タグ:SV-192PRO ( 9 ) タグの人気記事

(3/9)或る極致

昨日に引き続きTL3 3.0。急遽ライターS氏が大阪行きのところ途中下車して参戦してくれることになって一緒にあれこれやってます(笑)。これから縷々書くとしてS氏曰く"CD再生における或る極致かもね"と言った言葉が印象的でした。私は逆に"これがCDの音という事を忘れる意味においての或る極致"と感じています。それほど自然で滑らかな音。
b0350085_00312576.jpg
場所は第二。今日のプリはSV-722(C22)。パワーはS氏のリクエストでLM91A。D/Aは定番SV-192PROです。今日の目的は

1.TL3 3.0の内部アップサンプリング効果検証
2.MC-3+USB(マスタークロック)によるクロック同期効果の検証
3.クロック同期とRe-Clock(クロック洗浄)の効果比較

というもので、かなり集中力を要し正直かなり消耗している部分もありますが、簡潔に要点をレポートしたいと思います。因みにTL3 3.0のスタビライザーは標準品でなく7cmの従来品を使ってテストしています。

1.TL3 3.0の内部アップサンプリング効果検証

まずはTL3 3.0単独の状態で、内部アップサンプリング効果を検証してみることにしました。メーカーHPにはサラッと「CDの常識だった44.1kHzを、選択により88.2kHzまたは176.4kHzへアップサンプリングして出力します。高いサンプリング周波数に特有の緻密さや滑らかさが更に加わります」とだけ書かれていますがトランスポートの内部でアップサンプルするという発想は比較的新しいもので、最近ではSWD-CT10の大ヒットが記憶に新しいところです。TL3 3.0ではCDの基本クロックである44.1kの逓倍(整数倍)周波数である88.2k/176.4kのみを出力しているところに音への拘りを感じます。

製品情報では公開されていない(と思いますが)、このアップサンプリングに使用されているチップはTI社SRC4382。SV-192PROに採用されているSRC4792より僅かにスペックは劣りますが各種製品で採用されてきた実績のあるチップです。
b0350085_00313855.jpg
検証時のSV-192PROのアサインはClock Source=Bypass(入力クロックをそのまま受ける設定)としてCD再生中にTL3 3.0のUPSAMPLEボタンを押しながら44.1k→88.2k→176.4k→44.1k…を繰り返しつつ音質変化を聴いていきます。ひと昔前のSRCはレートを上げると上は伸びるが音が痩せる傾向があったのですが、SV-192PROに接続する限り、そのような傾向は皆無で聴感的にはレートが上がるごとにデジタル的なハードエッジな感覚が後退し繊細さ、滑らかさが増す印象。DAC側に88.2k/176.4kを受ける能力があるなら是非お試し頂きたい有用な機能といえます。

2.MC-3+USB(マスタークロック)によるクロック同期効果の検証

次のステップとしてマスタークロックを追加してTL3 3.0とSV-192PROのクロックを同期してみましょう。ここで飛躍的な音質改善が現れました。
b0350085_00315372.jpg
b0350085_00315615.jpg
SV-192PROのアサインはClock Source=External,マスタークロック(MC-3+USB)側はMode=Internal,Clock Out=44.1k,Clock Multipliers=×1(44.1k)→TL3 3.0,×4(176.4k)→SV-192PROとなります。この状態はTL3 3.0,SV-192PROそれぞれの内部生成クロックのppmレベルの誤差によって生ずる時間軸の揺らぎが一台の、それも極めて高精度なマスタークロックに同期されることで全く無くなり、極めてクリアで曇りのない澄み切った音場が現れることを意味します。

まだハイレゾという言葉すら定着していなかった2008年、SV-192S(当時)の内部アップサンプリング効果は大きな衝撃を市場に与えた訳ですが、同時にクロックの音に与える影響の大きさもSV-192Sが広く伝えることとなりました。それまで殆どスタジオでしか使われることのなかったマスタークロックが家庭に入る大きなきっかけを作った製品と自負している訳ですが、一般のデジタル機器が持つと言われる20ppm~50ppmのクロック誤差がMC-3+USBによって0.1ppm(公称値)に改善され且つ同期された音は私どもが家庭で聴くCDの音質の概念を全く越えるもので、これにはS氏も"すごい!!"と目を丸くしていました。複数のマイクの僅かな位相差までも聴こえてくるような精緻極まりない世界です。

