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(3/31)スタビライザー第3の選択

最近は家に帰ってCDが回ることが多い毎日。
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TL3 3.0からMC-3+USBへはAES/EBUケーブルで伝送(MC-3+USBはリクロックモード)。TL3 3.0側で176.4kにアップサンプリングしリクロックされた信号をSV-192PROに戻す方法です。MC-3+USBからのワードクロック同期はSV-192PROのみ。そのうえでSV-192PROで24bit化してD/Aしています。CDを聴く環境としてこれ以上のものがあるだろうか(必要だろうか)というほどの美しい音...単にハイファイというのではなく、音楽性の高さにおいて私の浅薄な経験上いままでに聴いたことのないCDの音。

そんななか、MUSIC BIRDのパーソナリティ仲間のKさんから"これ試してみたら?"とお借りしたのがこれ
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TL3 3.0を最初に聴いた時のインプレッションはこちらに書きましたが、スタビライザーで音質がこうも変わるか!という点において目に(耳に?)鱗の体験でありました。TL3 3.0標準の大型タイプは重心が下がり締まった音。対して従来のスタビライザーはCEC伝統の解れた響きの良さを聴かせてくれます。その違いを一人でも多くの方に体験した頂くため、TL3 3.0を私どもからお求めいただいたお客さまには新旧2種類のインシュレータをお届けすることにしたこともお伝えした通りです。

そして今回お借りしたこのスタビライザー。外形的には従来型に近く重量も近似しています。別売アクセサリーだけあって仕上げの美しさとサイドのオレンジ色のゴムが印象的です(後にこのゴムも音作りの為の施策であることに気付きます)。

何の情報もなく、スタビライザーをこれに替えて聴いてみると…どういう理屈か分かりませんが、明らかに高域の伸びが増して音色がブリリアントに変化。分かり易く言うとフォーカスが更に上がりハイが抜ける感じです。思わずKさんに凄いですね!とリプライして製品のホームページを確認。

そうすると

CDディスクの振動が音質に影響を与えることを考慮して作り出されました。 CECが発売するベルト・ドライブ方式のCDトランスポーター・プレーヤーにはCDを固定するためのスタビライザー(重し)が付属しています。AIRBOWはこのスタビライザーの振動と音質の関係に注目し、AIRBOW CD-1などにはCECスタビライザーの改良品を付属してきました。今回発売する「STB-1」はそれらの経験を生かし、CECの付属スタビライザーと同等形状(完全コンパチブル)を保持しながら、飛躍的な高音質を実現する製品として作り出したCEC専用・高音質スタビライザーです。

「STB-1」は、オレンジ色の制振ベルトを着脱することで音を変えられます。

ベルトなし:STB-1の持つ美しい響きが生かされるお薦めの使い方です。
ベルトを装着:スタビライザーが制振されることで、響きの少ない精緻な音質になります。

これ以外にも、「上下どちらかだけにリングを装着する」、「付属するリングではなく輪ゴムなどを使って制振する」など様々な方法で音作りをお楽しみいただけます。スタビライザーのCDと接する部分には、制振効果を高めスタビライザーのスリップを防ぐ特殊な制振材を貼り付けています。また、従来品ではこの制振材が剥がれたり、ずれることがあったためスタビライザー本体に小さな凹を作り、そこに制振材をはめ込むことで制振材の剥がれを防止しています。

…という記載が。なるほどこのゴムは制振に寄与しているのか…フムフムと思いながら色々と試しているところです。個人的にはこのスタビライザーの特徴を最も活かすのはベルト有り(ダブル)であると感じていますが、これからも色々と試してみようと思っています。もうここまで来たら肉を喰らわば骨までではありませんが、このセットアップで禁断のガラスCDも試してみたくなってきました。



ところでCEC製品に関して何人かのお客さまからお問合せをいただいております。CECは事業を停止しているがアフターサービスは大丈夫なのか?バッタものを買い叩いて高く売り抜けようとしているのではないか…という悪意が潜在する内容のものもありました。当然のことながらそのような意図があろう筈がありません。

CECという会社が操業を停止して既に5年ほどになるかと思います。では何故その間に新製品がリリースされたり修理等のアフターサービスが粛々と行われ続けてきたかといえば、関連会社エステックに開発,販売,アフターサービスの事業全般が移管され実態としては何ら変わりないからです。私どもは今後ともエステックと協業し歴史あるCECブランドの継続,発展に引続き尽力して参りますので、どうぞご安心頂ければと思います。

最後に過日エステックから私どもに届いたメッセージを発信者の了承のこと転載させて頂きます。現在ピュアオーディオ業界は皆たいへんです。そんな中にあって良い音楽を良い音で聴きたい人は絶対に居るはずだ!という強い信念をもって今日も頑張っている仲間が沢山いることを改めてここにご報告したいと思います。

平素よりCEC製品をご愛顧賜り誠にありがとうございます。
有限会社エステックは、委託工場としてCEC製品の生産に携わった永年の経験と実績が評価され、周知のとおり数年前より修理・アフターサービス、そして国内販売をも担当しております。
さらに、設計ノウハウを受け継ぐ技術部門を有するに至り、従前と何ら変わらぬ品質の製品を提供できる体制が整い、今後も継続して行く所存でございます。つきましては、新製品におきましても従来製品と同様に、ご安心の上ご愛顧頂けましたら幸いでございます。

がんばれ!CEC!!



by audiokaleidoscope | 2017-03-31 15:36 | オーディオ | Comments(2)

(3/23_2)現行ビーム管総まくり+お宝WE300B大集合!

