皆さん、こんにちは。
朝会がお開きになって直ぐH邸に向かいました。それまで床に直置きだったMIDを浮かせたので、その結果検証と機器の健康診断をして欲しい、とご依頼を頂いていたのです。
久しぶりのH邸。納品して1年半ぐらいですかね・・・と伺ったら間もなく3年と聞いてちょっとビックリ。日頃から連絡を取り合ったり、折に触れて機器の調子はどうだろうか・・・という思いが去来することがしばしばあったこともあってそんなに時間が経っているとは全く思っていなかったのです。光陰矢のごとしとはこのことですね。
まずアンプの調整。ダミーロード,ミルバル,テスターを持ち込んでバイアスとAC(ハム)バランスの再調整。大きなドリフトもなく全く異常なないことを確認しました。Hさんの次なるターゲットは初段(12AU7)を
CV4003/M8136へアップグレードすることのようです。CV4003にすることで更に円やかで粒立ちの細やかな倍音感が現れることでしょう。
今回Hさんが一番注力されたMIDの足下対策。黒御影のベースを特注され、更に200㎜程度エンクロージャーを嵩上げされた訳ですが、注目すべきはその方法。通常は前2点,後1点の3点支持が通常ですが、Hさんは前1点,後2点(後ろ側は御影石ブロック)にされました。重量荷重的には前2/後1になる訳ですが、メカニカルグラウンディング(Mechanical-Grounding)理論的には「振動を重心の直下に一点で落とす」のが正しいと言われており、Hさんはまさにそ実践された訳です。
いまから15年ほど前だったと思いますが、故 朝沼予史宏さんがJBL4344MkIIをどう制振するかという実験をオーディオ雑誌の企画でやられていました。この時も試行錯誤の末、前1/後2を選ばれたと記憶しています。メカニカルグラウンディングは対象のマス(自重)が大きいほどその効果が高く、音場的再生を指向する場合には大きなリットがあります。Hさんの場合もスピーカーの背後に浮かび上がるような定位になったのは、エンクロージャーの不要共振が除去され位相特性を乱すエンクロージャーの不要共振が減じられた結果の音ということが出来ます。音の被りがとれただけでなく低域が締まって情報量が格段に増えました。
HさんのシステムはTL3N+SV-192PRO/MC-3~SV-722マランツ7type~VP-2500SEという布陣で元々ハイコントラスト,ハイディフィニッション系のラインナップでしたから、今回のチューンによって鏡のような解像度の高さが際立つ音になりました。そのためMID側のRoll-Offを一段階落としてバランスを取りました。
Hさんはまだハイレゾをやられていないということでしたので、PCを持ち込んで176.4k/24bitを中心に再生。今日の様子を見守っておられたHさんのご友人も「こりゃ別世界だ!」と仰っていました。
それまで雑談していたのが音が出てパッと言葉が止まって思わず立ち上がる・・・これは良い音を感じた時の一種の条件反射のようなもので、これまで何回となくこの情景を目の当たりにしてきましたが、今回もHさんの努力が実り非常に良い結果が出たと思います。次回お邪魔する時はバリバリのハイレゾ再生環境が完成しているかもしれません。
掲載許諾:Hさん
音は育つものです。どう育てるか・・・どう躾けるかは私たち使う側に委ねられています。ポンと置いて最初からパーフェクトに鳴るオーディオは一つもありません。手塩にかけて3年,5年かかって、やっと思った音が出る・・・これがオーディオというもの。
何事も直ぐ答えが出るモノを求めがちな昨今ですが、オーディオに限っては一生かけて自分との対話を楽しむような趣味だとつくづく思います。期限も査定もない、自分だけの素晴らしい世界です。