3.クロック同期とRe-Clock(クロック洗浄)の効果比較

最後に試したのがMC-3+USB独自の機能であるRe-Clockです(Re-Clockについてはこちらを参照ください)。リクロック=極めて正確なクロックをMC-3+USBの内部で生成しDACへ供給するという離れワザをMUTEC社が実用化した訳ですが、特にPCオーディオ(USB入力)には絶大な音質改善が見られることで世界的にヒットしているだけでなく今後のスタンダードを形成しつつあるリクロック…これがTL3 3.0でどうなるか試してみたという訳です。
b0350085_00315978.jpg
上記2とは接続自体が大きく異なります。2ではクロックのみを外部から供給していた訳ですが、リクロックモードではTL3 3.0のデジタル出力(AES/RBU)をMC-3+USBにダイレクトに入力します。上の写真でClock Multipliersが全て×1にアサインされているのはTL3 3.0を176.4kに上げているからです。少し細かい話になりますが、このモードではMC-3+USB→TL3 3.0のクロック同期はDEFEAT(無効化)されていますがSV-192PROへの176.4kの同期は生きている状態となります。

興味深いのはこのリクロック+同期モードの状態の方が上記2よりも音が滑らかなこと。よりアナログ的な質感が表出し、音のグラデーションが増し抑揚感が加わるイメージです。2のハイディフィニッション&クリアネスの世界も捨てがたいオーディオ的快感に満ちていますが、S氏も私もTL3 3.0のダブルベルトドライブ+SV-192PROの真空管バッファ付きD/Aという個性を最も美しく描き出すのは、このリクロックモードであろうという結論に達した次第です。

冒頭に書いた"CD再生における或る極致"、そして"CDの音という事を忘れる意味においての或る極致"の両方を体験できたひと時でした。気がつけば27時。S氏は予約したホテル代が無駄になったと横で笑っています。



by audiokaleidoscope | 2017-03-10 03:02 | オーディオ | Comments(0)

(5/7)PSVANE WE274Bの音や如何に!!

今日は朝早く家を出て関西へ。目的地は再びKさんのリスニングルームです。
b0350085_16194242.jpg
今回お邪魔した目的は球の交換による音の変化の確認のお手伝いでした。LM91A(PSVANE 300B仕様)をお使いのKさんですが、現在の整流管philips ECG 5R4GAからPSVANE WE274Bに替えてどうなるか…からスタート。
b0350085_19372460.jpg
これがPSVANE 274Bです。PSVANE WE300B同様、製造方法も使用部材も従来の中国球と同列に語れないスペシャルチューブ。従来の中国製274BがST17ケースに入っていたのを本家ウエスタンに倣い、ひと回り小振りのST16ケースに入れただけでなく、フィラメントの吊り構造,プレートの表面処理など限りなくオリジナルに近づけた現行球きっての274Bといえるでしょう。外見だけ真似たもの…という穿った見方も一部にあるようですが、前回の”大放談”収録においてPSVANE WE300Bのズ抜けたパフォーマンスを改めて確認しましたので個人的にも整流管の出来はどうか?という点に私も大変興味を持ちました。

一部の中国整流管で見られる突入電流発生時にスパークし易い側面が改善されているかどうかを確認するために、敢えてアンプ側でコンデンサーインプット容量を上げた過酷な耐久テストを実施したところ、危惧された管内放電もなく整流出力電圧も安定していることを確認したので自信を持って今日お持ちした次第です。私どもではPSVANE WEシリーズはこれまで客注扱いだったのですが、近日中に定番に昇格する予定ですのでお楽しみなさって下さい。SV-91B等ハイクラスモデルではPSVANE WE仕様も登場することになるでしょう。

早速試聴を始めます。先ずは元々のPSVANE WE300B-Philips ECG 5R4GA仕様で聴いてみます。この5R4は80年代後半のNOS最後期の整流管ですが、価格の妥当さ、そして堅牢度の点から導入しています。274Bとの互換性に関して申し上げると、ヒーター定格において274B=5V/2A,5R4=5V/3Aですので、5R4使用アンプで274Bに交換するのは基本的にOKですが逆の場合は電源トランスの仕様確認が必要です。私どもの場合LM91A,LM86B,SV-91B,SV-310,SV-310EQは全て整流管ヒーター巻線が5V/3Aで作ってあるので、いずれも使用可能という訳です。

整流管は今で言えばダイオード。つまり電源部の整流用の真空管ですが、これで音が変わるのか?…と訊かれればモチロン!とお答えします。管種が異なれば勿論、同じ管種でもブランド(製造工場)によってレギュレーションが異なり、整流出力電圧が変化するからです。整流出力電圧は全ての真空管のエネルギーの源ですので、ここが変化すれば音が変わるのは或る意味当然という訳です。

