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(5/5)レートより叡智

今年のキット屋のGWは変則稼働。5日までがお休みで6日(金),7日(土)は営業、そして8日(日),9日(月)がまたお休みというスケジュール。実質的には長期連休は今日まで、ということで変な言い方ですが、私のバタバタ週間もこれでひと息。明日から普通の日々が戻ってくると思うと少し安堵感が…、そんな今日、茨城のNさんが第二にいらっしゃいました。

Nさんとは10年来のお付き合いで、こうやって年に1~2回お会いする間柄。そんなNさんが今回準備してこられたのが”ハイレゾは本当に音が良いか?”というテーマでした。この件は実に深い内容を包含していますからひと言で申し上げることは出来ません。今日NさんがUSBに入れてこられた音源のうち幾つかをSound Forge Pro上で波形観測しながら例示してみました。これに関しては以前のブログでも少し触れています ので併読下さい。
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例1

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例2

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例3

例1~例3まで全てハイレゾとして配信されている音源の波形です。先に申し上げてしまうとNさんが”ハイレゾだからと思って期待して購入したけど音が悪くてガッカリした”と仰ったのが最後の例3でした。では例1から例3でどうしてこんなに波形のプロファイルが異なるでしょうか。それはミックス時に”コンプレッサー”(以下コンプ)というエフェクターをどの程度使うかによって決まってきます。1は殆どかかっていない事例,2が軽く掛っている状態,3が深く掛っている状態のサンプルと思って下さい。

コンプはスタジオやPAの現場で最も多用される機器です。裏返せばそれだけ便利であるということもいえます。平たく言えばレベルの低い信号レベルを持ち上げ、ピークを潰すことでダイナミックレンジの調整(殆どの場合圧縮)を行います。その極端な例が上の3である訳です。

誤解を避けるために申し上げますがコンプが全て悪い訳ではありません。私たちが日々接している音源の殆どは何らかの形でダイナミックレンジ調整が行われています。少々下世話な言い方ですが女性のお化粧のように外へ出る(外へ出す)以上、外見を整えるのは一つのエチケットのようなものです。要は程度問題…何事も”過ぎたるは及ばざるが如し”です。

例3のような音源が出てくる背景にはオーディオ機器そのものの変化と無縁ではありません。オーディオ機器が小型化するにしたがって特にスピーカーは低能率化を余儀なくされました。スピーカーが低能率化するということは大入力を必要とするだけでなく、小入力時のニュアンスが損なわれる(ローレベルの信号を拾い上げにくくなる)ことを意味します。そのため、どうしても音源側でローレベルの信号を持ち上げ、その分飛び出るピークを潰す必要が出てきました。言うならばミニコンポの時代になり音源も変化せざるを得なくなったという背景も一因です。嘗てのように高能率の大スピーカーで音楽を聴く方が減り、結果的に音源の在り様まで変えてしまったという訳です。実際スタジオでミニコンポでプレイバックしながら音のチェックをしている現場に立ち会ったこともあります。残念ながら事実です。

例3のように極端にダイナミックレンジを圧縮した音源をどれだけハイレゾ化したところで、抑揚感がなく音のヘッドルームが低い(常に頭をぶつけているような違和感)がなくなる訳ではありません。今やパソコン一台あれば誰でもハイレゾ音源を自分で作れる(加工)出来る時代。ハイレゾだから音が良いと言うのは、旬の食材を使えば全て旨い料理が出来る訳ではないのと同じで最も大切なのはプロセス(料理でいえばレシピ)であり、つまるところ人の叡智こそが鍵であるという事に何ら変わりはありません。

ハイレゾという技術(ムーブメント)は業界にとって非常に重要なコンテンツです。この流れを大切にし良い音源を良い音で聴く楽しさを一人でも多くの人に伝えていかなければなりません。ハイレゾだから良いのでなくて、良い音源を更に良い音で聴く、その為のハイレゾであって欲しいし、単にブームに乗って何でもハイレゾにすれば良いというものではないことを私たち業界の人間が良識を持つ必要があります。折角高いお金を払って買った音が悪くては二度とその方は購入していただけないと思いますし、ソフトのみならずハード側の信頼も揺らぎかねません。

