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(4/15)オーディオの夢、ふたたび

土曜は調布のYさんと一緒に青梅のH邸へ。Hさんは先の東京試聴会(2月)を機に交流が始まった方で、試聴会後のご感想をブログでご紹介させていただいたところ、"はじめて音を聴いてここまで本質に迫るコメントが出せるとは!!"と多くのフィードバックがあり、私も一度お目にかかりたいものだ…とずっと思っていたのです。

その後メールで何度かやりとりさせていただいたところ、JBL 4344を使っておられて"出来れば真空管アンプで手合わせしてみたい"と仰るので91B/PSVANE WE仕様SV-8800SE/KT150仕様を持って持込み(押しかけ)試聴をさせて頂くことに。そして4344はチャンネル・ディバイダーを使用した本格的なバイアンプ化も可能であることから同じくJBLスピーカーをパッシブバイアンプドライブされているYさんもお誘いしたという訳です。

さすが東京は広い!三軒茶屋のホテルを出てH邸まで2時間半。週末ということもあり高速も混んでいましたが、関東山地と武蔵野台地にまたがり中部を多摩川が東流する閑静な素敵な町並みに魅了されました。目指すH邸に到着。あの素晴らしい文章を書かれる感性は酸いも甘いも噛み分けられた大先輩に違いない…とYさんも私も想像していたのですが、なんと40代の方でYさんも私も余計に驚いた次第です。
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アンプの搬入が終わったところ。プリは懐かしいSV-14LB。パワーアンプは複数お持ちですが、いずれも半導体でした。Hさんが日頃聴いておられる音源で現状把握をさせていただいたところ、この手のマルチウェイでよくあるトラップ・・・Hさんがこれまで様々なトライをされてきたことが直ぐ分かりました。

音源もいろいろです。高域が伸びているもの、中域が張り出しているもの、低域の量感に溢れているもの…全ての音源を完璧に鳴らせる装置というものは一つもありません。そして部屋の環境・・・100Hz前後に小さくないブーミングが発生していて中高域をマスクしていた部分も影響していたと思われます。その結果、特にハイ(2405H)とミッドハイ(2425J)のレスポンスが若干低めでミッドバス(2122H)フルレンジに薄く高域を加えたような鳴り方になっていました。加えてウーハー(2235H)は小音量ゆえ制動されている領域にまで踏み込めていない…高能率スピーカーシステムを半導体アンプで鳴らした際の難しい側面がそのまま音に現れている状態でした。

Hさんには正直に今の状態は4344の持ち味を出し切っているとは言えないことをお伝えし、失礼かもしれないがバランスを少し変えさせて頂きたいと申し上げたところ、"ぜひ!"と仰って下さったのでハイとミッドハイをそれぞれ1~2dB上げさせて頂きました。もちろん真空管アンプであればこれでも決して耳障りにはならないという勝算あってのことです。

このバランスで一旦固定し、まずは91B。三極管シングルならでは音場の拡がりと繊細なニュアンスを楽しんで頂きました。先ほどまでの抑制された音から一気に血のめぐった生気あふれる音への変化にHさんも気づかれ4344の極めて高いポテンシャルに目を細めていらっしゃいます。特に上松美香(Mika Agematsu)のアルパのしなやかさと奥行きの変化は極めて大きなものでした。

続いて8800SEでは一気にローエンドの音の形が見えるようになり音のシャープネスが一段と明確に。内声部の密度感は91Bに僅かに劣るものの、いわゆるJBLらしい闊達さと力強さが増した印象です。Yさんも"もし一台アンプを選ぶなら8800SEの方が4344らしいかもしれないですね"と仰り、私も同感であることをお伝えするとHさんは91Bの中高域の質感も捨てがたいと仰います。ならばウーハーは8800SE,ミッドバス以上は91Bで帯域分割して鳴らすマルチアンプドライブをやってみませんか!という話に。偶々Hさんが随分前にお求めになっていた4343/4344専用チャンデバをお持ちでしたので、それを使い1980年代わが国のオーディオファイルが皆あこがれたJBL43系アクティブバイアンプにチャレンジすることになりました。

チャンデバを使った本格的バイアンプの最大のメリットはマルチウェイスピーカーの音に最も悪影響を及ぼす低域/中域以上を分割するために不可欠なクロスオーバー素子(インダクタンスの大きいコイルやキャパシタンスの大きいコンデンサー)が除去できる点にあります。特に4344のようにクロスオーバー周波数の低い(公称320Hz)という低い値で帯域分割しているスピーカーほど効果は覿面といえるでしょう。つまりウーハーを介在物なしにダイレクトにドライブすることによる音質改善がマルチ最大のメリットである訳です。