5R4GAは或る意味”野太い”とでも表現すべきしっかりした音像を際立たせる音で音楽ジャンルを問わず楽しめる懐の深さと手軽にヴィンテージ的音色を楽しめるところが魅力です。この音を基準としてPSVANE WE274Bに挿し替えるとどうなるか…真空管アンプファンならば誰しもが興味を持つところですね。
b0350085_16203054.jpg
これがPSVANE WE300B/PSVANE WE274B仕様のLM91Aです。1940年代のアンプのイメージにはやはりST管がよく似合います。音はどうかというと5R4と較べて音像がスレンダーに変化。高域が伸び明るさが出ます。本家ウエスタン274Bが力感よりも繊細感だったりニュアンスだったりをよく出す整流管であることは好事家の間では知られたことですが、PSVANE WE274Bもまさにその特徴を引き継いでいます。弦の高域の冴え冴えとした美しさと音場感は格別です。
b0350085_16203964.jpg
これに気を良くしたKさん。次なるご所望はPrime 300B ver.4。上述の大放談収録時のネタバレになりますが300B編ではTさんも私もNo.1がPSVANE,No.2がこのver.4だったのです。ではPSVANEとPrimeの差異は何かというと倍音の集中する帯域の違い。PSVANE/WEと較べPrime/ver.4は中域~中低域の圧倒的な厚み,豊かなヴォリューム感が最大の特徴と言えると思います。300Bという出力管がなぜ不動の四番打者としてずっと人気トップを維持しているのか…その理由が芳醇で滑らか、そして豊かな倍音感に尽きると思うのですが、まさにこのver.4は最も300Bらしい300Bと言えるかもしれません。
b0350085_16204805.jpg
続いて参考出品の本家ウエスタン300B(デートコード0613)が登場します。これはプラセボでも何でもなく或る意味で禁断の音。力感と繊細感、音像と音場の黄金比ともいえる絶妙なバランスのうえに音楽がたゆたう感じ。敢えて言えばPSVANE WE300Bはこれに輝きを加え僅かにスレンダーな傾向の音。Prime 300B ver.4は厚みとリッチさを足した音と言えるかもしれません。今思うとこの両者に対してPrime 300B ver.5はどう鳴るのか試せば良かった!続きは次回のショールーム開放日にでもやりましょう!

続いてデジタル系も色々と弄ってみます。KさんはPC→NAS→LINNのネットワークプレーヤーを経由して増幅系に繋がるシステムを構築されている訳ですが、ネットワークプレーヤーの同軸D出力からSV-192PROに接続。且つMC-3+でクロック精度を上げて音質比較をしてみました。LINNのネットワークプレーヤーは或る意味で非常に端正で清冽な音。前回お邪魔した際に、”この音で少し艶っぽさが出れば言う事はないのですが…”と仰っていたのを覚えていたので少し裏ワザ的な使いこなし方法を伝授しました。

b0350085_16215158.jpg
SV-192PROの出力は固定(LINE)と可変(MONITOR) の両方が装備されています。192PROの後続機器としてプリがある場合はLINE出力,デジタル入力専用のプリアンプとして使う場合はMONITOR出力として使うのが基本的な姿なのですが…
b0350085_16215521.jpg
VUメーターの右下がMONITOR LEVEL。平たく言えばヴォリュームです。よ~く見ると時計の2時辺りに”Unity"というポイントがあるのが分かるでしょうか。ちょうどこの位置がLINE LEVEL相当…つまり固定(LINE)出力と同じゲインになりますよ、というポイントなのですが、ここから上…つまり更にレベルを上げることでゲインと共に更に”球のアジ”をプラスする効果があるのです。これはSV-192S時代から多くの方が指摘され、積極的に”チューブエンハンサー”的使い方をされていらっしゃいますので、Kさんの音を更にリッチにするためにはこの”隠し味”を使わない手はありません。勢い音に実体感が出てKさんも”良いですねえ!”と納得のご様子でした。

実はこれが一番効いたのはCD再生時でした。Kさんがお使いのエソテリック高級トランスポートは極めて明確でソリッドな音が魅力な訳ですが、これにSV-192PRO(VOLフルテンモード)を接続すると、断然温度感があがりフワッと倍音が乗って優雅ともいうべき世界観が出来(しゅったい)します。CECのベルトトランスポートを常用する私にとってエソテリックの音は少々厳格だなあ、という印象を持っていたのですが、今日の音を聴いて考えをすっかり改めました。極めて情報量の多いエソテリックの強みにSV-192PROの芳醇さが加わって素晴らしいバランスで鳴っていたと思います。Kさんも”CDもまだまだこれから!という感じですね”とご満悦の様子でした。