何事もそうですが、ブームになると色んなものが出てきて玉石混交の様相を呈します。それを選び間違いのないものを入手することが使う側の私たちに求められていると言い替えてもいいかもしれません。



by audiokaleidoscope | 2016-05-06 06:02 | オーディオ | Comments(0)

(5/2)ミッシャ・マイスキーから甲斐バンドへ

5月一回目の”ようこそ!オーディオルーム”(オンエア5/7土曜22時~)収録終了。今回もクラシックから70年代ロックまで幅広く登場しますので是非聴いて下さい!
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・大橋慎が選ぶリクラシックリファレンスセレクション

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・ようこそオーディオルーム特選!”ジャズ名盤100”
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・The Vocal
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・懐かしのあのアルバム
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そしてエンディングテーマはキース・ジャレットのChangesからPrismを選んでみました。おかげさまで今の流れになってから感想メールが増え、特に50代から60代の方にご好評をいただいておりますが(笑)、若い方にも聴いていただけるようにと思って宇多田ヒカルを今回入れてみました。全曲SV-192A/Dをバッファリングして収録していますので音質的にもご満足いただける筈。同様のひと時をリラックスしてお過ごしいただければ幸いです。リクエストもお待ち申し上げております!!





by audiokaleidoscope | 2016-05-03 13:40 | オーディオ | Comments(0)

(4/29_3)ヘッドフォン祭り会場へ!

収録終わりでMUSIC BIRDプロデユーサーと一緒に中野へ。”ヘッドフォン祭り”見学です。以前から同業の仲間から”一度大橋さんも行った方がいいよ。スゴイから!”というので興味半分、市場調査半分で伺った訳ですが…。
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真空管オーディオフェア会場では絶対に見られない光景や宣材があちらこちらに。同じオーディオでも文化というかカルチャーというか、根ざしているものの大きな違いを感じました。
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オーディオフェアなのに何処からも音が聴こえてこない会場。音楽をスピーカーを聴くのが当たり前の自分にとっては異空間でありました。デモの在り様も全く違う。私の場合は一対多の関係性で同時に数十人から100人程度の方をお相手にしてデモを行います。その場の空気感(=反応)を見ながらデモの内容もその都度変わる…そんな感じ。対してこのイベントはヘッドフォンを探していらっしゃる方は自分のプレーヤーで、プレーヤーを探していらっしゃる方は自分のヘッドフォンで係の方と一対一のコミュニケーションを取っています。それはアクセサリー売り場で指輪を選ぶ様に似ているようでもありました。そう、それはまさに自らのアクセサリーとしてのオーディオ選びの場所なんだと感じました。

