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(4/23)今夜の”ようこそ!オーディオルーム”

二回ばかり少々堅苦しいネタが続いたので、今日はラジオ(ようこそ!オーディオルーム)の番宣です。先週ご紹介できなかったのですが、今月は土曜が5回あるので4月の後半枠は3回放送することにもなりますから、ちゃんと曲目をお知らせしたおこうと思います。

1.大橋慎が選ぶリクラシックリファレンスセレクション
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2. ようこそ!オーディオルーム特選”ジャズ名盤100”
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4. 懐かしのあのアルバム

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…今回とりあげるアルバムはこんなラインナップです。この番組も丸三年やらせて頂いて、音楽ジャンル別,楽器別などの特集をやったりゲストにお越しいただいたりして、その都度工夫をしてきたつもりですが、やっと何となく形が固まってきたというか聴いて下さる方の顔が見えてきたというか、年代だったり音楽的嗜好がどの辺に向いているか…ということが少しづつ見えてきた結果、今のスタイルに収斂してきたと言えるかもしれません。

クラシック,ジャズ,ヴォーカル,ポップス…単なる総花的ラインナップではなく、自分なりに時空を隔ててもなお輝きを失わない楽曲をピックアップしてリスナーの皆さんと一緒に楽しみたい、という想いで収録に臨んでいます。いつも会社の試聴室にお客さまをお招きして、お気に入りのCDやLPを聴かせて頂きながら”いいですねえ!!”と盛り上がるあの感じが少しでも放送で出せたらいいな、と思っています。それこそが番組タイトルでもある”ようこそ!オーディオルームに託した願いである訳ですから”。

そうそう!昨年出来なかった年末特番が今年復活することになりそうです。前回は地元のジャズ通にお越しいただいてブルーノートのオリジナル盤LPとハイレゾを同曲で聴き較べるという企画でしたが、今年はどんな内容にしようか、今から楽しみながら検討していこうと思っています。放送日時は12/31(土)21:00~23:00(予定)。紅白に負けずに頑張らないと!



by audiokaleidoscope | 2016-04-23 21:03 | オーディオ | Comments(0)

(4/21)自己バイアスアンプにおける出力管のペア性検証方法

前回、固定バイアス回路のアンプにおいて真空管の個体差(特定動作環境下におけるプレート電流のバラツキ)のチェック方法について述べましたところ、予想外の反響がありました。これは皆さんがいわゆるペア管をお使いになりながら実動作的にペア動作をしているかどうかに漠たる不安を抱いておられることの証左と思われます。

今回は自己バイアス回路のアンプで実際出力管がどんな動作状態にあるかを知るための簡易測定方法について考えてみましょう。たまたま実例としてSV-38T(こちらに画像があります)での検証事例がありますのでご紹介します。

自己バイアスはペア管であれば基本的に調整を要さずに使用できる点から非常に合理的な形式といえます。一種の自己帰還動作(プレート電流が流れようとすると自動的にバイアスが深くなる動き)をすることからオートバイアスとも言われます。固定バイアスアンプで観測される真空管の個体差よりも自己バイアス回路で使用する方がバラツキが減少するのはそのためです。

今回お邪魔したのはMさんのリスニングルーム。私どものアンプの殆どを所有され、多くの機種をヴィンテージチューブで鳴らしておられる方です。今回念願のWE284D (1944)を入手されたのですが入手先が一本づつバラバラなので動作上問題ないか(ペアチューブといえるか)について検証を行ったという訳です。
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これがMさんがずっと探しておられたWE284D。ゲッタの状態もよく実通電時間は僅かと思われます。オリジナルの軍箱に入っていました。
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今から70年前に製造された球です。さて実際に動作はどうなんだろう?…Mさんが心配されるのも無理からぬこと。
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これが284Dと一緒に入っていたデータシート。留意すべきは一般的に845系のプレート損失は100W(Hundred Watter)という認識をされている方もいらっしゃると思いますが、WE284Dは85Wである点。15%ほど最大定格において低い球であるということを理解して検査に臨む必要があります。

