(1/27)自分だけの音を所有するということ
2016年 01月 27日
一つは動画配信サイトの台頭。それまで音楽鑑賞は生演奏を除いては物理メディア(形のあるもの)として購入(所有)するものであった訳ですが、PC/インターネットの普遍化によって音楽は”所有するもの”から”消費されるもの”に劇的に変化し、更にスマートフォンの普及によって動く人間に音楽がついてくるようになりました。つまり音楽は”聴く対象物”から”鳴っている環境”に変異しつつあるといってもいいかもしれません。こちらをご覧ください。この10年で失われた40%は何処へ行ってしまったのでしょうか?本来いいな!と思う音楽を購入して自分のものとして聴くという行為がネット等による代替消費あるいは違法ダウンロード等による機会損失が僅かでも影響しているのであればこれは大変なことです。
音楽を作る人がいて、それを演奏する人がいて、それを再生する私たちがいる…そのサイクルが最後のところで脆くなってはいないか…誰かが対価を支払うことでそのお金が誰かを満たし、次なる創造に向かう事が出来る…それを支えているのは私たち消費者であることを何処かで覚えておきたいものです。そのために我々オーディオ屋は”こんな風に聴くとこんなに良い音で楽しめ、歓びもずっと大きなものになりますよ!”ということを愚直に訴え続ける責任があります。
真空管アンプの世界では昔と変わらず、スピーカーをセッティングし、適切なアンプを配して音楽を大切に聴こうという方がまだまだ多いのは本当に有難いことです。アナログレコードの生産実績が急伸していることはトータルに占める割合からすれば決して大きな値ではありませんが、真空管アンプユーザーを含むピュアオーディオ愛好家層が健在であるという証左で大変心強く思います。
今日はそんな真摯な仲間をご紹介します。まずはSV-353キットを完成されたSさん。
※Sさんのご了解を頂いて掲載させていただきました
B&W Silver Signature30はB&Wの30周年記念モデル(限定)で恐らく97年頃の製品だったと記憶しておりますが、名前の通り内部ワイヤリングを純銀線で行った極めてデリケートでニュアンスに富んだ再生音のスピーカーです。これを真空管システムで鳴らされるSさんが今回選ばれたSV-353によって更に音の万華鏡が展開することでしょう。Sさんからは”結果からすると接点の増加は全く問題が無いことが判りました。今後の展開に対する不安が解消しました”というメッセージを頂戴しています。SV-310EQ,SV-310とともに末永くご愛用頂ければと思います。
そういえば先日SV-S1616D(多極管仕様)のレポートをご紹介したAさんが”これから作る方の参考になれば…”と仰ってまとめ製作記を書いて下さいました。単に聞くのではなく”聴く”…耳だけでなく心を傾注して自分だけの音を所有するだけでなく、同好の士と歓びを共有できるオーディオという趣味は実に素晴らしいものですね!