(10/27)音の変化、その訳。
2015年 10月 28日

先日のギドン・クレーメルが晩秋から初冬の空気感を漂わせていたのと対照的にヨーヨーの演奏はいつも春の日差しのように柔らかく温かさに包まれている。彼がステージに現れていつものように軽く手を挙げるだけで、会場が華やぐ。寛ぐ。
今回はバッハ/グノーのアヴェ・マリアに始まりフランクのチェロ・ソナタで締めくくられる内容で、誰しもが記憶の中に留めているメロディが随所にちりばめられている感じ。演奏が始まってまず感じたのは、楽器の鳴りの違い。今回もダヴィドフ(ストラド)の筈…と思いながらも明らかに今までのヨーヨーの音よりも明るめで、低音域の胴鳴り感よりも中高域のクリスピーさが印象に残る感じ。前回公演の時よりも明らかに音が若返った印象。
終演後、楽屋で本人に会って”今日はとてもフレッシュな音でしたね”と感想を告げると、実は今月60歳の誕生日に奥さまからプレゼントされた新しい弓で今回ツアーに出ているとのこと。ということは使い始めてまだ三週間のブランニュー・ボウな訳で、音が若いと感じたのはある意味、当然のこと。300歳を超える楽器と生まれたての弓が奏でる新鮮なひと時。
60歳になって益々若返ったようなヨーヨーの演奏を心行くまで楽しみました。
