(9/18)ラーメン屋とオーディオ屋

昨今は100人のうち1人からでもコンプレインを受ければそれをリスクと捉える時代になりました。

しかし趣味というものは誰の為でもなく自分だけの為に存在するもので、公序良俗に反しないのは当然ですが、本来それを選択するのもそれを排除するのも、その人が決めるべきもの。

その昔、オーディオ屋はラーメン屋と似てる…と書いたことがあります。最近はあまり見ませんが、いっときTVや雑誌などで”人気ラーメン店ベスト100”的なテーマが流行ったことがありました。多くの人が旨い!と評価する訳ですから一等賞のラーメン屋さんは立派なお仕事をされていると思いますし、味も一流であることは論を待ちません。しかしそれはあくまで”世間の評価”であって”私の評価”ではないことも一方で厳然たる事実です。

ラーメンには塩もあれば醤油もあれば豚骨も味噌もある…そんななかで或る店の醤油ラーメンが絶品!日本一!という評価を得るということと、自分が食して旨い!というのは全く別次元の話であるという事を何処かで理解しなくてはなりません。私たちの仕事も同じです。何が評判が良いとか何が売れているということも大切ですが、それ以上に重要なのは”自分が一番好きな音”をみつけ、それに最も近い音を出すアンプやスピーカーをお客さんと一緒に探す事の方が余程意味があるというものです。

つい2日ほど前、或る方と電話で話していて”リスクを取るからリターンもあるんじゃないか!”と言われて背筋に電気が走りました。私の仕事はラーメン屋…10人のお客さんのうち5人の方が”旨かったまた来るよ!”と言ってくれれば大繁盛店です。それを100人に一人のお客さんの不満を恐れて何の特徴もない味を作って何の意味があるのか…改めてオーディオ屋は如何にあるべきかを教えて頂いたような気がします。

2012年にLM91A(在庫僅少),2013年にLM86B(完売)というアンプを作りました。実はこの2機種で私はアンプづくりを止めよう、とその時思っていました。オーディオという趣味の世界でリスクを取れない(チャレンジできない)なら私が此処に居なくてもいいじゃないか…そう思ったからです。でも今日も会社に来て仕事できるのは会社の先輩や仲間,そして100分の99の同志(=皆さん)のお陰です。いちど割れた風船の綻びを直すのは大変ですが、しぼんだ何かが膨らんで出来上がった新製品もまた私にとっては大切な存在。

SV-284Dは万能選手ではありません。これだけでは鳴らない、デカい、重い、消費電力も大きい…ネガティブな要素を見つけようとすれば、それこそ山のように出てくるでしょう。でもこのアンプを直熱三極管シングルに繋いだ時の瑞々しく、ヌケの良い、そして絶妙な倍音感は他のアンプからはなかなか得難い”私たちの味”と、今音を聴きながらそう感じています。

例えばSV-501SE+SV-284D。
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例えばSV-2500SE(完売)+SV-284D。
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この美しさを或る人は無意味と捉えるかもしれません。私はそれで良いと思っています。その多様性こそが趣味の神髄だからです。

これまで何度も言ってきたことですが、人もモノも100点満点なんてありえない…そしてまた零点の人もモノも絶対にない。みんな得手,不得手があって当たり前。大切なのは人もモノもその良いところを引き出して輝かせてあげることだと思います。例えば50点…その前にプラスを付すか、マイナスを付すかはその時代の社会観、その人の人生観なのかもしれませんね。

私の作るラーメンは10人中10人に旨いと言ってもらえなないかもしれません。でも”この味じゃないとね!”と言って下さる方の為にこれからもチャレンジ…できたら嬉しいですし、そういう世の中であって欲しいと思います。



by audiokaleidoscope | 2015-09-18 10:21 | オーディオ

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