二本目の収録は5/12(再放送5/19)OA分の録り。この回のテーマは「現行ビーム管総まくり+お宝WE300B大集合!」。現在製造されている中国,ロシア製のビーム管(6L6系,KT88系真空管)を総まくりしてしまおうという企画です。比較的お求め易い価格で楽しめるビーム管の魅力はこの回を聴けばバッチリ分かる筈。

アンプはSV-P1616D。登場した出力管は

①Tung Sol 6L6GC STR
②EH KT88
③Gold Lion KT66
④Golden Dragon KT66 retro
⑤Golden Dragon 6550C
⑥Gold Lion KT88
⑦Golden Dragon KT88 retro
⑧曙光 EL156

の8種類。改めてこうやって比較試聴して真空管のお国柄というか生産地による音の違いがかなりハッキリしたのではないかと感じています。
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これはGolden Dragon KT88。KT88系のなかでも中域の太さと重心の低さが魅力。
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Gold Lion KT66。中庸でありながら凛とした涼やかさのある音。
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曙光電子EL156。スケール感と抜けの良さが際立つ表現。
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Golden Dragon 6550C。6L6系の延長にあるナチュラルな音。

近年はKT150の登場で話題はスッカリそっちへ行ってしまった感もありますが、今回改めて色々なビーム管を聴いてみてゲストのTさんも私も或る発見がありました。それは中国製(Golden Dragon)KT66,KT88の音の良さ。非常に感覚的な言い方ですが音楽性が高く、聴いていて楽しく自然で聴き疲れのなさが非常に印象に残りました。ロシア製ビーム管が少しクールで客観的,分析的な音を聴かせる一方でGolden Dragon勢はどれもFun To Listen。二人で思わず"ドラゴン、いいじゃない!"という結果になったことをご報告しておきます。

後半のお楽しみタイムはPSVANE WE300Bを基準として本家ウエスタン300Bの年代別比較試聴。ずっと前にヴィンテージWE300Bの試聴をやってことがありましたが、このときは厳密な比較試聴という流れではなかったので、今回が本当の意味でのWE300Bシリーズのリファレンスチェックということになるでしょう。

アンプはSV-91B。登場した300Bは

①PSVANE WE300B
②WE300B(2006)
③WE300B(1988)
④WE300B(US ARMY)
⑤WE300B(刻印)
⑥WE300A

という錚々たるもの。それぞれの音質についてはOAを聴いてください、としか申し上げられないのですが、ひと言で申し上げれば年代が遡るごとに音のクリーミーさが増し、豊かな音場が現れる…とでも評したくなるような桃源郷の世界でした。
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WE300B(2006)
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WE300B(1988)
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WE300B軍用(1950年代)
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WE300B刻印(1940年代後半~50年代前半)
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WE300A(1940年代前半)

是非皆さんも歴史の立会人になって頂ければ幸いです。OAでお待ちしております!



by audiokaleidoscope | 2017-03-25 17:07 | オーディオ | Comments(0)

(3/23_1)ドライバー管で音はどう変わる?+世界最古の真空管アンプを聴く(リベンジ編)

今日はMUSIC BIRDの収録日。まずは一本目4/28(再放送5/5)OA分の録りから。
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後半戦ではこんなことも。以前WE95A(1920年代のウエスタンのアンプで当時映画館の映写室のモニターアンプとして使用されたもの)の音をライン録りで収録したことがあったのですが、その際一緒に持ってきたWE7A(世界初の民生用真空管アンプといわれるもの。1922年~1927年製造で当時US400ドルという超高級品)はインピーダンス整合上の問題で上手くライン録り出来なかったことはブログでも書きました。その際、ゲストのTさんと"何とか7Aの音も聴いてもらいたいもんだねえ"と話していて、"じゃあ当時7Aとつながれていたスピーカーの音をダイレクトにマイクで録っちゃったらどう?"という話になりました。1920年代のパワーアンプとマグネチックスピーカーの音を放送で聴けるなんて今までも無かったでしょうし、これからもまず有り得ない…やってみましょう!!ということで臨んだ今日。
上のリンクをクリックすると収録中の動画が観られます(Facebookアカウントがなくて観られない方はこちら)。結果は大成功。Tさんの518W(黒いホーン),私の540AW(陣笠)いずれも良い音で録れましたので、是非OAをお聴き頂ければと思います。

この回の本編は「ドライバー管で音はどう変わる?」というタイトル。意外な盲点ともいえるドライバー管の差換えによる音の変化をリスナーの皆さんと一緒に音を聴きながら検証していこうというもの。ドライバー段は出力管をスイングする非常に重要なステージ。JB320LMをテストベンチとして数々のドライブ管をスタジオにご用意しました。
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用意したのは現行球でEH 6V6,GD EL34,Tung Sol 6L6GC,GD 350B,ヴィンテージ球でSTC 6V6G,Mullard EL34(XF1),GE(CANADA) 6L6WGB, WE350B。
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STC 6V6G…6V6系はしっとりキメ細かい繊細な音。
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Mullard EL34(XF1)…EL34系はパワー感がアップ。
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GE(CANADA) 6L6WGB…6L6系は重心が下がってゆったりした音に。
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WE350B…350B系はハイが抜けて端整な音に。

現行球も含め実に多彩な変化を聴かせてくれました。現行ではTung Sol 6L6GC STRが、ヴィンテージではSTC 6V6G,Mullard EL34が特に印象に残っています。それぞれの特徴はOAでバッチリ語っていますので是非お聴き逃しなく!