最後にKさんとお話していたのは「オーディオって趣味は”これでいいや、と思ったらお終い…人間が一層の高みを目指して勉学や仕事に励むように、オーディオも自分自身同様高めていきたいですね」ということ。キリがないといえばそれまでですが、出来る範囲で少しでも良い音を目指したいものです。だからこそオーディオは一生出来る素晴らしい趣味の王様…私にもまだまだやることが沢山あります。



by audiokaleidoscope | 2016-05-07 22:22 | オーディオ | Comments(3)

(4/7_2)いまCDを一番良い音で聴くための幾つかの選択

収録2本目は久々のデジタルコンテンツ。ハイレゾという新しい文化が特殊なものではなくなった現在でも、私たちが一番所有し、これからも最も数多く流通していくに違いないCDというフォーマットに改めて注目し、今こそCDを一番良い音で聴く方法を一緒に考えてみようじゃないか、という企画です。

オーディオは一般に”出口ほど音が変わる”と言われます。オーディオの主役はスピーカーで、これを車のシャーシに例えれば、パワーアンプはエンジン,プリアンプはトランスミッション…という風にチューニングが進められて一つのパッケージとしてのオーディオシステムが完成される訳ですが、例外的にLP再生におけるカートリッジの選択がシステム全体の成否を分けるように、デジタル再生においてはD/Aコンバーターに何を選び、どう使うかが極めて大きな分岐点となります。

今回はスタジオ常設、SV-192PROを使ってCD高音質化の3つのアプローチについて実際OAで音の違いをリアルタイムに体験していただくことにしました。曲の再生中にアサインを変えて音の違いを確認するなんて、今まで誰がやったでしょうか。今まで何度となく比較試聴をやってきた私も少々緊張が走る収録となりました。
b0350085_06481697.jpg
まずはCDスルー(バイパス)と192kHz/24bitのアップサンプル時の音質比較です。今回のリファレンスソースは高音質で知られる”MA recordings"(間レーベル)サンプラーCDをリファレンスに使用しました。まずバイパスでトラック1を再生…再生中もマイクを生かしていただいた状態で曲間で”アップサンプリングします”、”バイパスに戻します”を何回か繰り返します。

この差はSV-192SあるいはSV-192PROをお持ちの方は日々その違いを聴いておられる訳ですが、スタジオのモニターでも明らかな音の違いを確認できました。いや音が変わるというのは正確ではないかもしれません。エアが変化するいうのか、音の拡がる空間の大きさが格段に変化するというか、いわゆる奥行感の再現において誰もがアップサンプル後の再生音の方がオーディオ的に優位であることを理解頂けると思います。これはヘッドフォンでなく、是非スピーカーでチェック頂ければ幸いです。情報量が増えて音量が1dBくらい上がって聴こえるほどの差異をご確認いただけるでしょう。勿論電気的なレベルに変化はありません。
b0350085_06482310.jpg
続いてはマスタークロックジェネレーターが登場します。マスタークロックというとその時点で意味不明と言われそうですが、要はデジタル機器内部で時間軸を制御している水晶発振子には一般に10ppm~数十ppmのゆらぎを持っています。SV-192PROでは数ppm以下の選別水晶を採用していますので、一般のデジタル機器より遥かに有利な訳ですが、今回持ってきたマスタークロックMC-3+(MUTEC)は公称精度0.1ppm以下ですので、この差を大きいと見るかどうかはシステムのトータルレベル如何に掛かってくる筈。カメラに例えると僅かにずれていたフォーカスが完全に決まった時の快感と言いますか、微かな音の曇りや滲みが除去されて一層クリアになる効果はシステムレベルの向上と共に無視出来ないファクターになる筈です。Tさんはスタジオのプレイバックを聴かれて”柔らかくなった”と仰いました。いわゆるデジタル臭さ(尖鋭感)が低減された結果といえるかもしれません。

余談ですがマスタークロックを使う場合のノウハウとしてソースの周波数の整数倍クロックにアサインすることが重要です。MC-3+を使う場合、CDであれば44.1kHzの4倍である176.4kHz。48kHz系の音源(例えばハイレゾ)では192kHzを選ぶことによって最良の結果が得られます。
b0350085_06482803.jpg
そして最後の音質向上策はバッファ段の真空管の交換。元々SV-192PROは完成品でご提供しているものですし、搭載されているECC82/12AU7はノイズ,ゲイン選別された球を使っていますので、中途半端な球であれば替えない方が良いとも言えますが、今回は珠玉のCV4003で聴いて頂くことにしました。

Tさんが選んだのはアリス=紗良・オットのピアノ,私は諏訪内晶子のヴァイオリンで総仕上げの音、つまりマスタークロックあり、アップサンプリングあり、CV4003仕様で聴く極上の音はいわゆるCDの音のキメを整え、音のヘッドルームを上げ、更に奥行き,拡がりを改善した一つの終着点ではなかったかと思います。