更に言えば通常の接続では帯域分割された中高域は絶えずアンプの大半のエネルギーを消費するウーハーによって一種の変調を受けているともいえ、結果として電気的な歪みの増大,聴感上の曇りの発生を招く訳です。その原因を根本的に解決できる点においても極めて合理的です。

背反事項としてはネットワークがリアクタンスを持つことで一種のノイズ吸収効果を期待できるのに対し、マルチアンプは原理的にパワーアンプとスピーカーのボイスコイルが直結されることによりアンプの残留ノイズの影響を受けやすいことが挙げられます。特に真空管アンプを使ったマルチアンプではアンプ自体のSNが良いものを選ぶことが重要になります。

そんな説明をしながら中高域:91B,低域:8800SEという何とも贅沢なバイアンプシステムが出来上がりました。
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その感想はHさんから頂いたメールの文面を以って説明に代えるのが適切かもしれません。

91B+8800SEのバイアンプの音は圧巻でした。しっかりと芯が通りつつ、
音の広がりも確保出来る、まさに理想の組み合わせですね。大橋さんから
「4344のバイアンプ駆動は80年代は誰もが憧れるひとつの到達点と言われ
ていた」といったお話がありましたが、現在4344を使っている私にとっても、
近い将来、是非到達したい音だと思います。

Yさんは当日武道館でノラ・ジョーンスのライブを楽しまれるということで駅までお送りする途中、「これだけの変化があるとは正直思っていませんでした。楽しかったですね」と仰って下さいましたが、実はあれこれ弄らさせて頂いた私が一番楽しませて頂いたひと時であったかもしれません。私も嘗ては5ウェイのフルマルチシステム(モノアンプ×10台)で悪戦苦闘したクチですが、こんなところで当時の経験が活かされるとは思ってもいませんでした。機会あれば是非またお邪魔させていただきたい、素晴らしいオーディオの夢が詰まったH邸でありました。



by audiokaleidoscope | 2017-04-17 01:49 | オーディオ | Comments(0)

(11/28_2)リスナー訪問記

忘れられない一文があります。「音楽と食事には、共通点がある。それは、飢えていなければ楽しめないということだ」・・・これは「バイオリニストは肩が凝る 鶴我裕子のN響日記」の一節。著者 鶴我さんを紹介いただいたのが確か2005年の暮れ。そしてご自宅に初めてお邪魔させて頂いたのが旧店主日記によれば2006年のバレンタインデーでした。当日の日記にはこんな写真がアップされていました。もう10年かあ・・・。

ある方をして"本当の上品とはこういう人を言うのだ"と言わしめた方。その洗練された洒脱な文章は上質な音楽のように流麗でいつまでも心の中に留まっています。その鶴我さんから今日届いた新刊、"バイオリニストは弾いてない"。

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封を切るのももどかしく、あの懐かしい日々を思い出しながら一気に読破。健筆さらに冴え渡り鋭い洞察力と思わずクスッと笑ってしまうユーモアは全てのクラシックファン必携の書。演奏する人しか知りえない音楽の深遠なる淵を見る思いです。オーディオのお話も出てきますよ!

その後、車を飛ばして静岡へ。以前電話を頂いて”大放談で同じ球を使った廉価帯アンプと高級アンプの聴き較べをやって欲しいなあ"とリクエストを下さったSさん宅を訪問するため。12/9オンエアでこの企画を聴いていただける報告を兼ねて実際SさんのリスニングルームでSV-P1616D/多極管仕様SV-8800SEをKT120/KT150を聴いていただこうと思ったのです。

Sさんのリスニングルーム。コントラバス奏者として活躍されたのち教育者として永く音楽(とくにコーラス)の指導に当たってこられた方だけあって音に対する造詣の深さに舌を巻きました。鶴我さんもSさんもそう・・・こういう方々との出会いを通じてどれだけの事を学んできたか・・・その積み重ねがあればこそ様々なアンプやスピーカーが産まれたきたことを想うと言葉に詰まります。
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映像系はウィーンアコースティックのトールボーイで。恐らくReference35と同じ工場で作られたもの。
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入力系。Garrardのターンテーブルが強力な存在感を放っています。MUSIC BIRDの最高級チューナーも。
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音楽はこちらがメイン。Tannoy/ランカスター(オリジナル)の極美品。ユニットはモニターゴールド。第二のオートグラフと較べると端整で力強い音。このスピーカーは真空管でなければならない、それも多極管プッシュプルでこそ真価が・・・というSさんの狙いは果たして大正解といえるものでした。
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まずP1616D/KT120仕様で見通しのよい力強い音を体験された後、8800SEでKT120そしてKT150へ。私も少し驚いたのがKT150の空間の圧倒的大きさ。Sさんが指揮をされたオルガンの音色と合唱がホールの隅々にまで浸透する美しさ。Sさんも思わず"この音源にここまでの情報量があったとは・・・!"と唸っていらっしゃいました。計画ではP1616Dは球をとっかえひっかえしながら楽しむ用途、8800SEはKT150専用・・・ということのよう。是非またお邪魔させて頂いて聴きたくなる音でした。



