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(1/21_2)プリアンプは要るの?要らないの?

大放談”二本目は5回目の登場、Tさんと一緒に。今回は”ホントに要るの?…再び真空管プリの魅力を問う!”というテーマで激論を交わしました。
プリアンプの要否についてはCD登場以降、何度も湧き上がっては消え、再び湧き上がるが如く議論されてきています。デジタル時代になりプレーヤーの出力がラインレベルまであがっているのに敢えてプリを繋ぐ必要が何故あるのか…プリが挿入されることによって音の色づけが発生するだけじゃないか…というのが不要派の論拠であったように記憶しています。

対して私は一貫して”プリは必要である”という立場で機器開発を行ってきました。真空管プリメインアンプという形式を考えてみましょう。殆どのものがパワーアンプの入力部にヴォリュームとセレクターを挿入したもので、電気的には”セレクター,ヴォリューム付パワーアンプ”と呼ばれるべきものです。これを”簡易プリメイン”と呼ぶことにします。

ここで重要なのは簡易プリメインについているボリュームは音量を上げるための機構ではなく、アンプに入力される電圧を絞って適正ゲインに調節するための"アッテネータ"であるという点です。つまり簡易プリメインアンプのボリュームは開放(全開)が1:1の関係であり、通常は大幅に絞った状態であることを意味します。

常時ボリュームを絞った状態で音楽を聴くということは即ち信号系に抵抗が直列的に存在することと同義です。試しに通常のパワーアンプ(ボリュームのない直結タイプ)の入力部に電圧制限用(ゲイン調整用)の抵抗を挿入すると、抵抗値が大きくなればなるほど再生音が曇り、真空管ならではの音の質感が損なわれることを経験された方もいると思います。

またアッテネーションの程度(言い換えればヴォリューム位置)によってアンプの入力インピーダンスが変移することも無視できないデメリットの一つです。プリ+メインのセパレート構成で使用する場合、同じ音量でプリアンプのボリュームを全開にしてパワーアンプ側で適正音量(ゲイン)を得る場合と、パワーアンプ側を全開にしてプリアンプ側でゲイン調整するのを比較してみると、明らかに前者の方が音の勢い(闊達さ)が損なわれることに気付きます。これは入力部にボリュームが介在することでパワーアンプからみたプリアンプの見かけ上の出力インピーダンスが上がってしまい、カットオフ周波数が下がり高域の周波数特性が劣化することからも説明が可能です。

やや話がややこしくなりますが、例えばCDを音源として考えた場合、信号は16ビットで記録されています。1ビットの分解能は1/65536であり、最大出力の2Vに対して僅か30μVに過ぎません。この微小電圧を簡易プリメインでは掬い上げることが出来ません。つまりプリの使命とは入力信号の劣化を極力抑えアンプの持つ音質を生かすことであり、如何にパワーアンプを理想に近い状態で使うかということに帰結するとも言えます。

私どもでも試聴室や展示会のデモでも簡易プリメインアンプをよく使います。その場合は必ずパワーアンプのボリュームを開放(全開)してプリアンプ側で音量調整を行っています。これはアンプの音質的魅力を最大限に引き出す為の手段であり、電気的にも有効です。まずは簡易プリメインで真空管アンプの持つ音質の素直さ、倍音の豊かさを十分に味わって頂いたあと、次はプリアンプを追加してみることで、単独使用では聴くことが出来なかった音の瑞々しさや音場(空気感)の淀みない拡がり、また広大なダイナミックレンジ(抑揚感)を満喫できる…これがプリのレゾンデートルであると考えます。