では自己バイアスアンプでの出力管の挙動を測定するか、基本的に三極管アンプではハムバランサーの中点電位、多極管ではカソード電位をそれぞれ対アースで測定することが基本になります。測定レンジはDC(直流)にします。では実際にSV-38Tの回路図(抜粋)を見てみると
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基本的には上述した通り、ハムバランサーの中点DC電位を図って自己バイアス電圧を生成している抵抗値で除算すればプレート電流が計算上出てくるということになります。
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実機で言うと中央少し右にある緑のホーロー抵抗がカソード抵抗(三極管ですので実際にはカソードはありませんが、一般的に三極管/多極管に共通してこう呼びます)です。この上側の端子が測定部位となります。845アンプのように内部に1000V近い電圧が発生しているアンプでは特に注意が必要で、両手でテスターの端子を持つことは避けたいもの。今回は対アースの電位を診る訳ですので、マイナス端子はスピーカー端子のコールド側(黒)に締めこんたうえで手袋で自分を絶縁し、片手で作業します。こうすることで感電リスクは著しく低下します。
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測定時の態勢です。球が真下を向いていますね。トランスを下にしてアンプの内部がこっちを向くように斜めに立てかけるという方も多いと思いますが、直熱三極出力管がもともと横倒し状態で使用されることを前提としていないのでお奨めしません(多極管はOKです)。なお845,300B等のストックをお持ちの方は箱に入った状態で保管されていると思いますが、この場合も立てた状態が基本です。長期間横倒しにすることでフィラメントの撓み(たわみ)クセ等が発生し、通電時に電極間のレアショート等のトラブルが発生することがあります。

もう一度うえの回路図を見て下さい。被測定箇所(112V)が意味することは何かを説明しますと、自己バイアスアンプのプレート電流を求める計算式は

プレート電流[mA]=カソード電圧[V]÷カソード抵抗値[Ω]

となります。SV-38Tの845プレート電圧は945Vで設計されていますのであてはめてみると

112V÷1.5kΩ=75mA

となり、SV-38Tは設計上のプレート電流[Ip]=75mAであることが分かります。ここでもう一点、それぞれの真空管の最大定格値に対する真空管の余裕度を見ていきましょう。車で毎日レッドゾーンまでエンジンを回していれば当然消耗が早くなるのと同じで、真空管も最大定格に対して出来れば20%程度(以上)の余裕が欲しいところです。この余裕度のことを”ディレーティング”と呼びますが、それぞれの出力管の最大定格(プレート損失)に対して実損失を計算するためには

実損失[W]=(プレート電圧-カソード電圧)[V]×プレート電流(A)

で求められます。SV-38Tに関していえば

(945V-113V)×0.075A=62.5W

となり845の最大定格100Wに対して30%以上の余裕があることが分かりますね。多極管の場合はスクリーングリッド損失も加味して考慮する必要がありますが、一つの目安にはなります。

では早速MさんのWE284Dを実装して測定してみます。監視項目はカソード電圧112Vに対してどの程度のかい離が発生するかということですが、

No.1:135V=プレート電流90mA,プレート損失73W(ディレーティング14%)
No.2:145V=プレート電流97mA,プレート損失78W(
ディレーティング8%)

となり、実動作上のプレート電流のバラツキは10%未満ですのでペア性に問題がないことが分かりました。ただ845のTypical値よりもかなりプレート電流が多めに流れている点が気になり、別サンプルとしてMさんがお持ちのRCA845(1941)でも同様の実験を行ってみました。
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デートコード1941年5月。こちらも非常に良好な状態です。WE284Dと同じ方法で測定してみると

No.3:118V=プレート電流79mA,プレート損失65W(ディレーティング35%)
No.4:116V=プレート電流77mA,プレート損失64W(
ディレーティング36%)

となり、理論値に近い動作であることが分かりました。では何故WE284Dの方がRCA845よりも電流が多く流れるのか、基本的には球の内部抵抗(Rp)が低い球の方が電流効率が上がる訳ですが、データシート上はWE284Dが1900Ω,RCA845が1700Ωとなっており、実測値と符合しないところが不思議です。ただWE管は製造時期(ロット)によってかなり設計値に差異(変更)があることは経験からも分かっておりますので、実内部抵抗がかなり低めであろうことが推測される結果となりました。