デジタルオーディオにおける危うさは音質でなく量子化レート競争が主体になっていること。現在の主流は192kHz/24bitですがR&Dレベルでは768kHz/32bit,11.2MHz/1bitに対応したチップも出始めています。この収録の最後に参考試聴として
CD音源を768kHz/32bit,11.2MHz/1bitまでアップサンプリングした音を聴いて頂きます。では音はどうなんだろう…これは聴いていただく皆さんの判断に委ねたいと思いますが、理論値よりも音楽性の方が遥かに重要であることを開発側の私どもは決して忘れてはいけないということを最後に改めて確認できた収録でした。

オーディオは決して特性だけで語れない…それが今回の結論であったかもしれません。OAは6/10(金)20時~です。是非お聴きください!


by audiokaleidoscope | 2016-04-09 05:23 | オーディオ | Comments(0)

(3/10)SV-192S/PROのMullard CV4003化

今日はFさんとKさんが第二へ寄って下さいました。
b0350085_18470836.jpg
今日の第二はちょっと気高く…SV-192PRO-SV-300LB-VP2500SEという組み合わせ。
b0350085_18470487.jpg
SV-192Sもまだまだ現役です!DSDオプションは2.8M対応ながら、この美音は他の1bit DACでは聴けないと仰って下さる方が多いのは本当に有難い事。先日Fさんが2台所有されているSV-192Sのうち1台の12AU7/ECC82をMullard CV4003にグレードアップされたところ、その音の変化に驚愕され、今日はもう1台もCV4003仕様にされる為に第二にお越しになられたという訳です。

192シリーズの12AU7をCV4003に替えると非常に効果的という情報は2008年暮れごろからずっと言われ続けている話でありましたが、元々SV-192Sが完成品オンリーという形態ゆえ、保証絡みの問題から私どもとしては正直触れ難い内容であったのは事実です。ただここまでポピュラーになったことですし、Fさんのように”そろそろ新しいDACを…という気持ちもありましたがCV4003に替えた音を聴いて、もう7~8年はこれでいいや!って気持ちになりましたね”という方も多いので、情報として改めてお知らせする次第です。

一緒に来られたKさんはフランコ・セルブリンのスピーカーをお使いなのですが、最近SV-128Bの出力管をKT150に替えたところ、俄かにスピーカーが歌うようになったと仰っていました。真空管のアップグレードによる高音質化というのは旧くて新しいテーマですが、案外知らずにずっと使ってる…という方も多いと思います。もちろん交換して良い球,ダメな球がありますし、電気的ルールを無視して決して好結果は得られませんので、しっかりと互換性を確認して楽しんで頂きたいと思います。

CV4003は世界的に在庫が枯渇に向かっているようで、最近はオーディオ用途だけでなく、オールドギターアンプやヴィンテージスタジオ機器用にCV4003を求められる新規のお客様も随分増えてきました。私どもでは値段は以前のままですが、相場も上がってきているようですので、欲しいと思っておいでの方は早めのゲットがお奨めです!



by audiokaleidoscope | 2016-03-11 06:02 | オーディオ | Comments(0)

(8/11)ジャズ喫茶"K”

皆さん、こんにちは。昨日,今日と平日ということもあってかなり電話が入ってきます。今日も家を出て高速に乗る寸前にスクランブル出動を要する内容の電話を頂いたので意を決し、同乗者に事情を説明して踵(きびす)を返し会社へ帰還しました。モヤモヤしながら出かけても楽しくないので、これで良かったと納得。

今日のネタは昨日のKさん宅でのひと時のことを書いておきます。Kさんは長くJBL4430を愛用され、リアルな低音再生に情熱を燃やしてきた方。Kさんと話し合ってSV-192PRO+SV-8800SE(KT120仕様)で骨太でありながら密度感高く情報量の高いジャズ再生を共に目指してきました。

そんなKさんから電話でスピーカーをALTECクレシェンド(604E)に替えたと伺って誰よりも驚いた私。同じフロアスピーカーシステムでありながらJBLとALTECでは全くと言っていいほど音楽の描き出し方が異なるからです。

特に低域…JBLの”持続する低音”に対してALTECのそれは軽やかでハイスピード…敢えて言うならJBL派は”ALTECは低音が足らない”、ALTEC派は”JBLは肝心な中域が引っ込んで聴こえる”という派閥を形成してきたといってもいいでしょう。それほどまでに異なる二つの個性に対してKさんはどう対峙し、どう折り合いをつけるのか…少なからず気になっていたのです。結果次第ではアンプもSV-2300LMあたりの三極管PPで低域の膨らみを加える方法もあるな…と思いながら先ずはKさん自身の感想を伺おうと考えました。
b0350085_13134396.jpg
これが新たな主役を迎えたKさんのリスニングスペース。家具調のクレシェンドの意匠がお気に入りの様子。
b0350085_13140205.jpg
サランネットを外して現れた604E。新品同様のミントコンディションです。
b0350085_13141066.jpg
クレシェンドを支える脇役たち。プリはユニゾン・リサーチのMistero。横置きのランドセル(LM755A仕様)も良い感じ!

