店舗を持たない通販稼業…店がないなら自分が店になろう、と思って幾年月。今まで何百回となくお客さんの家をお訪ねし、音を聴かせていただいてきました。
今日もそんなリスニングルーム訪問。
真空管オーディオフェアでご縁をいただいたWさんの別荘にお邪魔してきました。場所は蓼科(長野)です。
中央高速諏訪ICを下りてビーナスラインを上がっていくとドンドン景色が変わっていきます。Wさんの別荘地は標高約1300m。澄み切った空気の丘陵地に建つ瀟洒な洋館です。
外は摂氏数度という寒さながらWさんの部屋は暖かく快適そのもの。グリーンとブラウンで統一された広々としたリビングは北欧の雰囲気。
Wさんの休日のためのオーディオセット。従来単独でお使いになっていたマッキンのプリメイン(MA6800)のプリアウトから私どもの真空管パワーアンプに接続する方法です。スピーカーはTADのユニットを搭載した国産のハイエンド機。
左からSV-8800SE(KT120仕様)そしてSV-91B。Wさんは
パバロッティの大ファン。声の質感に大変こだわりをお持ちで、以前から真空管アンプを使ってみたいと思っていらっしゃったそう。
SV-8800SEのKT88とKT120比較で言うと、このスピーカーではKT88の方が高域の倍音の絡み合い方が複雑で、やや賑やかに鳴る感じであるのに対しKT120はエッジがクリアになり、パバロッティの声が伸びやかに部屋全体を満たす感じが爽快そのものでした。対して91Bは300Bならではの量感と厚みで小音量時のリアリティはサスガ!という感じです。
Wさんは”アンプを真空管にしたら今までの音にヴェールが一枚被っていることが分かりましてね。やっぱり音の鮮度が違うんです。これでスピーカーをタンノイのウエストミンスター辺りに替えたらどうなるんだろう、と思っちゃいますね”と仰っていました。このインテリアにウエストミンスター…さぞピッタリだろうな、と思いながらWさん宅を後にしました。今後Wさんの音がどう変わっていくかがとても楽しみです。
考えてみると、キット屋に店はなくても全国津々浦々に何千という皆さんのリスニングルームがあり、私どものアンプやスピーカーが今日も音楽を奏でている…言い換えれば日本中にキット屋ショールームがあると言えるのかもしれません。そう考えただけでも嬉しく誇らしい気持ちになります。
Wさん宅を後にして目指すは女神湖。今から30年弱前オープンに関わらせて頂いたリゾートホテルをちょっと覗いてみようと思ったのです。当時このプロジェクトで私が担当したのは調度品類のセレクト。カナダ人の空間プロデューサーを招き、当時まだ一般的でなかった長期滞在型リゾートの走りとも言える施設として大いに注目を浴びた場所です。
変わらない外観。まさか当時と同じ内装である訳がない…と思いながらも、ひょっとして…という期待がなかったと言えば嘘になりますが、あいにく冬のハイシーズン前の改装中で閉館しており、中には入れなかったのが残念でした。ただ年内もう一度Wさん宅を訪問させていただく予定ですので、タイミングが合えば27年前に時計を巻き戻して泊まっていこうかな、とも考えているところです。もういちどWさんの音を聴かせていただくのと同じくらい楽しみです。