Tさん曰く"ドライブ段の球を替えるってあまり注目されていないけど、或る意味出力管以上の変化じゃないですか!?"。私もこのような形で総まくりをやってことがなかったので、これほどまでの変化が楽しめるとは思っておりませんでしたが、実に楽しい2時間収録になりました。二本目の収録の様子は次回ブログで!!


by audiokaleidoscope | 2017-03-24 04:26 | オーディオ | Comments(0)

(3/17)IさんのSV-9T SE完成レポートとJENSENアップグレード

今日は東京のIさんから届いたSV-9T SE完成レポートとカップリングコンデンサーのアップグレード(JENSEN)、そしてモノづくりの素晴らしさについて…。

SV-9T SE 完成のご報告です。組み立てはあっという間に終わってしまいました。
楽しい時間はあっという間でした。
でも・・・感動しています!このアンプ凄いです。

1628もかなり感動しましたが、ある意味それ以上かもしれません。
こんな事言って失礼かもしれませんがそれほど期待していませんでした。
小さいスピーカー鳴らして楽しもうと思っていたのですが、20cmフルレンジをグイグイ鳴らしています。それになにより良い音です。
重みのある低音も、予想以上に抜ける高音も実際聴いてみてびっくりです。
試聴会で聴いた事はありましたが、こんなに良いイメージはありませんでした。
大型のフロアータイプには向かないかもしれませんので試聴会での出番はないかもしれませんが、試聴コーナーを作って近くで聴く事ができれば皆びっくりするはずです。でも…皆には知ってほしくない…一人でにんまりしながらこっそりと楽しみたい、そんなアンプです。

そこでご提案したのが更なる音質向上のための決まり手!カップリングコンデンサーのJENSEN化です。改めてのご案内になりますがJENSEN(デンマーク)は(高級)真空管パワーアンプ用のカップリングコンデンサーのデファクトスタンダードとして広く採用されるようになってきました。
JENSENを始めて知ったのは15年ほど前で、当初はホームページには上げず、お問合せ都度ご案内させていただいてきたのが口コミやブログなどで徐々に広まり、オイルコンの最高峰の一つとまで言われるようになってきました。ハイグレードアンプばかりでなく最近はエレキットのTU-8340SVなどでも設計時点でカップリングコンデンサーをアップグレードすることを想定するようになりましたし、Iさんのように小型で廉価帯アンプにもJENSENを使う方がどんどん増えている状況です。音のキモといわれる出力トランスとカップリングコンデンサー。トランスを替えるのは大変ですがカップリングコンデンサーは手軽にアップグレード出来ますから未体験の方は是非!

ちなみにJENSENには錫箔と銅箔の二種類がラインナップされています。物理サイズとしては錫の方が若干小さめといえるでしょうが、いずれも通常の容量のカップリングコンデンサーの数倍のサイズですので、交換される前にサイズ的に入るかどうかの検討は必須でしょう。コンデンサー本体の両側から出ているリードはいずれも銀線で錫/銅共通ですが音は異なります。敢えて言えば繊細感重視の方は錫,力感重視の方は銅を選ぶと良いでしょう。

ここで少しおさらいをさせていただきますと本来カップリングコンデンサーは電気的にノンポーラー(無極性)ですので、電解コンデンサーのように遵守しなければならいプラスマイナスの極性はありません。一方でJENSENはメーカー推奨の取り付け極性が明示化されています。具体的にはケースを見てマーカー(黒線)のあるほうが前段プレート側、言い換えればマーカーなしのほうが後段グリッド側ということになります。
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これを模式化してみたのが上の図です。簡単に言えば信号の流れをイメージして上流側がマーカーあり、と覚えていただくといいかもしれませんね。ちなみに逆付けしても電気的な問題は起こりません。
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Iさんから届いた美しいワイヤリングのSV-9T SE/JENSEN仕様の写真です。その後、Iさんから再びメール。

コンデンサーを交換して、2日間、数時間聴いてみました。いいですね! 音が纏まって来ました。
高音質なソフトを聴いていると楽しくて・・・全ての音が瑞々しいです! 大音量で聴きたいです。 でも自宅だと大きな音が出せなくて・・・音場の奥行き感、空間まで分かるようです。
低音から高音までフルレンジでこんな音が出るなんて感動です。
1628と良い勝負でしょうか?