by audiokaleidoscope | 2016-11-29 00:42 | オーディオ | Comments(0)

(5/14)PA用途での真空管アンプ

貴重な経験をしましたので、そのレポートを…。

地元のカフェでアコースティックギター2本+ヴォーカルのみのライブをやるんだけどPAを真空管アンプで出来ないかな?…とオファを頂いたのが今月初め頃。そりゃもう喜んで!とお応えしました。いままでアウトボード的にSV-192PROSV-192A/Dを大規模PAシステムにインサートして音を滑らかにする経験は何度もありますが、卓の出力の代わりやオモテ(客席)用のアンプを全て真空管で組んだ経験はありませんでしたので、興味半分,心配半分で現場に臨みました。

一本がガット弦,一本がスチール弦で音量差が少なくとも数dB(以上)あること、お店のなかで大袈裟なシステムを組んで雰囲気を壊したくないこと等を勘案し、ギター2本とマイクのバランス調整のみ小型ミキサーで行っておいて、その出力をSV-192A/D(プリ)→SV-8800SE(KT88仕様)へセンドしてみました。つまり家庭用のオーディオセットアップと基本的に変わらない接続方法です。スピーカーは音質と能率を考えて懐かしいY-25を使用するシステムを検討したのが下の写真です。
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マスターレベルはSV-192A/Dで行う訳ですが、ここで192A/Dのリモコンが大活躍。曲や使う楽器によって0.5dB刻みでゲインを調整できるので、人知れず音量管理が出来て大変便利でした。
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パワーアンプの選択は正直迷いました。アコースティックギターの胴鳴りや響きの厚みを優先するなら三極管プッシュプル…ということでSV-2300LMもいいかなと思ったのですが、弦のアタックのスピード感と出力マージンを考えてSV-8800SEに決定。音色を考慮し出力管はKT88に…。結果的に約50Wの出力が大きなメリットとなりました。

日頃、家庭で録音音源を聴く立場でいえば出力は数Wもあれば御の字というケースが大半です。それはエアボリューム(空間)の大きさだけでなく、音源のダイナミックレンジの影響を受けにくいからでもあります。先日のポストでも書きましたが、私たちが聴く音源の大半が何らかの形でピークが圧縮(コンプ)されています。ライブでもしかりで特にロック系のPAでは爆音時に音が頭をぶつけないように、ほぼ100%何らかの形でコンプを効かせて音質管理をすることが必要です。特に最近はPA機器もフルデジタル化に向かっていますので、オーバーロードした際の不快なデジタルノイズは避けるためにかなり深めのコンプを掛けることが普通になっているのが現状。対して今回はノーコンプで出力していますから、静かにアルペジオを弾いている時のニュアンスを大切にすればかなり増幅系(アンプ)のゲインを上げなければなりません、対してジャーン!とストロークした時やヴォーカルがシャウトした時の音圧レベルは弱音時プラス20dB(10倍)以上のエネルギーを持っており、アンプのピークマージンが極めて重要になってくる訳です。

今回会場となったカフェは30坪程度の広さで30人も入れば満席という広さでありながら瞬間的にSV-8800SEがフルパワー近くまで振り込むような状態でした。前半のガットギターと後半のフォークギターでSV-192A/Dのゲインを調整するのは勿論、曲ごとに細かく出力レベルを調整したり、ギターソロで+1dB上げたり…とかなり細かく調整できたのもSV-192A/Dのリモコンのお陰。お客さんの殆どは全く知らずに聴いておられたと思いますが、ノーコンプ音源が実に広大なダイナミックレンジを持ち、常に聴感上の最適音量をキープするのが如何に難しいかを現場体験を通じ勉強させていただきました。

日頃このカフェではノンPAか半導体アンプのPAを使っておられるようですが、本番の最中にお店の方がホールに出てこられて”いつもと全然音が違うので驚きました”と仰っているのを伺って、お手伝いさせて頂いてよかったな…と喜んでいるところです。
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※関係者の方のご了承を得てアップさせて頂いています