では実際プリによって音がどう変化するのか(或いはしないのか)を実際検証してみましょう、というのが今回の企画。6台のプリをスタジオに持ち込んで比較してみました。ネタバレになりますが、実に興味深い百花繚乱を楽しむことが出来ました。
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今回もTさんには真空管に通暁した鋭いコメントを多数いただきました。どうも有難うございました!収録時に使ったプリを放送順にご紹介していきますと…
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最初はエレキットTU-8500。極めてカラーレーションの少ない、端正で生真面目な音。非常に素性の良い、言い換えればプリの元々の使命であるゲインアップに対しての忠実性に好感が持てる音。興味ある方はこちらもご一読を。
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続いてはSV-3。これはTU-8500とは真反対。トーンコントロールをフラットにした状態でSV-3を通すだけで中低域の量感が増し、明らかに音が解れて温度感が上がる印象。
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続いてはSV-722(マランツ7タイプ)。デビューが2002年でその年の真空管オーディオフェア(プリアンプ部門)で金賞を頂いて賞が廃止されるまでずっと首位を守った思い出深いプリです。音質のため余分なものは全て除去し、ヴォリュームですら左右独立(クリック付)という徹底ぶりですが、今でも”音は722が一番”と言って下さる方も沢山いらっしゃいます。傾向的には”締まって伸びる”。解像度を高め聴感上のダイナミックレンジを伸長させるためのプリと言ってもいいかもしれません。

ここまで3台を比較してリファレンスソースは”My Foolish Heart”。
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オンエアを聴いて頂くと”ブラシの表情がここまで違うとは!”と驚かれるかもしれません。

後半は個性豊かなプリが続々と登場きます。4台目はMUSIC BIRDスタジオでもリファレンスとして使っていただいているSV-192A/D。SV-722と正反対の多機能性が特徴でリモコン付,トーンコン(バイパス可)有。USB(1.1規格)入力有。192k/24bitのA/Dコンバータ内臓で20万という大変な代物な訳ですが、ライン部でECC82を4本(CRフォノEQ部はECC83を2本)で回路構成し、音質的には722の延長線上にありながら若干温度感を上げています。

後半3台で使ったリファレンス曲はこれ。ムローヴァのバッハ
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試聴に使ったのはDisc2,Track14の”ヴァイオリンと通奏低音のためのソナタBWV1021”ですが、コレ!素晴らしいです!!
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言い古された言い回しですが、潤い,響きの良さでスタジオの空気が変わったような印象です。TさんもIプロデユーサーも”買います!”と仰ってCD番号を記録されていました。この辺りのクラスになるとプリ使用の成否よりも、加えることで音楽性がどう変化するかという聴き方に変わってきます。サンバレーで言えば大関クラスのSV-192A/D。大健闘でした。
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いよいよ西の横綱の登場です。SV-300LB(正式発表1月末予定)。形を見てパワーアンプと思わないで頂きたい…10年来プランを温めてきた300Bプリです。初段ECC81,ドライブ12BH7,ファイナル300B,整流5AR4という構成で設計的にはパワーアンプそのものな訳ですが電圧出力に特化した出力トランスを新規に制作し、SV-284Dをダイレクトにドライブできるバランス出力と汎用アンバランス出力の両方を持っています。

これを読んで下さっている方で”音はどんなだろう?”と思っておられる方も多いと思いますが、意外なほどキレ込みがよく余韻だけでなくヌケも向上することにTさんも驚かれていました。SV-300LBではTさんのTELEFUNKEN ECC81,GE 12BH7,WE300B(US NAVY仕様),TELEFUNKEN GZ34のスペシャルチューブでのオンエアもありますが、更にハイがクリアになって非常に好印象であったことを付け加えておきます。
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そして最後に登場したのが東の横綱、SV-310。特に意識した訳ではなかったのすが、私どものパワーアンプだけでなく他社さんの高級パワーアンプにもリファレンス指定いただけるなど、10年余でここまで育てていただけました。まさにプリアンプを音楽再生の最重要な武器と捉え、出力トランスによる豊かな倍音と150kHz(-3dB)に迫る超広帯域を実現したスペシャルモデルです。写真はLM310A,STC 4274Bで聴いた時のものですが、最後に聴いたTさんのWE310B(メッシュプレート刻印),WE274B(40年代刻印)バージョンは何か特別な音を聴いているような錯覚にスタジオが包まれました。

恐らくプリの有用性について漠たる疑問をお持ちの方も沢山おいでと思います。そんな方にこそ3/18(再放送3/25)のオンエアを聴いて頂きたいと思います。この2時間のなかに答えがあると申し上げていいでしょう。





by audiokaleidoscope | 2016-01-24 12:53 | オーディオ

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