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(6/29)ミッション

皆さん、こんばんは、日付変更線を越えてから会社に戻って仕事再開。今日はN響の演奏会が近くであったのです。

・ボロディン:歌劇「イーゴリ公」から「ダッタンの娘たちの踊り」,「ダッタン人の踊り」
・リスト:ピアノ協奏曲 第一番
・チャイコスフキー:交響曲 第六番「悲愴」

というプログラム。思い起こせばこの仕事に携わるようになって初めてN響演奏会に伺ったのが2002年。それまでクラシックの演奏会には縁の無かった私に音楽を生で聴く歓びを教えてくれたのがN響でした。勿論それまでも他ジャンルのライブには幾度となく行っていましたが、本物の弦の響きがこんなに美しいのか…と心底感動したのを昨日の事のように覚えています。

当時の日記から引用してみますと…

一曲めの最初のフレーズが出た瞬間から、私はその音色の美しさ,柔らかさに陶然となりました。本当は一本一本の楽器からそれぞれ音が発せられているのですが、全くそのような感じには聴こえません。それぞれの楽器から紡ぎ出される音の「糸」みたいなものが空間でふっと溶け合い、客席を暖かく包み込むような浮遊感とでもいうのでしょうか。真綿でくるまれたような暖かさと寛ぎのある、えも言われぬこの世のものとは思えない美しい音の魔術です。

また、凄く印象的だったのが加藤知子さんのヴァイオリンです。何といったら良いのでしょうか、まるで音が撓る(しなる)ような感じとでも表現したらよいのかと思うのですが、まさに変幻自在の音色と情感の表現が会場全体を圧倒しています。あんな小さなヴァイオリンからむせび泣くような、時として叫ぶような心を揺さぶる音が出るなんて俄かには信じられません。音楽の持つ凄い力みたいなものを目の当たりにして、私は改めて音楽の虜になってしまったようです。

私自身もオーディオ(再生音楽)に携わる人間のひとりとして、平素は2つのスピーカーを前にし、録音されたメディアと通じて音楽を体験することが殆どですが、どうしても「機器」と「録音」という二つの「与えられた要素」に少なからず違和感を感じながら音楽と接しています。その「違和感」を少しでも減らし、「音」でなく「音楽」を楽しむため、私は真空管アンプという手段を選択し、それを一人でも多くの方に伝えようとしている訳ですが、この素晴らしい音楽体験を通じ、現代流行の余りにクールな音は明らかに「現場の感動」とはベクトルの違う音だと確認致した次第です。

これからも機会を見つけなるべく生音の素晴らしさを体験し、それをオーディオにフィードバックさせていこう、と思いました(後略)。

※「キット屋店主のひとりごと(2002年9月25日)」より引用

今でもあの夜のことは忘れません。それ以来ずっとクラシックが好きでいられるのもオーディオという仕事を通じて沢山の素晴らしい仲間と出会うことが出来たから。今日も素晴らしいひと時を堪能しました。

終演後にはYさん(Vn)と一緒に食事。
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※Yさんの許可を得て掲載させて頂いています。

今日は幸い客席に若い方が多く、とても良い感じだったのですが、私がそうであったように、如何に生演奏の素晴らしさを聴いたことのない方に体験していただくのか…オーディオ業界が今まさに直面している同じテーマについて食事しながら色々と意見交換しました。まだまだやるべきこと、出来る事が幾らでもある…というのが今日の結論だったような気がします。

別件ですが、今日は某新聞の取材を受けました。どんな記事になっていつ掲載されるのか、分かり次第また改めてご報告しますが、真空管アンプのキット販売という特異なビジネスモデルについて改めて自分なりに考える機会を与えて頂いたような気がしています。

「喰わず嫌い」という言葉があります。クラシックに親しんだことのない方でも、大ホールで聴く弦の響きを心地良くないと思う人はいない筈。同様に真空管アンプの豊かな倍音は多くの人の共感を呼ぶ筈です。私のミッションは如何にこの魅力を一人でも多くの方に伝えるか…にあることを改めて認識しました。

繰り返しになりますが、音楽を作る人が居て、それを演奏する人が居て、それを録音する人が居て、それを再生する装置を作る私たちが居て、それを聴いて下さる皆さんが居る・・・その連綿と繋がる人の”輪”をもっともっと拡げていかなくてはならない…そう思った一日でした。



by audiokaleidoscope | 2015-06-30 01:22 | オーディオ

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