気になったブースを幾つか…。
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小型ながら本格的なオーディオセットを指向する感覚。まさに省スペース的発想。そして時々は持ち出して楽しむ的な。
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ヘッドフォンの世界はピュアオーディオ以上にハイレゾの波が来ているのかも…。多くの機器がACアダプターだったりバッテリードライブだったりするところが異なりますが、良い音を聴きたい気持ちに何ら変わりはありません。
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中にはアナログの世界観をしっかりと出しているブースも。知り合いのスタッフに”こういうイベントでこの手の製品の訴求力はどうなんですか?”と伺うと、”すぐに売れるとは考えていません。でもヘッドフォン世代の若い人にもこういう世界を伝えていかなければいけないし、スピーカーで聴くともっといいですよ!ということも知ってほしいから”と仰って感動しました。まさにその通り!ヘッドフォンの先に百花繚乱の素晴らしきオーディオの万華鏡が繰り広げられる…斜めから見るのではなく、一つの通過点としてこういう文化も見守っていかなくてはいけないな、と強く感じました。
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なかにはこんなものも。EL34プッシュプルのヘッドフォンアンプ(?)。係の方にどんな動作をさせているか伺うと”ワタシも分からないんです!”って…(笑)。キワモノかもしれないけど出す以上は勉強しておかないと真摯なマニアの心を打つことは出来ませんね。
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KORGのNutubeもサンプルが出て音が聴けるようになりました。6P1はピュアオーディオ用途への転用はなかなか難しいですが、何とかモノにして世にその真価を問いたいものです。
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エレキットも頑張ってます!OPアンプの違いでどんな風に音が変わるかというプレゼンテーションですね。
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城下工業もSWDシリーズをフルラインナップして意欲的に説明していました。このゾーンが飛躍することで私たちのフィールドも大いに活性化する可能性を秘めており、今後も注目していきたいものです。
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これは雑誌社のブース。自作マインドのある方が興味深そうに覗いていらっしゃいました。
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出ました!!同人的自作ヘッドフォンアンプ即売コーナー。こういうのを見るとちょっとホッとします!
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なかにはこんなのも。この世界観、素晴らしい!

…私どもの業界よりも客層の平均年齢が20歳(以上)若いヘッドフォンの世界。同じオーディオ業界でありながら音楽との関係性や価値観が異なることを認めながらも、一方で私たちもこのフィールドを意識せざるを得ない今。何が接点たりうるのか、私たちはどうすべきなのか…その回答まで見つけることは出来ませんでしたが、低迷が懸念されるオーディオ業界において間違いなく台風の目はここだ!と確信したヘッドフォン祭りでした。ウチも次回出展してみたいな…どんな反応があるのかな?…そんな気持ちで会場を後にしました。



by audiokaleidoscope | 2016-05-02 20:08 | オーディオ | Comments(0)

(4/29_2)現行ナンバーワン300Bはこれだ!

という訳で、収録2本目。今回は現行300Bの比較試聴です。アンプはSV-P1616D/300B仕様の登場です。このアンプについて情報を出すのが今回が初めてだと思います。6月末に多極管仕様が先行発売される訳ですが、この300B仕様は7月末~8月初めのラインオフを目指して現在既に生産に入っているニューモデルです。

昨年暮れに登場して現在ダントツのナンバー1ヒットになっているSV-S1616Dは300B仕様,2A3仕様,多極管仕様の3パターンが用意されています。対してSV-P1616Dは多極管仕様(前回のブログで登場)と今回の300B仕様の2パターンになります。今回初出しの300B仕様は無調整で差し替えが出来る自己バイアスのプッシュプルで出力は18W+18W程度。約10WまでA級動作の手配線キット(完成品なし)で価格は真空管別売で10万円を切りたいと思っています。まだ試聴会でもお見せしていない製品ですが、今回は300Bの比較試聴ということで折角なので少し早めですがプレビュー的にご紹介出来たらと考え、収録に使用しました。

では早速いきます。今回は価格順ということで最初はElecro Harmonix 300Bです。私どもでも以前扱っていた球でロシア製300Bとしては最も廉価帯に属します。写真を撮り忘れましたが、300Bというカテゴリーの中では明るく快活な表現が特徴的です。300Bの最大の魅力である内声部の倍音の厚み、ふくよかさ、ザックリとした音のケバが十分に表現出来ており、300B入門用の球としては良いチョイスだと思います。

二番手はPSVANE 300B。現在私どもの定番300Bです。まず作りが素晴らしい。価格も妥当。且つ300Bらしさが十分に発揮されています。迷ったらPSVANE…それほどの信頼感を寄せている300Bの新種です。
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今から15年ほど前の中国,ロシア製の真空管の中にはお世辞にも良いとはいえないものが混ざっていました。歩留りが悪く(選別落ちする個体が多い)だけでなく、印刷の向き,電極の向きにもかなりバラツキがあったのですが、最近は随分精度があがり不良率も極めて低くなっています。そういう新世代の現行真空管の際たるものの一つがこのPSVANE 300Bである訳です。エレハモ300Bと比較すると、重心が下がり、音の粒立ちが細やかで、音圧感はエレハモよりも下がりますが、しっとりとした質感が大変好印象でした。この価格でこのクオリティは大いに賞賛に値すると思います。