終演後、アーティストさんとお店の方と…。同規模の一般的なAシステムからみるとかなり高価なものになりますが、やはり聴いて下さる方の感動と、また来たいと思って頂くための仕掛けとしてPAの高音質化の重要性がもっと広く認知されるといいなと思ったライブでした。とても楽しいひと時でした。



by audiokaleidoscope | 2016-05-16 15:06 | オーディオ | Comments(0)

(11/29)蓼科へ

店舗を持たない通販稼業…店がないなら自分が店になろう、と思って幾年月。今まで何百回となくお客さんの家をお訪ねし、音を聴かせていただいてきました。

今日もそんなリスニングルーム訪問。真空管オーディオフェアでご縁をいただいたWさんの別荘にお邪魔してきました。場所は蓼科(長野)です。
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中央高速諏訪ICを下りてビーナスラインを上がっていくとドンドン景色が変わっていきます。Wさんの別荘地は標高約1300m。澄み切った空気の丘陵地に建つ瀟洒な洋館です。
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外は摂氏数度という寒さながらWさんの部屋は暖かく快適そのもの。グリーンとブラウンで統一された広々としたリビングは北欧の雰囲気。
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Wさんの休日のためのオーディオセット。従来単独でお使いになっていたマッキンのプリメイン(MA6800)のプリアウトから私どもの真空管パワーアンプに接続する方法です。スピーカーはTADのユニットを搭載した国産のハイエンド機。
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左からSV-8800SE(KT120仕様)そしてSV-91B。Wさんはパバロッティの大ファン。声の質感に大変こだわりをお持ちで、以前から真空管アンプを使ってみたいと思っていらっしゃったそう。

SV-8800SEのKT88とKT120比較で言うと、このスピーカーではKT88の方が高域の倍音の絡み合い方が複雑で、やや賑やかに鳴る感じであるのに対しKT120はエッジがクリアになり、パバロッティの声が伸びやかに部屋全体を満たす感じが爽快そのものでした。対して91Bは300Bならではの量感と厚みで小音量時のリアリティはサスガ!という感じです。

Wさんは”アンプを真空管にしたら今までの音にヴェールが一枚被っていることが分かりましてね。やっぱり音の鮮度が違うんです。これでスピーカーをタンノイのウエストミンスター辺りに替えたらどうなるんだろう、と思っちゃいますね”と仰っていました。このインテリアにウエストミンスター…さぞピッタリだろうな、と思いながらWさん宅を後にしました。今後Wさんの音がどう変わっていくかがとても楽しみです。

考えてみると、キット屋に店はなくても全国津々浦々に何千という皆さんのリスニングルームがあり、私どものアンプやスピーカーが今日も音楽を奏でている…言い換えれば日本中にキット屋ショールームがあると言えるのかもしれません。そう考えただけでも嬉しく誇らしい気持ちになります。
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Wさん宅を後にして目指すは女神湖。今から30年弱前オープンに関わらせて頂いたリゾートホテルをちょっと覗いてみようと思ったのです。当時このプロジェクトで私が担当したのは調度品類のセレクト。カナダ人の空間プロデューサーを招き、当時まだ一般的でなかった長期滞在型リゾートの走りとも言える施設として大いに注目を浴びた場所です。

変わらない外観。まさか当時と同じ内装である訳がない…と思いながらも、ひょっとして…という期待がなかったと言えば嘘になりますが、あいにく冬のハイシーズン前の改装中で閉館しており、中には入れなかったのが残念でした。ただ年内もう一度Wさん宅を訪問させていただく予定ですので、タイミングが合えば27年前に時計を巻き戻して泊まっていこうかな、とも考えているところです。もういちどWさんの音を聴かせていただくのと同じくらい楽しみです。



by audiokaleidoscope | 2015-11-29 22:51 | オーディオ | Comments(0)

(8/11)ジャズ喫茶"K”

皆さん、こんにちは。昨日,今日と平日ということもあってかなり電話が入ってきます。今日も家を出て高速に乗る寸前にスクランブル出動を要する内容の電話を頂いたので意を決し、同乗者に事情を説明して踵(きびす)を返し会社へ帰還しました。モヤモヤしながら出かけても楽しくないので、これで良かったと納得。

今日のネタは昨日のKさん宅でのひと時のことを書いておきます。Kさんは長くJBL4430を愛用され、リアルな低音再生に情熱を燃やしてきた方。Kさんと話し合ってSV-192PRO+SV-8800SE(KT120仕様)で骨太でありながら密度感高く情報量の高いジャズ再生を共に目指してきました。