いずれにしてもMさんのWE284D,RCA845は845の規格内に動作が収まっており、且つSV-38Tでも問題がないことが確認出来たことは喜ばしいことした。皆さんも是非自分のアンプで、実際球に何mA流れていて損失が何%か調べてみてはいかがでしょうか。音と球の動作の関係を知る一つの手掛かりになるかもしれません。




by audiokaleidoscope | 2016-04-22 12:44 | オーディオ | Comments(4)

(4/20)マッチドペアの意味

最近多いのが”SV-○○は真空管を替えた時に調整が必要なんですか?”というお問い合わせ。回路的に言えば自己(セルフ)バイアスは無調整、固定(フィクスト)バイアスは要調整となる訳ですが、キットをご自身で組立てられた方は分かっていても、誰かから譲ってもらった、或いは中古で買ったという場合などは自分のアンプが無調整なのか要調整なのか分からないのは無理もありません。

ヴィンテージアンプの中には”調整出来ない固定バイアス”もあったりします。これはどういうことかというと2組の出力管の動作のバランスをアンプ本体で調整するのでなく、真空管そのものによってマッチングを取る方法です。昔は真空管は値段も安く半ば消耗品のようなものだったので沢山の球から順列組合せを変えて動作が最適となる組み合わせを見つけることも容認されたのかもしれませんね。オリジナルのMC240やMC275などがその代表例です。

少々厄介なのが4本揃いの出力管を買ってくればドンピシャになるかというと残念ながらそうではないこと。厳密にいえば選別時の動作条件と皆さんのアンプの動作条件が一致すればOKと言える訳ですが、そんなことは稀で多くの場合選別条件と実動作条件は異なっているのです。メーカーによっては真空管の選別と破壊試験を兼ねて行う場合があり、極端にプレート電圧を上げ,電流的にも最大定格に近い環境でマッチングを取っている場合もあります。条件が違っても一定範囲内であればいいのですが、オーディオで使われる標準的条件(Typical)と最大定格(Maximum Rating)に近い条件では測定値もかなり異なることから、やはり固定バイアスアンプの場合は時間をかけて調整を行って、アンプが最良の条件で動くようにするのが使う側の愛だと思います。車のタイヤが4本とも空気圧が違っても真っ直ぐ走りませんからね。

最近こんなことがありました。Gold Lion KT88を2ペア欲しいというお客さまからの電話です。この球は現在KT88系で最も人気がありますし、造りも綺麗な球ですが、お話を伺うと”この球の音が好きで使ってきたが直ぐに音が歪っぽくなる。手元には使えないGold Lionが12本ある”と仰るので、”Gold Lion KT88は決してそんな悪い球じゃないですよ。それにすぐダメになるような球でもありません。ウチから買うのは何時でも出来ることですし、他の店で買った球でも良いですから、まず一度手許にある12本を私のところへ送って下さい。本当に球が劣化しているかチェックしますよ”と申し上げました。私どもからお求めいただいて1年でダメになったとお叱りを頂くことも辛いですし、実際そんなヤワな球じゃないという信念みたいなものがありましたから。

数日経って北海道からお話の通りGold Lion KT88が12本届きました。買った店が付けたと思われる選別データが外箱に貼ってあるものもあります。見たところゲッターもしっかり残っていますし、外観上傷んでいる様子も全くありません。球と一緒にお使いのアンプの回路図が同梱されていますので見てみると…。
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これはスゴい!KT88のプレートが570Vと超高め。固定バイアスで-C電圧が75ボルトと超深め。設計意図としてはアイドリング電流を絞ってB級動作に近いオペレーションで、音質よりも出力を狙ったものでしょう。恐らく100W/ch近く絞りだそうとしています。ただ、この条件だから直ちに球が壊れるということにはなりません。お送りいただいた球を一本づつ測定してみることにしました。