続いて登場するのはGold Lion PX300Bです。元々イギリスでGold Lionブランド下で300Bは生産されていませんでした(少なくとも私は知りません)。そしてPXというプリフィックスは恐らくPX4,PX25などから引用されてものでしょう。つまりこのGold Lion PX300Bはニューセンサー社(NY)がアメリカでGold Lionブランドの商標権を入手し独自に命名したもので、最初に出てきたエレハモ300Bの上位球という位置づけと考えると理解しやすいかもしれません。

音質的にはエレハモよりも密度感、音圧感があり、闊達さが身の上の300Bであることが分かります。300Bと言うとクラシック向きで嫌いな方は茫洋としていてメリハリがない、というような事を伺うことも稀にありますが、このPX300Bはそういう要素は全くないと申し上げて良いでしょう。ジャズやロックにも好適な表現でした。

続いては当社オリジナル300Bの登場です。Prime300B ver.4が現行300Bのなかでどんな個性を見せるのか、私自身も興味を持って試聴に臨みました。
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過去手がけてきた300Bのそれぞれの個性を踏まえ、集大成として企画した300B(当社専売品)がこのver.4。メッシュプレートが特徴的な一品ですが、恐らく現行300Bのなかで最も太い音のする300Bといえましょう。

課題曲:ANIMA ETERNAモーツァルト41番第一楽章は重厚にしてスケール感の大きさが際立つ表現。弦のTuttiが実によくハモる感じを楽しめます。自分のなかではそれぞれの300Bの特質を理解したうえでこのPrime300B ver.4の音を評価してきたつもりですが、改めて自分の感覚が音での確認出来、Tさんの意見も全く同じでちょっと安心しました。最も300Bらしい300Bとしてこれからもご提供出来ればと思っています。

続いて登場するのは今回唯一の東欧製300B、JJ300Bです。
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この300Bは外見的にも従来の300Bとは異なり写真でも分かる通りひと回り大きくガラスも厚く、どっしりとした重量感のある球です。フィラメント定格が通常の300B=5V/1.2AのところJJ300Bは5V/1.4Aと少し大きめですが、この程度であれば電源トランスの過負荷になることは少ないでしょう。

SV-P1616D/300Bで聴くJJ300Bは独特な表現の球でした。言葉で申し上げるのは難しいですが、濾過された倍音とでもいいましょうか、聴感上の偶数次の倍音が多めで非常にシルキーなタッチで見通しの良い音と感じました。恐らくこれはガラスの厚みから来る振動のフィードバックによる影響かもしれませんが、他の300Bとは一線を画す表現であることは間違いありません。

続いては当社オリジナルの限定バージョンPrime300B ver.5です。
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これは先ほど出てきたver.4と同じメッシュプレートを持ちますがフィラメントの固定をウエスタン300Bと同じフック(吊り)形状としていると同時にガラス形状をベルシェイプ(洋梨型)とし、ガラスを薄くすることに成功。結果として300Bでは異例ともいえる高域の抜け,伸びがあり、音場的表現に長けている私どものスペシャル300Bです。価格的にはかなり高級ゾーンに入ってきますが私どもでは最も人気のある300Bで特に中,高級モデルで使って下さっている方が多い球です。

ver.4と比較すると端正で輝かしい音がする訳ですが、特に弦セクションの高域がスーっと拡がって抜けていく感覚と小音量時の再現性の高さが特筆に値します。TさんはSV-91B,SV-501SEに使って下さっているとのことでした。