…その昔、旧店主日記でこんなことを書いたことがあります。

2009/9/23 「作ること=感謝すること」

今まで何度も申し上げてきたことでありますが、何故私どもが「キット屋」なのか・・・モノが大量に生産され、大量に消費され、或るときから大量に廃棄される事が当たり前になってしまった世の中・・・「修理するなら新しいのを買った方が安いですよ」と平気で言われてしまう世の中で、自分が手を汚し苦労しながら一つのモノを作り上げるということが如何に大切であるか(逆に言えば如何に現代社会から欠落しているか)を感じて頂きたいからでもあります。

木工をやったことのある方であれば板一枚を真っ平にカンナで仕上げることが如何に難しいかを知っているでしょう。私の祖父は宮大工でありましたがいつもカンナ掛けの難しさを説いていました。また毎日当たり前に食卓に出てくる食事を作るのに奥さん,お母さんがどれだけ心を砕いていらっしゃるか考えたことがあるでしょうか。目に見えないところで栄養のバランスへの配慮だけでなく、温度や味付けなど目に見えない様々な思い遣りが込められている筈です。

またその昔、子供だった頃の自分がキャンプで作ったカレーがショビショビで御飯に芯が残っていても「美味しいなあ」と思われたに違いないのは何故でしょう。そこには必ず自分を含めて人の努力と結果に対する感動や感謝の念があるからです・・・何でもお金を出せば買えて、お金さえ出せばお客さまで、小さなこと一つにも色んな他人の叡智や苦労が沢山詰まっていることが分からないから他人への感謝や感動の気持ちがどんどん失われ、理解出来ない犯罪や事件や嫌がらせが起こる世の中になってしまったような気がします。

Iさんのレポートから改めて「作る」という行為の素晴らしさに想いを致すことが出来ました。Iさん、どうも有難うございました!!



by audiokaleidoscope | 2017-03-17 11:31 | オーディオ | Comments(0)

(3/13)高槻 vs PSVANE vsウエスタン

今日は日帰り人間ドック。最近チョイと気になるところがあるので、どうせなら全部調べて頂こうということで病院に伺った訳ですが、グッタリ疲れました。そんななか、久しぶりのyoutubeアップロード!今回は今まで秘蔵していた音源”高槻 vs PSVANE vsウエスタン”(2016年9月16日オンエア)を満を持して公開しちゃいます!!
この回では現行300Bのなかでもハイクラス品として注目を集める”PSVANE WE300B”と純国産300Bである高槻電器工業”TA-300B”が登場。本家ウエスタン300Bと真っ向勝負を展開します。果たして現行300Bは本家ウエスタンを超えたのか?・・・ぜひお聴き逃しなく!!
by audiokaleidoscope | 2017-03-13 19:36 | オーディオ | Comments(0)

(3/9)或る極致

昨日に引き続きTL3 3.0。急遽ライターS氏が大阪行きのところ途中下車して参戦してくれることになって一緒にあれこれやってます(笑)。これから縷々書くとしてS氏曰く"CD再生における或る極致かもね"と言った言葉が印象的でした。私は逆に"これがCDの音という事を忘れる意味においての或る極致"と感じています。それほど自然で滑らかな音。
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場所は第二。今日のプリはSV-722(C22)。パワーはS氏のリクエストでLM91A。D/Aは定番SV-192PROです。今日の目的は

1.TL3 3.0の内部アップサンプリング効果検証
2.MC-3+USB(マスタークロック)によるクロック同期効果の検証
3.クロック同期とRe-Clock(クロック洗浄)の効果比較

というもので、かなり集中力を要し正直かなり消耗している部分もありますが、簡潔に要点をレポートしたいと思います。因みにTL3 3.0のスタビライザーは標準品でなく7cmの従来品を使ってテストしています。

1.TL3 3.0の内部アップサンプリング効果検証

まずはTL3 3.0単独の状態で、内部アップサンプリング効果を検証してみることにしました。メーカーHPにはサラッと「CDの常識だった44.1kHzを、選択により88.2kHzまたは176.4kHzへアップサンプリングして出力します。高いサンプリング周波数に特有の緻密さや滑らかさが更に加わります」とだけ書かれていますがトランスポートの内部でアップサンプルするという発想は比較的新しいもので、最近ではSWD-CT10の大ヒットが記憶に新しいところです。TL3 3.0ではCDの基本クロックである44.1kの逓倍(整数倍)周波数である88.2k/176.4kのみを出力しているところに音への拘りを感じます。

製品情報では公開されていない(と思いますが)、このアップサンプリングに使用されているチップはTI社SRC4382。SV-192PROに採用されているSRC4792より僅かにスペックは劣りますが各種製品で採用されてきた実績のあるチップです。
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検証時のSV-192PROのアサインはClock Source=Bypass(入力クロックをそのまま受ける設定)としてCD再生中にTL3 3.0のUPSAMPLEボタンを押しながら44.1k→88.2k→176.4k→44.1k…を繰り返しつつ音質変化を聴いていきます。ひと昔前のSRCはレートを上げると上は伸びるが音が痩せる傾向があったのですが、SV-192PROに接続する限り、そのような傾向は皆無で聴感的にはレートが上がるごとにデジタル的なハードエッジな感覚が後退し繊細さ、滑らかさが増す印象。DAC側に88.2k/176.4kを受ける能力があるなら是非お試し頂きたい有用な機能といえます。

2.MC-3+USB(マスタークロック)によるクロック同期効果の検証

次のステップとしてマスタークロックを追加してTL3 3.0とSV-192PROのクロックを同期してみましょう。ここで飛躍的な音質改善が現れました。
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SV-192PROのアサインはClock Source=External,マスタークロック(MC-3+USB)側はMode=Internal,Clock Out=44.1k,Clock Multipliers=×1(44.1k)→TL3 3.0,×4(176.4k)→SV-192PROとなります。この状態はTL3 3.0,SV-192PROそれぞれの内部生成クロックのppmレベルの誤差によって生ずる時間軸の揺らぎが一台の、それも極めて高精度なマスタークロックに同期されることで全く無くなり、極めてクリアで曇りのない澄み切った音場が現れることを意味します。