そんなKさんから電話でスピーカーをALTECクレシェンド(604E)に替えたと伺って誰よりも驚いた私。同じフロアスピーカーシステムでありながらJBLとALTECでは全くと言っていいほど音楽の描き出し方が異なるからです。

特に低域…JBLの”持続する低音”に対してALTECのそれは軽やかでハイスピード…敢えて言うならJBL派は”ALTECは低音が足らない”、ALTEC派は”JBLは肝心な中域が引っ込んで聴こえる”という派閥を形成してきたといってもいいでしょう。それほどまでに異なる二つの個性に対してKさんはどう対峙し、どう折り合いをつけるのか…少なからず気になっていたのです。結果次第ではアンプもSV-2300LMあたりの三極管PPで低域の膨らみを加える方法もあるな…と思いながら先ずはKさん自身の感想を伺おうと考えました。
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これが新たな主役を迎えたKさんのリスニングスペース。家具調のクレシェンドの意匠がお気に入りの様子。
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サランネットを外して現れた604E。新品同様のミントコンディションです。
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クレシェンドを支える脇役たち。プリはユニゾン・リサーチのMistero。横置きのランドセル(LM755A仕様)も良い感じ!

早速音を聴かせて頂くと、紛うことなきALTECサウンド!俗にいうALTECのネガティブな側面はリジッドで大型エンクロージャーに入ったクレシェンドには無縁であることを確認し、まずはひと安心です。Kさんも”金管の中高域が今まで以上に前に出てゴキゲンなんですよ!”とご満悦の様子でした。悪いところをほじくり出してアレコレ悩むのでなく、Kさんのように良い所を引き出して評価出来る主を得て、クレシェンドも幸せです。

心なしか以前と聴く音楽自体も変わってきているのがオーディオの面白いところ。知ってか知らずか50年代の王道ジャズが中心になっていて、ALTECらしさが十二分に発揮されています。面白いなと感じたのがMiles Davisの”SO WHAT”(KIND OF BLUE)におけるJimmy Cobb のシンバルが当初604Eの下側に定位していたのですが、高域を僅かに絞った方が定位が適正化されたこと。恐らくネットワークの位相回転に起因するものであろうかと思いますが単純なエネルギー調整だけではないオーディオの奥深さを見た想いです。

短い時間ではありましたが、オーディオ的には一層ヴィンテージ的芳香が増し、極上のジャズ喫茶の特等席に居るような至福のひと時でした。Kさんに”この音が出ちゃうとアナログやってみたくなりません?”と伺うと”いやあ…”と仰りながらも満更ではない感じでしたので、”ジャズ喫茶K”から針音が聴こえる日もそう遠くないことかもしれません。



by audiokaleidoscope | 2015-08-11 18:38 | オーディオ | Comments(0)

(7/1)バド・パウエルの魅力に迫る

皆さん、こんにちは。

昨日はうって変わってビジュアル系ロックバンドのツアーに合流。リードギターKさんのMarshall(ギターアンプ)のチューニングをさせて頂いている関係で、名古屋の本番はいつもお邪魔させて頂いています。Kさんの好みもあって電圧増幅段のゲインが稼げ、かつエッジがクリアで遠鳴り(音飛びが良いこと)のする真空管をセレクトしています。

これはリードギターのソロプレイを際立たせる為に極めて重要なことですが、宿命的に自分の出音を客席で聴くことが出来ないプレーヤーに代わり、毎回一番後ろから出音を確認させているような状況です。前にも書いたことですがライブサウンドは”ラウド(大音量)であるほどクリーンでなければならない”のです。

昨日はレコーディング用のスペシャルセレクト球としてMullard CV4004/ECC83をお持ちしました。上述の通りライブでは”飛びの良さ”が重視されるのに対し、レコーディングでは密度感ち粒立ちの細やかさが非常に重要です。自分の音に極めてシビアなギタリストが勢い活路をNOS(ヴィンテージ)球に求めるのは、家庭用オーディオ機器と全く同じです。一昨日,昨日と続けて深夜まで音楽談義に華咲いた、とても楽しい2日間でした。クラシック,ジャズ,ロック…音楽に垣根はありません。