そしていよいよ最後に登場するのが現行最上級の300Bとして異彩を放っているPSVANE WE300Bです。これは本家ウエスタン300Bの完全復刻を目指して製品化されたもので、ペア約90000円という現行300Bのなかで破格のプライシングですが、では実際音はどうなんだろう?ということでTさんも私も固唾をのんで音に集中しました。

結果は…正直言葉を失ったというのが正直なところ。ちょっと他の300Bとはレベルが違う…全く混濁した感じがなく倍音が解れていて実に響きが自然。世界がガラッと変わってしまいました。よくよく考えてみると本家ウエスタン300Bの最後の売価がペア定価88000円だったことを考えると中国製真空管もここまで高くなったかというのが偽らざる印象ですが、この音を聴くと認めざるを得ない何かがあることも事実。この球の開発時(2011年ごろ)、現地でその過程を見守っていた者としては”よくぞここまで仕上げた!”という賞賛を送りたいと思います。素晴らしい音でした。

…という訳で今回の”現行300Bナンバーワンはこれだ!”の一位,二位の発表はオンエアを待ちたいと思いますが(文面から透けて見えますけどね)、今回の2回シリーズはぜひオンエアを録音していただいて皆さんのリファレンスにして頂ければと思います。実はまだMUSIC BIRDの契約をされていない方にスペシャルなオファが出来ることになりました。詳細は5月下旬のお知らせになると思いますが、私の番組を一人でも多くの方に聴いて頂けるよう頑張りましたので、もう少しだけお待ち頂ければと思います。


by audiokaleidoscope | 2016-05-01 14:29 | オーディオ | Comments(0)

(4/29_1)現行ナンバーワン多極管はこれだ!

今回の”大放談”収録は現行出力管14種類の大競演!SV-P1616Dをテスト機として多極管を7種類,300Bを7種類用意し、私とゲストTさんの独断と偏見で現行球のナンバーワンを決めてしまおうという企画。放送は第一回(多極権編)が6/24(金),第二回(300B編)が7/8(金)の20時~22時です(翌週は再放送)です!
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SV-P1616D(多極管仕様)は6L6GC~KT150まで大半のビーム管,五極管を無調整で差し替え出来る自己バイアスアンプ。出力は6L6GCで25W前後,EL34からKT150で40W前後の出力が取り出せるUL(ウルトラリニア)接続のプッシュプル。定格出力の50%程度まではA級動作で出力よりも音質を重視した手配線のキット専売品です。多極管仕様は真空管別売で88,000円(税別)。6月末の出荷開始予定です。

よくオーディオ雑誌などで同種出力管の聴き較べ特集などが編まれることがありますが、書き方が曖昧だったり音を言語化するプロセスにどうしても無理があったりして、参考にはなっても決め手に欠ける、というお話をよく伺います。その意味でこの番組は実際の音の変化を皆さんのスピーカーでダイレクトに聴けるという点で画期的というか後にも先にも聞いたことがない最もリアルなオーディオガイド。リスナーさんからの感想メールも沢山いただけて出る側としても大いに励みであり、毎回この収録をとても楽しみにしているのです。

では番組を聴きながら一緒にこのブログを読んで頂くことをイメージしながら内容をお知らせしていきましょう。
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まずはTung Sol 6L6GC STR(ロシア製)から。6L6GCはKT88やEL34の陰に隠れて今一つメジャーではありませんが、このTung Solは非常に中庸の美を感じさせる音で高域の尖鋭感がなく、中域の量感も十分で非常に好印象。ジャンルを問わず楽しめる魅力的な球であることが分かりました。
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続いてGolden Dragon 6CA7/EL34 。EL34には太管と細管がありますがオーディオ用途では太管が使われる方が6L6GCと比較して若干モノトーン的な表現で若干音の粒立ちが大きめ。少し旧めのヴォーカル等をフルレンジスピーカーなどで聴くと渋さが出て良い雰囲気になるだろうな…という音でした。
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続いてGolden Dragon KT66 retro。これは英GEC KT66のレプリカバージョンな訳ですが、KT66というとスーパー6L6的な電気的性格を有しながら、その音は繊細にして上品。帯域、高域の開放感とレンジの広さに加え、音の粒立ちの細やかさが出てきました。聴感上のレベル(音量感)は僅かにEL34より下がるのですが、奥行感と繊細感が表に出てTさんがお持ちになってハーンのバッハ/無伴奏がとても良い感じで鳴っていて好印象でした。

