DMM.make.AKIBAのイベントが終わって出張最終日は
MUSIC BIRDのスタジオへ。
今回の収録は2016年新春特別番組(第一回1/8,第二回1/22)としてリスナーさんからリクエストのあったオーディオ企画(真空管の差し替え&カップリングコンデンサーの載せ替え公開実験)でした。都合4時間、コテコテの真空管ネタ満載の番組。これは"その筋”の方にとって聴き逃せない内容!です。ゲストはヴィンテージチューブコレクターとしても知られるTさんです。

Tさんと。楽しかったですね!!

4台の真空管アンプをスタジオに持ち込んで、リアルタイムに球やカップリングコンデンサーを交換しながらパワーアンプ出力をスタジオのミキサーに送るスタイルで収録しましたので、みなさんのスピーカーから各種真空管の音が聴ける番組です。

最初は
SV-S1616D(多極管仕様)。中国 EL34→英 Mullard EL34→中国 KT88→英 GEC KT88→露 KT150(ダイオード仕様/独 テレフンケンGZ34仕様比較)で比較しています。ダントツだったのはGEC KT88でしたがKT150(整流管仕様)もとても良かったです。

続いては本丸300Bです。これが第一回のハイライトといえるでしょう。これはすごかったです!
まずは
PSVANE 300B仕様。300Bの繊細感そのままに明るさとクリアネスを兼備した素性の良さが出たあと、年代別WE300Bの聴き比べです。ここではTさんのコレクションの中から50年代前期→刻印(40年代後期)→300A(30年代後半)と時代を遡っていった訳ですが、旧いものほど豊かな倍音感に包まれる魅惑の世界に引き込まれていきました。まさに中毒になりそうな300Bの魅力がきっとOAでもお伝えきると確信しています。
二本目は電圧増幅段の真空管差し替えからスタートします。標準の中国 12AT7/12AU7→ 英 Mullard CV4024/CV4003に差し替えてみたところ、Mullardのしっとりと潤い感と深みが出るかと思いきや、ハイが抜けてクリアに変化。恐らくこれはμ(増幅度)の高い初段12AT7の方がトータル音質に与える影響が大きいことによるものでしょう。これは新たな発見でありました。そのあとTさんのテレフンケン12AU7に替えてみたところ、音の粒立ちがプリッとして近い音に変化。これもとても良かったです。
続いては標準ダイオード仕様→日立 5AR4(通信用)にチェンジしてみました。Eva CassidyのLPで比較したのですが、これは圧倒的な違い。キメが整い密度感が高まって音の麗しさが確実に1ランクアップする整流管、ぜひお奨めしたいと思います。
続いてはカップリングコンデンサーの載せ替え実験です。これは正直どこまで音の違いが出るのか(果たしてOAで違いが分かるのか)自信がなかったのですが、誰が聴いても違いが分かるほどの差異(換装効果)が出る結果となりました。標準(フィルム)→ASC X333(フィルム)→デル・リトモ(オイルペーパー)→JENSEN(オイルペーパー)と入れ替えていった訳ですが、段違いに素晴らしかったのがJENSENです。値段は高いがいい味です!なんてCMが昔ありましたが、まさにそんな感じ。このコーナーは真空管アンプファンには必聴です!
これがASC。主にプリアンプのリニアリティ(鮮度)を高めるのに最適なコンデンサーな訳ですが、敢えてパワーアンプのカップリングに使ってみたという訳です。音の立ち上がりが明晰になり明るく変化しました。

次いでデル・リトモですね。オイルペーパーコンの標準品として非常にポピュラーな存在になりました。手軽に音のグレードアップが図れる強い味方です。

そしてJENSEN。これはもう無敵!という他ない素晴らしい音でした。リードが銀線/取付推奨極性ありという、こだわりの塊のようなJENSENですが、値千金という申し上げるにふさわしい、これぞ真空管アンプ!という音になりました。フォルテピアノの端正で軽やかな響きが広大なホールに漂うような空気感の素晴らしさは比類なきものでした。

続いては
2A3仕様の聴き比べ。標準仕様として設定した
Golden Dragon 2A3 premiumの輝かしく端正な音と比較してTさんのコレクションであるRCA 2A3二枚プレート(後期型:軍仕様)は円やかで品の良い音でした。そしてRCA 2A3一枚プレート(前期型:カミンガム仕様)。これは私もほとんど聴いたことがなかっただけに非常に注目していたのですが、二枚プレートとは全く音が違って驚きました。何と言っても音が明るい!聴感上のリニアリティの良さは別格でしたが、音の傾向はGolden Dragonと同系統の音で、そういう意味では標準仕様で十分楽しめるセットと言えるかと思います。
そしてついに最後のコーナー。
SV-91Bの登場です。当社の定番300Bのリファレンスの音をぜひ放送でも聴いていただきたいという思い、そして真空管を替えた時の変化が高級機ではどうなるか…を皆さんと一緒に楽しみたいという気持ちも勿論ありました。

最初は標準。SV-S1616Dが"タマの素材の音を明晰に描き分ける”アンプとすればSV-91Bは完全に”音を造り込んだ”アンプ。同じ300Bシングルでも骨太である意味凄みのある音を楽しんでいただいた後…

初段のみWE337A(メッシュ刻印)‐WE337A(ラージ)に替えて音が激変。音の彫りの深さとライブネス(臨場感)が恐ろしいことになりました。そして整流管をWE274B刻印(1944)へ。残響感だけでなく質感そのものが整流管一本でここまで変化するのはある意味驚愕です。その後ついにオールWE(WE300B刻印)に替えて総仕上げ。オールウエスタンの美しく神々しいまでのサウンドを楽しみました。ぜひ皆さんにもOAでこの感動を追体験いただきたいと思います。

今回Tさんからお借りしたコレクションの一部。まさにお宝、文化遺産と言ってもいいかもしれません。素晴らしいひと時でした。次回は"おてごろ真空管アンプ比較試聴”なんてやってみようかな(笑)。