転じて今日は来月の「ようこそ!オーディオルーム」のネタ決め。色々と考えて”ピアノトリオの祖”バド・パウエル(Bud Powell)をテーマとすることに…。今回のゲストは半年ぶりの”グッド・ベイト”神谷マスターです!昨年の年末ナマ特番をご記憶の方も多いと思いますが、今回も深い薀蓄と楽しい会話をお届け出来れば幸いです。
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マスターに相談して時系列順に12枚のLPをチョイスしました。ピアノ・ジャズのレジェンドが今なお多くの音楽ファンに愛される理由は何か…今回はSV-8800SEを駆使して収録に臨みます。どうぞ放送(前編:7/4土曜日22時~23時,後編:7/18同時間帯)をお楽しみに!
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by audiokaleidoscope | 2015-07-01 17:11 | オーディオ | Comments(0)

(5/17)現代ハイエンドスピーカーを真空管アンプで鳴らす

皆さん、こんばんは。昨日のレゾナンスの出前開放日の楽しい余韻に浸りながら、私は静岡県は伊東温泉に移動し投宿。明けて今日は伊豆の河津温泉郷にあるN邸に伺ってきました。目的はSV-8800SE/KT120仕様の定期健康診断です。

どちらか言うと以前からキット屋のお客さまはヴィンテージ指向の方が多く、高能率のスピーカーを三極管アンプで雰囲気満点の麗しい音で鳴らす…という方が多い訳ですが、SV-8800SEがデビューして約4年…いわゆる現代ハイエンド系スピーカーを球で鳴らしたいという方とのお付き合いが急激に増えました。

例えばBowers & Wilkins(B&W),例えばSonus Faber,例えばDALI,例えばKEFなど…一般的には大出力の半導体アンプで鳴らす方が大多数であろうこれらのスピーカーから量感と潤いを引き出そうとする音楽ファンからのオファがこのアンプの登場とともに私どもの新たな潮流となりつつあるのです。

Nさんもそんな一人。Focal(仏)のScala Utopiaのユーザーです。
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Scala Utopiaは公称インピーダンス:8オームですが実際は約3オームという、決して真空管アンプにとって与し易いスピーカーとは言えません。数値上のダンピングファクターとは異なる「真のドライブ力」がアンプに問われるからです。その意味ではSV-8800SEシリーズでもKT120は一つの選択肢として極めて有効かもしれません。

そういえばつい先日もDD67000を半導体からSV-8800SEのバイアンプドライブに替えて”餅のような粘りが出た”と喜んで下さったお客さまも…絶命危惧種と思われている真空管アンプにもこんな活路が残されているという訳です。

偶々私がお邪魔した時もイギリスの半導体アンプで鳴らされていたのですが、”どうも細身でギスギスした音になって聴き疲れがするんです…”と仰っていたので早速8800SEのバイアスとDCバランスの再調整を行いました。一次(AC)側が104V近く出ていたのでアンプ側のバイアスもやや絞り気味に。皆さんも固定バイアスアンプをお使いでしたら半年に一度程度はバイアスチェックをお奨めします。

一つ申し上げておきますと基本的にメーカー指示のバイアス調整電圧は”最大値”と考えて下さい。言い換えれば季節,時間帯によって一次側が変動するのに引っ張られて二次(アンプ)側の電圧も常時変動しますから、バイアス電圧の指示値は「いかなる状態においてもこれを超えない値」と考えていただくと良いと思います。

その後、15分ほどエージングして値が安定したのを見計らってからアンプを8800SEに繋ぎ替えて…パッとピアノの音が立ち上がった瞬間、Nさんが「…ああ良い音だなあ」と呟かれたを伺えたのがとても嬉しく、改めてアンプの下方リニア,上方リニアとスピーカーのマッチングの重要性を確認した次第です。

今日は素晴らしい伊豆の景観と美しい音を聴かせて頂いて、とてもリッチな気分の一日になりました!





by audiokaleidoscope | 2015-05-17 23:53 | オーディオ | Comments(3)

(4/10_2)SV-8800SE/SV-128B(KT150スペシャルバージョン) 登場です!

皆さん、こんにちは!今日2回目のアップです。

既にお気づきの方もいらっしゃると思いますが、このたびSV-8800SE,SV-128B両モデルに「KT150スペシャルバージョン」が登場しました。

元々は次号「管球王国」の企画でKT150の特集をやるということで、私どもに「KT150が載せられるアンプは無いですか?」という問い合わせがあり、8800SEと128Bがあるということはお伝えしていたのですが、音質の評価が不十分でしたので、これを機会に改めて集中試聴を行ったところ、KT120とKT150は電気的には同じベクトル上にあるものの、音質的にはかなり異なることを再確認しました。