まだハイレゾという言葉すら定着していなかった2008年、SV-192S(当時)の内部アップサンプリング効果は大きな衝撃を市場に与えた訳ですが、同時にクロックの音に与える影響の大きさもSV-192Sが広く伝えることとなりました。それまで殆どスタジオでしか使われることのなかったマスタークロックが家庭に入る大きなきっかけを作った製品と自負している訳ですが、一般のデジタル機器が持つと言われる20ppm~50ppmのクロック誤差がMC-3+USBによって0.1ppm(公称値)に改善され且つ同期された音は私どもが家庭で聴くCDの音質の概念を全く越えるもので、これにはS氏も"すごい!!"と目を丸くしていました。複数のマイクの僅かな位相差までも聴こえてくるような精緻極まりない世界です。

3.クロック同期とRe-Clock(クロック洗浄)の効果比較

最後に試したのがMC-3+USB独自の機能であるRe-Clockです(Re-Clockについてはこちらを参照ください)。リクロック=極めて正確なクロックをMC-3+USBの内部で生成しDACへ供給するという離れワザをMUTEC社が実用化した訳ですが、特にPCオーディオ(USB入力)には絶大な音質改善が見られることで世界的にヒットしているだけでなく今後のスタンダードを形成しつつあるリクロック…これがTL3 3.0でどうなるか試してみたという訳です。
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上記2とは接続自体が大きく異なります。2ではクロックのみを外部から供給していた訳ですが、リクロックモードではTL3 3.0のデジタル出力(AES/RBU)をMC-3+USBにダイレクトに入力します。上の写真でClock Multipliersが全て×1にアサインされているのはTL3 3.0を176.4kに上げているからです。少し細かい話になりますが、このモードではMC-3+USB→TL3 3.0のクロック同期はDEFEAT(無効化)されていますがSV-192PROへの176.4kの同期は生きている状態となります。

興味深いのはこのリクロック+同期モードの状態の方が上記2よりも音が滑らかなこと。よりアナログ的な質感が表出し、音のグラデーションが増し抑揚感が加わるイメージです。2のハイディフィニッション&クリアネスの世界も捨てがたいオーディオ的快感に満ちていますが、S氏も私もTL3 3.0のダブルベルトドライブ+SV-192PROの真空管バッファ付きD/Aという個性を最も美しく描き出すのは、このリクロックモードであろうという結論に達した次第です。

冒頭に書いた"CD再生における或る極致"、そして"CDの音という事を忘れる意味においての或る極致"の両方を体験できたひと時でした。気がつけば27時。S氏は予約したホテル代が無駄になったと横で笑っています。



by audiokaleidoscope | 2017-03-10 03:02 | オーディオ | Comments(0)

(3/8)TL3 3.0量産初号機 来る!(その1)

今日、ショールームで仕事をしていたら、いつものヤマトさんが"大橋さん、荷物!"と入って来られました。通常仕入れた商品は物流センターに入荷するので、私宛てに来るのは雑誌貸し出しのデモ機が戻ってくるか、新製品のサンプルがメイン。外函を見ると明らかにウチの製品の梱包と違うので、どれどれ?…とシャチハタ片手にドライバーさんのところに行くと、おお!待ってました!!CECのNewトランスポート、その名も"TL3 3.0"。量産初号機が試聴用に届いたという訳です。
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現行TL5が廉価帯でありながら本格的なベルトドライブメカを搭載したことで人気モデルとなりましたが、個人的にはワードクロック入力が装備されていたTL3N(製造終了)に大きなシンパシーを感じていて、TL3N製造終了後に別注を組んでもいいので何とか存続できないのか…とオファを継続していましたのですが、主要パーツの一部が調達不可能ということで、是非次モデルではワードクロック入力を復活させて音質改善マージンを残して欲しいというリクエストを出して今日に至っていました。

そして昨年入ったニューモデルの情報。実質TL3Nの後継機というべきコードネーム"3.0"を開発中であるということを伺い期待を膨らませていたのです。そして今年1月に新発売のリリースが出た直後に発売延期の続報。私どもとしてはメーカー自身が認証できるものを評価したうえで導入の可否を判断すべきという立場から今日まで静かに見守っていた訳ですが、やっとその日がやってきたという訳です。

CDプレーヤー自体はCEC以外にも様々なメーカーから発売されていますし、価格帯も様々です。そんななかで私どもが10年ほど前から一貫してCECのCDトランスポートを指定銘柄として扱ってきた訳は、何よりベルトドライブであるということ、そしてSV-192S/PRO(D/Aコンバーター)との類稀なるマッチングの良さ、更に言えばアナログ的音質の素晴らしさ、この3つが大きな理由です。ベルトドライブの音質的特徴についてはこちらを参照ください。