早速音を聴かせて頂くと、紛うことなきALTECサウンド!俗にいうALTECのネガティブな側面はリジッドで大型エンクロージャーに入ったクレシェンドには無縁であることを確認し、まずはひと安心です。Kさんも”金管の中高域が今まで以上に前に出てゴキゲンなんですよ!”とご満悦の様子でした。悪いところをほじくり出してアレコレ悩むのでなく、Kさんのように良い所を引き出して評価出来る主を得て、クレシェンドも幸せです。

心なしか以前と聴く音楽自体も変わってきているのがオーディオの面白いところ。知ってか知らずか50年代の王道ジャズが中心になっていて、ALTECらしさが十二分に発揮されています。面白いなと感じたのがMiles Davisの”SO WHAT”(KIND OF BLUE)におけるJimmy Cobb のシンバルが当初604Eの下側に定位していたのですが、高域を僅かに絞った方が定位が適正化されたこと。恐らくネットワークの位相回転に起因するものであろうかと思いますが単純なエネルギー調整だけではないオーディオの奥深さを見た想いです。

短い時間ではありましたが、オーディオ的には一層ヴィンテージ的芳香が増し、極上のジャズ喫茶の特等席に居るような至福のひと時でした。Kさんに”この音が出ちゃうとアナログやってみたくなりません?”と伺うと”いやあ…”と仰りながらも満更ではない感じでしたので、”ジャズ喫茶K”から針音が聴こえる日もそう遠くないことかもしれません。



by audiokaleidoscope | 2015-08-11 18:38 | オーディオ | Comments(0)

(7/16)あの日の感動

皆さん、こんばんは。

今日は長野で打合せでした。今後のデジタルオーディオの動向…というと少々大袈裟ですが、これからの市場予測と製品として求められるものは何かというテーマで議論しました。

遡ると2003年~2008年に96k/24bit対応の真空管D/Aコンバーター”model2"をキット化。その後”ハイレゾ”という言葉すら一般的でなかった2008年に192k/24bit再生+アップ/ダウンサンプリング機能という2つのコンテンツによって当社製品のなかで最大のヒットとなったからSV-192Sをリリース。その後SV-192SはDSD(2.8M)対応を実現したのち、現行のSV-192PROへ移行。PCM専用D/Aコンバーターとして最高の音質と機能の両立を目指しました。

果たしてSV-192PROをバージョンアップする必然性はあるのか?・・・市場を俯瞰すればデジタルオーディオの目覚ましい進化によって、今やスペック的にSV-192PROを凌駕するものも少なくなりませんし、どんどん小型化し低価格化している状況ですが、少々手前味噌ながら開発当時最もこだわった”音質”についてはスペック云々に関係なく充分に自信を持っていますし、今後もその存在感をキープしてくれるという自信もあります。

一方で最近は384kHzだ32bitだ11.2Mだ…という嘗て半導体アンプが音質よりもスペックと価格で競い合った時代を彷彿されるような状況になっています。正直根を張る前に次の種を蒔かざるを得ない業界の苦しさも垣間見えます。

加えてこの2~3年、D/Aコンバーター=USB DACと言っても良い状況になってきていてPCオーディオ重視の傾向が益々顕在化しています。これは時代の趨勢ですし私もPCオーディオ,ハイレゾダウンロードを応援する立場の一人ですが、他方CDなど既存のデジタルメディアの高音質化という眼目が少し後退してきている寂しさも禁じ得ません。

今後ストリーミングサービスの台頭によってCDは更に苦戦を強いられることでしょう。しかし皆さんが一番沢山持っているのはCDである訳で、もしSV-192PROの後継機を作るなら皆さんの家に沢山あるCDを驚くような高音質で鳴らせる真空管D/A…それも飛び切りのスペックと妥当性のある価格でご提供したいという想いがあります。

真空管機器こそがデジタルソースに滑らかさと艶、そして適切な倍音感と温度感を与え、アナログ的な質感を最もよく引き出せると思い続けて今年で18年め。私どもらしい、私どもにしか出来ない次期DACの姿が次第に浮かび上がってきつつあります。今後更に協議を重ねていきます。

打合せが終わってから、SV-192Sが立ち上がった頃のことを思い出していました。予約受付当日の日記が残っていますので抜粋して再掲させて頂きます。

2008,11,12, Wednesday
お待たせしました!