ひとことで言えば輝かしく締まったKT120に対してKT150は中低域の量感に特徴があり、少しゆったりした鳴り方をする球であることが分かってきたのです。実はKT150が出始めた昨年、SV-8800SEでKT150をチェックした時には、若干緩めの音で解像度が低いという印象を持っていたので、その際はKT150導入は見送っていたのですが、今回色々と弄っているうち、KT150のバイアス調整を低め(プレート電流を抑えめ)にすることで、全く違った側面を発見することが出来ました。具体的にはSV-128Bでは0.6V(Ip=60mA),SV-8800SEでは1V程度が最も良好な音質になると感じています。もし既に両機をお持ちの方で今後KT150を試そうと思っていらっしゃる方は上記を参考になさって下さい。これでもKT120同等の出力が得られます。

これなら!ということで管球王国さんでレビューをお願いすると同時に、連動企画で製品化を決定したのが今回のスペシャルモデルがデビューする大きな原動力になりました。

管球王国のPRページでは
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というコメントを付記しています。またKT150ならではのビジュアルも見ていただきたいと思い、ひと足早くアップしておきますね!
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SV-8800SE/KT150 special

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SV-128B/KT150 special

実機試聴も大歓迎ですので、お時間ある方は是非試聴にいらっしゃって下さい。お待ちしております!



by audiokaleidoscope | 2015-04-10 14:48 | オーディオ | Comments(0)

40年ぶりのアナログ

皆さん、おはようございます。

昨夜ちょっとTさんのお宅に伺ってきました。
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記憶ではTさんに初めて会ったのはちょうど3年前。写真のB&W802を車に積み込んで試聴にいらっしゃったのが最初だったと思います。確かSV-17K(オール手配線6V6シングル)がキット初で次は802に最適なアンプを・・・というテーマで色々と議論したのですが、結果的にSV-8800SEに決定。二作目にしてあの難敵を完璧なワイヤリングで仕上げられたことが非常に印象に残っています。よくここまで作られましたね・・・と申し上げると「焦らず慌てず一日一工程と決めて三ヶ月もかけて作ったからですよ」と伺い納得・・・というのが12年の3月頃だったでしょうか。

あれから出力管をGE 6550Aにグレードアップされ、昨日はこのシステムで初のアナログ再生ということで、その瞬間に立ち会わせて頂きました。40年前、Tさんが学生だった頃に求められたというターンテーブル,カートリッジ,そしてLP.果たしてちゃんと鳴るんだろうか・・・という心配をされるTさんと一緒に接続,セットアップの確認を行います。ここまではOK。

LPに最初に針を下す緊張の瞬間にこれまで何度となく立ち会ってきました。ちゃんと鳴った時の素晴らしい笑顔が見たくてお邪魔しているようなものですが、ターンテーブルも安定しているし、カートリッジもピンピンで極めてクリアで見通しの良いサウンドが現れました。曲はサーカスの「ミスターサマータイム」だった(かな?)。

奥さまも懐かしそうに音を聴かれています。「こんなに良い音だったんだ、このLP」とつぶやくTさんを見ていて、きっと40年前の自分と自分の想い出が今ここで鳴ってるんだろうな・・・と思ってグッと胸に迫るものがありました。TさんのLPを聴かせていただきながら、ふと12/27の「ようこそ!オーディオルーム」2時間特番は”懐かしの歌謡曲スペシャル”もいいな・・・なんて何となく思いつきました。紅白も近いことですし、白組(男性),紅組(女性)半々で交互に掛けてもいいかな・・・なんて(笑)。

そんな訳で昨日はTさんの晴れ晴れした良い顔を見せていただいて、非常に嬉しかった・・・というお話でした。

※写真はTさんの許諾のもと掲載しています



by audiokaleidoscope | 2014-12-10 05:07 | オーディオ | Comments(0)

KT88 vs KT120

皆さん、こんばんは。今日は試聴デー。ALTEC A5とJBL4320をメインで使っておられるWさんがお友達を伴ってショールームへいらっしゃいました。

現在はチャンデバを使ったマルチアンプドライブで低域はJBL/UREIの半導体アンプ,高域は300Bシングルの組合せということでしたが、低域の量感はあるものの音階感がいまでひとつ不明瞭で音が締まらないことがご不満とのこと。事前の電話でSV-8800SEのKT120仕様を聴いてみたいということでしたので、KT88仕様の音と参考としてKT150の音も聴いていただくことにしました。

SV-8800SEもリリースから間もなく3年。いまや押しも押されもしない私どもの多極管PPの横綱として多くの皆さんに使って頂いていますが、実際どの程度の方が球の差換えを楽しんでおられるかまでは把握していません。今日の記事がSV-8800SEの球の差換えガイドになれば幸いです。