測定器は使いません。まずSV-128Bを使ってそれぞれのKT88の健康度を診てみようというものです。まずはデモ機で使っているGold Lion KT88でIp=60mAになるようなバイアス調整を行います。次に左chのKT88はそのままにして右chのKT88を一本づつお預かりした球に替えていくのです。こうすることで、球によってデモ機用のKT88よりも電流が多く流れたり少なく流れたりすることが観測できる訳です。アンプで条件設定しておいて球を差し替えて挙動を見る。まさに自分のアンプでしか出来ない芸当です。

確かに目いっぱいの条件で球を使い続けていれば消耗速度は上がるでしょう。そしていずれ”エミ減”(定格電圧を供給しても適正電流が流れなくなる状態)になります。いわばタイヤがスローパンクチャーになっていると考えると分かりやすいかもしれません。
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写真では50mAの電流が流れていることがテスターの値から読み取れます。この電圧は一次側(AC100V側)の変動によって絶えず揺さぶられていますので、そんなにシビアに見る必要はありません。今回は測定条件を揃える意味で通電後120秒後の電圧を取得しました。また真空管には個体差があります。大型真空管になると同条件でもプレート電流の流れ方がプラスマイナス50%ぐらいバラつく球もあります。だからこそマッチドペアという概念が必要になってくる訳ですが、今回診させて頂いた球は実測値で50mA弱~70mA弱の範囲内に全て収まっており、正規分布していました。つまりお客さまが仰る”音が歪っぽい”というのは少なくともKT88に依存していないことがデータから証明されたと言っていいでしょう。

では原因は何か…それは分かりません。動作条件なのか、ほかの球あるいはパーツの劣化なのか。お客さまにこの事をお伝えすると、じゃあ、SV-8800SEを買うよ”と仰いましたが、先ずはアンプ自体がメインテナンスが必要な状況にあるかどうかをしっかり見極めてからでいいんじゃないですか…と申し上げた次第です。

真空管アンプはちょっとした使いこなしさえ理解出来れば半導体アンプよりも遥かに長持ちするものです。大切なのはまず自分のアンプが自己バイアスか固定バイアスか確認して、固定バイアスならば調整がちゃんと出来ているか確認することだと思います。オーディオは一生出来る素晴らしい趣味。使いこなしてこそ真価が分かるというものです。



by audiokaleidoscope | 2016-04-20 14:30 | オーディオ | Comments(2)

(4/16)初めての真空管アンプ選び~開放日編

南の地が揺れています。スピーカーが落下した、真空管が割れた、スクリーンが落下した…幾つかの被害報告が仲間から届くも今のところ皆無事のようで、それが何よりもの救い。どうか一日も早く大地が鎮まりますように。そして安らかな日々が一日も早く戻りますように。

そんななか、月一回の開放日。最初は奈良から車でいらっしゃったMさんと会社の先輩。真空管アンプは初めて。ハンダ付けの経験はあまりないが自分で作ってみたいと仰る…まさにこういう方をサポートして仲間を一人でも増やしていくのが私の務め。KT88ppをお使いの先輩のアドバイスのもと試聴が始まりました。試聴に使ったスピーカーは目下沸騰中のReference35

Reference35はVienna Acouctic用に供給されているユニットをベースにモディファイされたものでネットワークとエンクロージャーは完全オリジナル。見かけ上のインピーダンス,能率は決して高くないものの真空管アンプで鳴らすことを前提に組み上げた私どもの文字通りリファレンススピーカーの一つです。2月の試聴会でトラブルが発生したのが不幸中の幸いで問題点発見し対策することが出来、6月の出荷開始に向け目下工場はフル稼働中です。

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今さら... と言われるかもしれませんが、ご存じない方がいらっしゃるかもしれないので改めてご紹介。Reference35のようにバイワイヤリング対応のスピーカーを最も良い音で鳴らす為の方策が”パッシブバイアンプ”です。詳細はリンクのページを参照頂ければと思いますが、元々の音(スピーカーの原設計)を活かしながら高音質化(自分の環境に最適なバランス調整できる)点において理想的な方策な訳ですが、シングルワイヤーで聴く場合は写真のように接続します。これは”たすきがけワイヤリング”と言ったりしますが、よく見る低域側に給電してジャンパープレートを介してツィーターも鳴らす方法よりも音の鮮度感において有意な改善が見られますので、お試しいただくと良いでしょう。

