規模が大きくなってきたのがここ数年のトレンドです。
一旦大型画面でライブや映画を観てしまうとなかなか元には戻れないのが人の常。最近は単位面積当たりのコストが安いプロジェクター+スクリーンで80インチ以上の大画像を楽しむ方が増えてきています。プロジェクターの高品質化,低価格化が大きな牽引役になっていることも大きな要因です。

因みに第二試聴室も最近二画面に。音楽系専用の120インチとTV/ゲーム等のインタラクティブ系110インチ。写真では敢えて両方つけていますが、目的によって使い分けています。ご覧の通り照明をONするとSさん宅のような深みのある映像は無理ですが、昔のように暗い,粗いというネガティブな要素は殆ど払拭されてスケール感を意外なほど低価格で楽しむことが可能になったことは大いに歓迎すべきです。
オーディオという産業が縮小化していると嘆く向きもある一方で、映像やネット環境との同居によって真空管アンプにもまだまだ無限の可能性が残されていると感じる昨今。リビングオーディオをという概念を更に超えて、これからは真空管アンプで大画面環境を備えつつCDもアナログもハイレゾもネットラジオも全部楽しめる…そんな時代になったということなのでしょう。考えてみれば凄い可能性と発展性を秘めた新たなオーディオ時代の幕開けが始まっている…そんなことを感じたSさんの素晴らしいリスニングルームでした。