まず球の差換え(アップグレード)については最大プレート電圧,最大プレート電流に目が行ってヒーター電流まで確認せずに安易に行ってしまうケースがあることに注意喚起をしたいと思います。KT88は1.6A,KT120,KT150は公称2Aで後者の方が20%もヒーター電流が大きいことが分かります。仮に皆さんのアンプがKT88専用設計である場合はヒーター電流がオーバーする可能性があり、最悪の場合は電源トランスを焼いてしまう可能性があることを覚えておいてください。上位互換球だから必ずしも差換え可能という訳ではないということです。

またSV-8800SEは固定バイアスで適正プレート電流を調整出来るからこそKT120などに差換えが出来る訳ですが、バイアス回路によってはプレート電流が最適値に絞り込めないケースがありますので、注意が必要です。従って今日の記事はあくまでSV-8800SEでの実験としては有効であるものの、全てのKT88アンプに対しての普遍性はないことも理解頂きたいと思います。

加えて申し上げれば、上位互換球を使用するとついプレート電流を多めに流したくなるのが人情ですが、電源トランスのB電流にも限界点がありますので、いかなる場合においても電流値は一定であることが基本となります。SV-8800SEの場合はバイアス調整電圧1.35Vと規定されていますので、これを越えてはいけません。

少々厄介なのは一次側(AC100V)は季節,時間帯によって電圧が変化しますし環境によっても平均電圧が異なります。概ね101V~102V程度が標準的な値ですが稀に105Vを越える場合もあるようです。一次側電圧が高振れすれば当然二次側(アンプ内部)も巻線比分上がることは自明で、あるタイミングで適正バイアスに調整しても時間が経ったり季節が変わるとかなりオーバーしてしまっていることもあります。基本的には一次側が変動してもバイアス電圧が規定値を越えないことが重要となります。

Wさんとの試聴に話を戻します。SV-8800SEの基本的な音調としては極めてスケール感の大きな厚みを感じさせる表現で、一般的な多極管PPの音よりウォームでシルキーな質感が特徴です。これは出力トランスの特殊な巻線仕様に因るところが大きい訳ですが、いわゆる多極管サウンドとは異なる音の粒立ちの繊細さと極めてトルクフルなパワー感が共存しているところが特徴です。

まずKT88で聴いていただき、基本的なポテンシャルを確認戴いたあと、更にWさんの目指す低域のエッジをしっかり出そうという目的でKT120に差換えを行いました。

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KT120仕様

KT88よりも2まわり大きいKT120では最大出力的にもチャンネルあたり10W程度アップします。主にジャズファンの方がKT120を好まれる傾向が強く、KT88以上にシャープネスが上がり、明確に音の輪郭が現れます。KT88以上に多極管らしい音に変化すると申し上げると分かりやすいでしょうか。

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KT150仕様(参考)

Wさんの場合はKT120の方が明らかにお好みでした。シルキーで量感のある低域の空気感が一層制動される感じで、かなりソリッドで近い音に変化します。MJQのヴィブラフォンのアタックが一層クリアに決まり、ウッドベースのゴリゴリした質感が出てきます。一方チェロの胴鳴りのリアルさ、音が膨張する感覚のリアリティではKT88の方がよりニュアンス豊かという感覚もあり、このあたりは聴くソースによって大きく好みが分かれるところかもしれません。

KT150については私どもでは標準設定としていません。あくまで参考として音を聴いて頂いた訳ですが、高域の子音(サシスセソ)がかなりはっきり聴こえるようになり、低域もボリューム感がかなりアップしますがKT120のような締り感はそれほどありません。プレート損失70Wという巨漢ですが、この球クラスになるとコンパチビリティを意識せずに専用設計,専用ヴォイシングを行って音質的な最適化を図る方が良い結果が出るように思いました。

ここ10年くらいの流れでコンパチブル(球の差換えを最初から想定している)アンプが台頭し、恐らく今後もこの流れは続くものと思います。SV-2300LMでも2A3と300Bで現れる音の景色が大きく違う事を既に多くの方が体験されていますし、次回作JB-320LMでも同様の楽しさを多くの方が味わうに違いありません。SV-8800SEもKT88/KT120コンパチアンプとしてより多くの方に球の差換えの面白さを知って頂きたいと思います。1台のアンプで2通り(以上)の音が体験できる・・・これぞまさに真空管アンプならではの楽しさです。


by audiokaleidoscope | 2014-10-20 03:00 | オーディオ | Comments(0)

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