・・・ということで皆さん、改めましてこんばんは。最近あまり寝ていないので本当は結構疲れている筈なのに何だか興奮して全然眠くありません。SV-192Sが1時間半で初回発送分完売,4時間で2回目(年内最終)完売、全く予想していなかった予約開始当日中の追加発注です。今こうして日記を書いている間もどんどん注文が入ってきています。(中略)まさか一晩で200台近い注文が上がってくるとは全く予想していませんでしたので私は他の仕事そっちのけで対応に大わらわという状況です。
b0350085_22290557.jpg
2008,11,13, Thursday
来るべき「至福の時」へ

結局モノを売る(買う)ということはその先にある「こんなに楽しいんだよ」というマインドを共有する事なのだと思います。この間、試聴に来られたお客さんだったかメーカーの方だったか、が言っていたのは何十万という高級カメラが今よく売れているんだそうです。きっとこれも同じで「じゃあこのカメラで何を撮ろう!」とか「こで持って次はどこ行こう!」みたいな気持ちを一緒に手に入れているような気がするのです。(中略)今日、192Sを作って頂いているメーカーの社長が「今までこんな事は一度も経験がない」と驚いていました。世界に名だたるメーカのOEMを引き受ける立派な会社が何を・・・とも思いましたが正直嬉しかったです。確かにネットという環境で特定の、それも未発売の新製品が一晩で200台以上の予約というのは通常ではあり得ないことかもしれません。そういう意味では先方が驚愕するのも無理からぬことです。でも私には予約して下さった皆さんの気持ちがわかります。予約したのは来るべき至福の時間なのだということを。


…当時の興奮が甦ってきますね。皆さん同様、私もSV-192Sにとても大きな期待を寄せ、そしてその音に大きな感動を覚えた一人。機種は何であれ自分自身が欲しくて堪らないという製品でなければ作ってはいけない…改めてそう感じた今日でした。




by audiokaleidoscope | 2015-07-17 04:27 | オーディオ | Comments(2)

(5/21)デッサンを描け!

皆さん、こんにちは。今日は試聴室で実験三昧です。

先日ふと思いついた悪巧みですが、実際やってみたらどうなんるんだろう?…とずっと気になっていました。理屈的には何の破綻もありませんが、本当にレベルは整合するのか?肝心な音はどうか?パワーアンプの出力を電圧変換してA/Dコンバーターに送ってPCで記録…なんて今まで誰からも聞いたことがなかったので、内心不安がなかったといえば嘘になります…で試してみました。
b0350085_11443094.jpg
接続はこんな感じです
b0350085_12370135.jpg
こう見ると複雑なように見えますがスピーカーがダミーロードに置き換わって、その出力をSV-192A/Dに送ってPCで記録しているだけ。つまり放送では皆さんのスピーカーがまんまSV-91Bの音を貰っていると考えて頂ければ良い訳です!面白がっていろいろCDやLPの音を早速PCに取り込んでいる訳ですが、これが実に痛快!まさに”タマの音”になっているのです。ライン直の音よりも実体感と厚みが増すだけでなく、倍音感も豊か…これは本番収録が実に楽しみになってきました。
b0350085_11441859.jpg
こんな感じでヘッドフォンでモニターしていますが、懸念されたSNの劣化や音が荒れることもなく快適そのものです。

以前或る人からこんな事を言われたことがあります。”お前は技術屋に出来ないデッサンを描け!それを図面に落とし込むのはプロに任せればいい。真っ直ぐな線を正確に描くことよりも曲線がもつ味のあるモノづくりをするんだよ”…と。

荒唐無稽と言えばそれまで。どこまで遊び心を持てるか…エレキギターの音をLINEで直録りするよりもアンプを通した方が”味のある音”になるのと一緒ですね。これも私なりの一つのデッサンと言えるかもしれません。





by audiokaleidoscope | 2015-05-21 12:57 | オーディオ | Comments(2)

(4/22)あるパーティにて

皆さん、こんばんは。ちょっと今日は詩的に…。
b0350085_22234356.jpg
今夜は或るパーティのBGM担当。150人はゆうに入れる瀟洒なバンケットルーム。天井高は8mはあろうか。

スピーカーはLM755 Classic Floor System。アンプはSV-2300LM(2A3)で恐らく実出力は2.5W~3W程度。ボリュームの位置は試聴室と殆ど変らないのに、実にゆったりと朗々と鳴る。こういうのを「部屋全体が鳴る」感じというのかもしれない。ゾクゾクするほど気持ちいい。