さてそのTL3 3.0。逸る気持ちを抑えながら設置を行いSV-192PROにAES/EBUで接続。ローディングタイプのトレイを開けてCEC独自のベルトドライブメカを確認すると基本的にTL3Nのそれを踏襲していながらメカシャーシが大型化されベアリングシャフトも堅牢なものにリプレイスされていることが分かります。レーザーピックアップ自体も変更されています。
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メーカーHPにアップされているメカの写真。"シャーシの大型化により安定性を増したCDメカニズム本体"が実機でも確認出来ます。まさにアナログターンテーブルに通じる慣性モーメントを利用した聴感上のS/Nの良さと滑らかな音質はこのメカあればこそ。CECの独断場です。

早速試聴を始めます。先ずはTL3 3.0のもう一つの大きな特徴であるサンプリングレート機能をOFFにし、マスタークロックも繫がないスッピンの状態で、いつも使っているリファレンスCDを掛けてみると…今までのCECベルトドライブの音と全然違う!!ひとことで言えば従来よりも重心が下がり締まった音になっています。ただ締まっていると言っても硬い音ではなく弾力性がありDD(ダイレクトドライブ)とは質感そのものが違うのは勿論です。何枚かCDをとっかえひっかえしても傾向は同じなので、この変化は何なのか…居ても立ってもいられなくなってメーカーに電話して開発担当に"今までのCECとどうしてこんなに音が違うんでしょう?"と訊くと基本的に本体はTL3Nの延長線上にあるので、あとはスタビ(ライザー)…というヒントが。確かにスタビが従来品と大きく変わっています。
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これがTL3 3.0から新採用されたスタビ。直径12cm/380g。今までのモノと違いCDそのものを上からクランプしているような状態になっていますね。
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これがTL51X/TL3N等いままでのCECで採用されていたタイプ。いずれも真鍮製ですがこちらは直径7cm/330g。これは単純に回転系マス(質量)を増やすことで慣性モーメントを稼ぎ安定した回転を得るためのものでアナログプレーヤーのスタビに通じるところがあります。

理屈からいえばスタビの重量が大きくなればなるほど回転系は安定する訳ですが一方でシャフトへの負荷は大きくなります。メーカーによれば新タイプ(380g)はTL3 3.0のほかTL3Nには使えるがTL51Xにはお奨めできないとのこと。たまにアナログプレーヤーに何キロというスタビを載せて使っている方がいますが、重ければ良いのは理屈上の話であって実際シャフトの先端は悲鳴を上げていることまで気付いていない方が殆どです。

"そうか…スタビか"と思いながら下のスタビに替えて音出し。おお!これぞCECサウンド。標準(上)のスタビのような重厚さは後退するものの、軽やかな響きが現れアナログ的な開放感と細やかさが聴こえてくるではありませんか!個人的印象ではジャズ/ロック系はデフォルト(上)。クラシック/ヴォーカル系は従来品(下)に軍配が上がりました。この辺りはまさにアナログプレーヤーのチューニングに通じる世界でCDプレーヤーでは味わえない面白さです。メーカーによれば従来のスタビも供給可能ということなので、サンバレー仕様は新/旧両方のスタビを標準装備して音の違いを楽しんでいただけるようにしようかな…と(笑)。

第一回インプレッションはここまで。明日はいよいよ内部アップサンプリングによる音質改善効果の検証とMC-3+USBを追加することによるマスタークロックの要否について集中試聴してみたいと思っています。既に一定の結果が出ている部分もありますので乞うご期待!です。




by audiokaleidoscope | 2017-03-09 05:03 | オーディオ | Comments(0)

(3/4)音の殿堂

取材と宴が終わり、明けて日本コロムビア 南麻布スタジオへ。
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目的は二つ。先日ここにお納めしたSV-192PRO(D/Aコンバーター)についての稼働に関するニーズの把握、そして昨年から個人的に大注目しているORTプロセスのまさに作業の現場を見学させていただき、その音の秘密を迫りたい…と思っていたのですが、実際それ以上の…私にとってだけでなく、わが国の音の歴史の過去,現在,未来の全てが詰まっている”音の殿堂”そのものでありました。

写真に”Studio & Archive”と書いてありますね。ここは所謂レコーディングスタジオではなくトラックダウン,ミキシング,マスタリング等の工程を主に行うところ。そしてアーカイブというのは日本コロムビア創業100年以上の歴史のなかで生まれ愛されてきた膨大な音源を最新のデジタイズ技術によって半永久的に保存するための作業を指します。
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ここはメインスタジオの一つ。確かフルアナログプロセスで作業が必要な音源はここでやるんです…というご説明ではなかったかな?スタジオだけでも作業目的によって幾つにも分かれています。ここのメインモニターはB&WのMATRIX801ですが、どこのスタジオに行っても必ず目にするGENELECや近年注目を集めているmusikelectronic geithain(ムジーク)がインストールされているスタジオもありました。恐らくここでSV-192PROがヴォーカル音源のマスタリングに使われることになるのでしょう。

ここの責任者でもあるFさんとエンジニアのTさんに番組ゲストとして登場して下さったのが1年ちょっと前。番組のなかで取り上げたORTプロセスの考え方に共鳴し、直後の東京試聴会ではORT音源だけで構成したデモを行ったり、先月の試聴会でも客席にいらっしゃったFさんに急遽ご登場いただいてORT技術について説明して頂いたり、急速に密接な関係性になって本日に至った訳です。Tさん曰く、”スタジオの命はD/Aとモニター”。その心臓部に採用いただけて光栄の極みです。
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ここがTさんのスタジオ。ここでORT音源が日々生まれている訳ですが、改めて簡単に申し上げると音源(マスター)がデジタルでしか残っていない音源の失われた高調波(倍音)を再生成して付加することによりアナログ的な自然な質感を蘇らせる為の技術がORT。

