(11/17)フィラメント定格に注意
2015年 11月 17日
今日は"差換えられそうで注意が必要な出力管”について少し書きます。誤解のないように書きますが、品質上問題があるという話でなく、勘違いし易い球ということで理解頂きたい内容です。皆さんはKR Audio Electronics社をご存じでしょうか?チェコスロバキア時代にあった旧TESLA社の施設を使用して手造りで直熱3極出力管を製造しているブランドです。
中国球の数倍のプライスタグがつき、海外のハイエンド真空管アンプに搭載されることもある高級ブランドですが、皆さんが差替えを検討される場合には少し注意が必要なケースがあります。例えばKR845。
真空管の呼称(例えば300Bとか2A3)というのは規格番号の一種ですから、本来はどこのメーカーが作ろうと同じ動作条件であると理解するのが普通です。しかしながら現行球のなかには管種名のみ同一で定格が異なっている真空管もあるのです。これが10%とか15%の差であれば或る意味誤差範囲と言える訳で実害もないのですが、大きく異なる場合には注意が必要です。
KR845はその一例です。元々845のフィラメント定格は10V/3.25A(=32.5W)です。対してKR845は公称値10V/1A(=10W)。昨日の整流管の理屈で言えば小なりイコールだからOKじゃないか?と思われるかもしれませんが、相対値としては実に1/3(以下)。ここで何が起こるかというと多くの845アンプにKR845を使うと本来10Vであるべきフィラメント電圧が上がり、真空管の寿命が非常に短くなるケースがあることを覚えておいて下さい。
輸入元はきちんと情報を発信していますが、店頭で知らずに買われてしまった方は大変です。フィラメント電圧が上がるということは寿命だけでなくアンプそのものの動作(例えばプレート電流)も想定値から外れる可能性もあり、副次的な問題となるケースもありますから、アンプの改造を想定されていない方は十分な事前検討が必要です。もっと言えば仮に世の中にKR845専用アンプがあって、知らずに普通の845を挿して使ったらどうなるか…考えるだけでも恐ろしい気がします。
同様に"KR300BXLS”については通常の300Bのフィラメント電流が1.2A(~1.4A)であるのに対し、1.8A流れることを事前に知っておく必要があるでしょう。
KRばかりではありません。最近は"一見同じ。でも実際は別のタマ”が散見されます。使いたい真空管が自分のアンプにマッチしているかどうかは使う側の知恵。よく情報を集めて正しく使ってあげましょう!
そういえば今日の夕方”New 樽スピーカー”をアップさせていただきました。