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続いてはTung Sol 6550。6550というとKT88互換球という理解されている方が多いと思いますが、実際はKT88よりも最大定格が低く、音質的にも異なることを理解する必要があります。ひとことでいえばKT88よりもしなやかで弾力性のある音です。私どもでは定番化していませんがクラシックコンポーネンツでお借りしてきました。

音を聴いて気づくのはこれまで出てきた球と比較して最も大きな違いは低域の量感。グンと沈み込む感じはオーディオ的快感に満ちています。パワー感を殊更ひけらかすのではなく、スケール感を持ちながらも品位のある表現が印象的でした。ペアで1万円を切るお求め易さも魅力です。
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続いて登場するのはGold Lion KT88。SV-P1616Dの音決めはこの球を使って行ったこともあり、KT88らしさがよく出ました。多極管のなかでダントツの人気球な訳ですが音のエッジがシャープでハイコントラストな表現に人気が集まるのも頷ける音。リファレンス曲”ミスター・ボージャングル”のピアノがグッと前に出るとともにウッドベースのローエンドが曖昧にならずにクッキリと出る快感は他の球にはないものです。陰影感よりもステージの隅々にまで光を当てて細大漏らさず情報を拾い上げるキャラクターが人気の背景にある球です。
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残すところあと二つ。最も多極管らしい音のイメージをもつTung Sol KT120の登場です。スーパーKT88ともいうべき上位互換球です。注意すべきはヒーター定格がKT88よりも20%ほど大きいことで、KT88用に設計されたアンプでは使えない場合がありますから注意が必要です。ヒーター一本あたり2A以上流せるアンプ専用の球です。

音質的にもKT88の特徴を更に推し進めたもので駆動力も抜群。現代の低インピーダンス,低能率なスピーカーを鳴らすのに最適な球です。KT88との比較で言うとベースのボリューム感がグッと増え、余裕綽々という感じで大型スピーカーをスケール感タップリに風圧を感じる低域を楽しんで頂ける球です。
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そしてトリはTung Sol KT150。プレート損失なんと70W!現行多極管のキングです。KT120と同じスーパーKT88的ポジショニングでありながら実際の音はかなり異なります。極めて明晰で近い音を聴かせるKT88/KT120に対してKT150は空気感を含めた音場表現が実に素晴らしい。同じCDを聴いてもホールの天井が高くなって楽器の余韻が非常にリアルに聴こえる快感はKT150ならではのもの。KT150はその意味で他の多極管とは性格の異なる球と理解した方がいいでしょう。トリに相応しい音でした。

…という訳で縷々語って参りました現行多極管の聴き較べ。独断と偏見でナンバーワンはこれだ!と番組のなかで言い切った訳ですがTさんと私は一位が別の球。二位は同じ球という結果になりました。ネタバレになってはいけませんのでここでは触れませんが、OA後にでも改めて書きましょう。

今回SV-P1616D/多極管仕様を使って代表的な現行多極管を総まくりした訳ですが、改めて比較してみると私のなかでも幾つかの大きな発見がありました。番組収録というより試聴室で好き勝手喋っているような楽しさがありました。このあとSV-P1616D/300B仕様で現行300Bの一斉比較試聴になだれ込んでいきます。


by audiokaleidoscope | 2016-05-01 11:26 | オーディオ | Comments(0)

本ブログ掲載内容は私人の見解であり、(株)サンバレー(ザ・キット屋)の立場,戦略,意見を代表するものではありません。


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