ここから先は企業秘密になりますので私から詳細を申し上げる訳にはいきませんが、ごく簡単に言うと可聴帯域外(20kHz以上)に元々存在していたであろう偶数次の倍音(二次,四次)を加えるというもの。ポイントは二次の高調波と四次の高調波のバランスと位相。僅か数サンプル(CD音源でいえば1サンプル=1/44000)の高域の位相をずらしただけでも空気感が変化するのが耳で分かります。

Fさんによればこれをパラメータ化するのではなく元の音源一つ一つに最適化するため全て耳で確認してフィックスするのだそう。気の遠くなるような職人の匠(たくみ)としか言いようのない世界ですが、我々的に言えばクロスオーバー20kHzのスーパーツィーターを1mmオーダーで前後させることで音場の出方が変わるのに極めて近い世界といえばナルホド!と思っていただけるかも。要はそれを原音源レベルで最適化するのがORTといえるでしょう。

話はここで終わりませんでした。日本コロムビアといえば明治43年(1910年)に(株)日本蓄音器商会として発足(F.W.ホーン社長)。「シンホニー」「ローヤル」「アメリカン」「ユニバーサル」「グローブ」などのレーベルによる片面盤発売や「ニッポノホン」蓄音器4機種発売(初めての国産機)という輝かしい歴史をもつ老舗です。その100年余の歴史のなかで生まれた音源が全てここで管理されている、まさに私たちにとってのここは音のエルドラド(黄金郷)。垂涎のお宝がそこかしこに…。
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STUDERはじめアナログコンソールが何台も。今でも完璧にメンテされていてアナログマスター音源のデジタルアーカイブ用に日常的に稼動しているのだそう。夢のような世界です。
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見せていただいたマスターの一つ。INDEXに書かれていたデータから恐らくROUGH & ELEGANCE/稲垣次郎のマスターテープと思われます。ちなみにこれはPCM録音用の2インチVTRのテープだそうで、CDのfs=44.1kHzも映像規格に準拠して決まったレートとのことでした。

Tさんによれば”どれだけあるか私でも分からない”ほどの量。Fさんに是非どこかのイベントで”マスターテープを聴く”というタイトルでデモをやりましょう!と提案しました。聴いてみたいですよね!オリジナル盤どころの騒ぎでない、まさに全ての音源の元がマスターテープなんですから。

そして日本コロムビアという会社が最近プレゼンスを大いに上げているのがLPのカッティング。特に音に拘るアーティストがLPを切る時にコロムビアさんの門を叩いています。例えば井筒香奈江さんの”時のまにまにV”。例えばウイリアムス浩子さんの”My Room”。最近は他社からのオファでLPを切る機会がどんどん増えているというのは嬉しい話です。
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これがノイマン(独)のカッターレース。70年代の製品ですが当然現役バリバリです!
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カッターヘッドSX74。まさか実物が見られるとは!!
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携帯で撮影させていただいた溝の顕微鏡写真。SX74がこの溝を切っているんです。溝の深さ,幅など全てが音に影響をおよぼす極めてデリケートな世界。感動的ですね!
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そしてこんなものも。これは国内最初期のフルディスクリート(!)デジタルレコーダー。70年代のものでまだレッドブック(CD規格)が制定される遥か前。レートは独自の47.25kHz/13bit。これもまだキチンとメンテされているというから驚きです。このレコーダーは1970年代後半にニューヨークに運ばれ、米国初の商業的デジタル録音としてジャズの8トラックのマルチトラック録音に使用された個体。デジタル録音,CDの世界を拓いたものとして記念碑的なモノといえるでしょう。

最近は合理化という名の下に色々なモノが捨てられ、忘れ去られています。いちど断捨離されたものが戻ってくることは二度とありません。今回お邪魔して日本コロムビアという会社の凄さ、素晴らしさは”残せる強さ”ではないかと感じました。

Fさん(技術部)の部屋には…。
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個人のラボもかくや…と思わせる、いい意味でカオス化している作業台。この環境が許されるからこそ色々なものが維持できるのだということを気付かされます。普通は”そんなモン棄ててしまえ!”でお終いですから。
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千と千尋の神隠しの薬湯入れのような部品棚。よく見るとスーパーヴィンテージなパーツがゴロゴロ。
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その棚の上には当然タマもいっぱいストックされています。何に使うかは…分からない。でも何時か使いたい時のために残しておこう…その余裕と心意気。
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その傍らに我がSV-192PROが。さまざまなチェックを経てインストールされる日も近いことでしょう。
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このミニチュアハウスみたいなのは最初期の短波ラジオ。当時のハイエンドオーディオですね。
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蓄音機と白黒テレビ。聞けば個人の蓄音機やSP盤の蒐集マニアから寄贈の申し出もあるとか。”なるべくそういうものもお預かりしていこうと思っています”という言葉の先に単なる営利企業を超えた志(こころざし)を感じます。
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1910年当時のこんな立派な工場。当時の音響技術は先端産業であり、後に国策企業的な側面も生まれました。アメリカではウエスタン,ドイツではテレフンケンがそうだったように日本コロムビアという会社の当時の重要性が偲ばれるパネルです。