BGM担当ではクラシックを小音量で鳴らすことが多い。今日はクライアントの要望もあってハードバップとジャズヴォーカル中心で、BGMとしては少し音も大きめ。そのせいもあってか、硬めのパーティの割には賑やかで話も弾んでいる。

主催者事務局も「去年よりもお酒も食事も進んでいるみたいですね」と嬉しそう。そのうち少しアルコールが入った人たちが機器の前に集まって来て”私なんか耳が悪いから良さが分からないけどね。でも良いもんですね」という感じで声をかけては去っていく。

…耳が良いからオーディオが好きになる訳じゃないし、耳の感度もきっと大差ない。オーディオが好きな人は耳じゃなくて心の感度が高いんです…そう思いながら次々に選曲していくうち、だんだん自分が高揚してくるのが分かる。まるで自分の出している音と会場の方々の笑い声がシンクロしているようで嬉しい。

沢山の人の耳に入っているこの音がどう届いているのか…それは分からない。でもこの部屋の天井のシーリングスピーカーからいつも出ている音と何が違うか。それは「良い音で鳴れ!」とどれだけ思って鳴らすか…だけかもしれない。

この想いを共有できる人を捜し求めるような気持ちでこの仕事を初めて、気が付いたら17年。今日も一人でも良いから「心で音を感じられる」人との出会いを待っている自分。

明日はMUSIC BIRD収録。マイクに向かう、その想いも真空管アンプを鳴らす時と全く変わらない。求めるのは「心で音楽を楽しめる人」…。




by audiokaleidoscope | 2015-04-22 22:22 | オーディオ | Comments(0)

目先の情報より永続的バリュー

皆さん、おはようございます。イブはいかがお過ごしでしたでしょうか。

私どもでは年内稼動日が明日(26日)までということで、締め業務に追われバタバタしています。「終りよければ全てよし」という言葉通り、なるべく越年の宿題を持たずに新年を迎えたいものです。

今週に入ってから主要取引先さんが年末のご挨拶にお越しになっていろいろなお話を伺う機会が多い訳ですが、「やはり」という事もあれば意外だなあ・・・と思う事も多々あって、今年下半期でかなりオーディオ業界も動きがあったんだ、ということを改めて感じています。必ずしも世の中の表面(例えば新聞誌上や雑誌、TVCMなど)で見えている部分がそのまま内情を示している訳ではない訳で、やはり自分をしっかり持っていないと進むべき道を見誤りかねない事を改めて自身に言い聞かせた次第です。

そういえばMUSIC BIRDも来年4月の改編期を前に素晴らしい取組みを始めつつあることを昨日伺いました。2月~3月には正式に告知されると思いますので、是非お楽しみになさって下さい!オーディオ好きな方にとっての朗報であることは間違いありません。

来年(以降)の私どもの製品計画はほぼロードマップが固まった段階です。具体的仕様などは年明けから詰めるかたちとなります。従来製品の復活(および定番化)と併せて更に厚みのある商品構成になるものと思いますので、ご期待頂ければと思います。

この冬休みは自分の頭を整理しつつ、幾つかのトライが出来ればと考えています。以前にも申し上げましたがLM91Aのキット化は可能なのか、というテーマ。完成品同様の配線仕様をキットで行うのは不可能と思われますので、逆にどうしたら出来るんだろう・・・ということを実機と図面をみながら検討したいと思っています。それと現在欠番となっている845アンプの後継機についても早期に具体化する必要があるでしょう。

また再販売させて頂いて非常に好評なSV-3の追加生産を進める一方で、この価格帯の製品も皆さんに望まれていることを再認識していますので、お値打ちなものからマニアックなものまでラインナップを充実していく必要性を感じています。

デジタルの分野でも来年あたり「次の波」が来るかもしれません。更なるハイレート化あるいは音源のリアルタイム変換など、業界内でも取組みが始まりつつある状況のようですが、私どもでは既存技術をしっかり保持しつつ、情報を集めて目先ではなく3年先,5年先でも通用する機器を開発することが重要と考えています。

b0350085_09134339.jpg
SV-192PRO。5年後,10年後も一線で活躍してくれる筈。

冒頭のお話に戻りますが、目先の情報や足許のトレンドも大切である一方、もっと重要なことは自分たちでしか出来ない何か、自分たちならではの永続的「バリュー」の構築ではないかと思います。ここは焦らずジックリ考えてみます。



by audiokaleidoscope | 2014-12-25 09:03 | オーディオ | Comments(0)

本ブログ掲載内容は私人の見解であり、(株)サンバレー(ザ・キット屋)の立場,戦略,意見を代表するものではありません。


by Ohashi
プロフィールを見る
画像一覧