私が真空管アンプを通じてモノづくりの素晴らしさを伝えようと思って来年で20年。独りではじめたこの仕事も気がつけば様々な先輩や仲間との接点が生まれ、知らないうちに大海原に小船で漕ぎ出した様な私どもですが、こんな夢の世界に関われただけでも本当に幸せだな…と心から思えた一日でした。Fさん、Tさん、有難うございました!!



by audiokaleidoscope | 2017-03-05 04:05 | オーディオ | Comments(0)

(3/3)インタビュー「写真家・平間 至氏が真空管アンプを使う理由」

オーディオ誌において各社の製品がどのように試聴され、評価されているか…その現場の様子を知る人は多くない筈。高度に遮音された空間。空調の音がごく微かに聞こえる程度。重い防音扉をグッと閉めると鼓膜が押し込まれるような独特の気密感。機器の音を正確に聴くため殆ど残響ゼロの空間のなかで試聴を待つ機器が静かにプリヒートされている。そしてレビュアー(評論家)が現れ、多くの場合数枚の音源から1~2分程度聴いて、次、そしてまた次。レビュアーが時々メモをとりながら粛々と進んでいく…そんな感じ。

今回は違うやり方で真空管アンプの魅力に迫れないか、ということで行ったインタビューと試聴。きっかけはこれ。
このなかで特集されていたのが”A ROOM WITH SOUND (音のいい部屋)”という記事。デザイナー,クリエーターなど時代の先端を走り抜けている人たちの”音楽のある暮らしが紹介されています。そこに出てくるのは現行のハイエンド機器よりもむしろJBLパラコン,ALTEC A5,A7,タンノイ…といったヴィンテージスピーカーと真空管アンプ。その不思議な”磁石感”ともいうべき符合が何なのか、彼らは何故真空管アンプに行き着いたのか?…そういう視点でオーディオ機器の試聴を、出来れば主(あるじ)が日頃音楽を聴いている、そのままの環境で出来たら面白いのではないか…。所謂オーディオ的なレトリックから外れたところにあるヴィヴィッドな印象が、或る意味オーディオ評論界に長く定着してきた方法や結果に一石を投じることになりはしないか…そんなことからスタートしたのが今回の企画。

レビュアーとして今回の企画に賛同して下さったのが平間至さん。ポートレイトカメラマンとしては日本を代表する写真家の一人です。その平間さんと私が知り合ったのはチェリスト四家卯大さんの紹介が縁。昨年の東京試聴会に遊びにいらっしゃってから急速に距離感が縮まり、まるでS極とN極が引き合うように何度もお会いして音楽について語り合ったり、私も個人的に写真を撮っていただく関係性になりました。

編集部から平間さんに取材のオファをしたところ快諾をいただけたということで、折角登場いただくのであれば現在使って頂いているSV-128B(KT150シングルアンプ/完売)だけでなく、平間さんが現在使われているB&W 805D3に合いそうなアンプを幾つか持ち込んで自宅での比較試聴をレポートしては面白いのではないか?…ということになり、私はプリヒート&繫ぎ替え要員としてお手伝いさせて頂くことになりました。勿論私は今回100%黒子で取材そのもののは一切関わらないという条件で。

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当初3時間程度を予定していた取材ですが結果的には5時間近くにも及びました。その結果については雑誌の発刊を待ちたいと思います。ただ一つ、私が平間さんのレビューを伺っていて思ったことは、知らず知らずのうちに我々が使って(しまって)いるオーディオ的レトリックは出てこないものの、平間さんの一つ一つの”言の葉”は私が日頃感じている其々のアンプの個性や音楽性と極めて近いことが大変印象的で、とても嬉しく感じました。

取材前に何となく感じていたのは”写真家,ミュージシャン,音楽愛好家…いったいどの平間さんが顔を出すのかな?”ということでしたが、冒頭に”音楽って写真だろ?”というひと言で全ての方向性が見えたな、と。つまり表現の手段やプロセスは違えど、訴えたいものは同じ。それは生命の輝きであり、人間という存在のかけがえのなさであり、生きることの意味にまで繋がっているように感じました。
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取材終わりで私は下北沢のライブハウスへ。懇意にしているミュージシャンのバースデーライブがあるというのでお邪魔してきました。ホテルに戻ったのは27時でしたが、ライブ終わりの打ち上げで音楽をつくり演奏する立場の人間がどれだけ真剣に、或る意味自分を削り取って音楽をやっているかを感じるひと時でした。
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音楽もオーディオも相対的価値観で向き合っていては本質に到達できない。AはBと比較して高域が出るとか出ないとか、あのドラマーはこのドラマーよりもキックの厚みが…というような聴き方をしていたのでは本質的な意味で音楽と一体化できません。

平間さんが今日仰っていた”オーディオへの興味が強くなればなるほど音楽から離れた。だからボクは真空管を使っている”というひと言が全てを言い表していた…そう思います。



by audiokaleidoscope | 2017-03-04 05:04 | オーディオ | Comments(0)

本ブログ掲載内容は私人の見解であり、(株)サンバレー(ザ・キット屋)の立場,戦略,意見を代表するものではありません。


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