話は戻ってMさんのアンプ探し。まずは製作の再現性(成功率の高さ)からTU-8200SVをお奨めしました。TU-8200SVはベースモデルTU-8200で標準装備されている6L6GCを人気球KT88に最初からアップグレードした別注モデルな訳ですが、シャープなエッジ,コントラストの高い鮮度感を楽しむことが出来るローコスト,ハイパフォーマンスなプリメインアンプです。もちろん真空管の差し替えも出来ますが、KT88から下位の球に差し替えることは少ないでしょうから、これ一台あればノンジャンルで音楽を楽しめ、スピーカーも選ばない自由さがベストセラーたる最大の要因です。一枚基板で製作も容易ですから”はじめの一歩”には最適です。

真空管アンプには三極管/多極管とシングル/プッシュプル,2つの大きな分水嶺があり、これをどう選ぶかで結果が大きく変わります…というお話をさせて頂いて、ではシングルの三極管を…ということになり、登場したのがSV-S1616Dです。これは作るのはTU-8200SVと較べるとはるかに手数が多いですが、真空管アンプづくりの原点と嘗て多くの自作派が必ず通った道であることをお伝えし、いい機会なので…ということで開腹して内蔵を見て頂きました。

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右がS1616D(300B仕様),左がもうじき正式発表予定のP1616D(KT88仕様) 。”出来るのかなあ?”と心配顔のMさんでしたが、昔は基板のキットなんてなかったし、みんな悪戦苦闘しながらやったもんです。昔と違って今は最悪上手く音が出なくてもちゃんと私たちが直せますので…ということをお話しました。あとは”気概”(気合い?)の問題かもしれませんね。昨年12月に出たばっかりのS1616Dですが、ブッチ切りで2015年度最多出荷となりました。如何にこの世界観を待っていた方が多かったかの証左だと思います。

S1616Dで最初聴いたのが300B仕様。立ち上がりの早くキレの良かったKT88から一転、風船が膨らんだような量感と響きが残る豊かな間接音成分が特徴的な300BのアジをMさんはすぐに理解できたようです。よく”叩く音”(ドラムスのアタックなどの表現)向きの多極管と”擦る音”(弦楽器のボウイングなど)向きの三極管なんて言ったりもしますが、内声部の密度感や陰影感(三極管)を重視するか、エッジやクリアな抜け(多極管)を重視するかは優劣や向き,不向きを超えて完全に好みの世界と言っていいでしょう。

300B仕様と2A3仕様をS1616Dで聴いてみて、Mさんは2A3のザックリした音触(音にケバが生えたようなリアリズム)が気になった様子。中域の厚み,リアリズムこそが三極管の妙味である訳ですがキット標準の2A3(Golden Dragon 2A3 premium)を使えば出力的にも十分でReference35も十分ドライブ出来ることが分かり、作り易さを取るか、音を取るかで今後検討されることになりそうです。

昨日第一報をお伝えしたSV-396EQ(予価:球つき完成品で税別16万円)については使用真空管5670がWE396A互換であることからのネーミングであることをお伝えしました。
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5670はMT電圧増幅管のなかで最も厚みのある、言い換えればリッチな音の球。もっと注目されてしかるべきでしょう。更に肝のMCトランスは橋本電気HM-3を標準装備ですのであとは音色のチューニングが決まれば正式発表出来る日も近いと考えています。

そんな訳でいつものメンバーに加えて新しい方も沢山お迎えしながらあっという間の一日だった4月の開放日。真空管アンプってどんな音がするのかな?という方からマニアックなチューンアップの方法まで、どんな内容にもお応えできるように準備していますので、まだ行ったことがない、という方のご来場をお待ちしています。勿論道場破り(自作機器や他社製品との聴き較べ)も大歓迎!次回も是非お待ちしています!!



by audiokaleidoscope | 2016-04-17 12:10 | オーディオ | Comments(0)

(4/15)時にはシェフのお任せを…

金曜の夜はなぜか嬉しい…体はクタクタでも、仮に次の日が仕事であったとしても一週間張りつめた何かから解き放たれて自分の時間を過ごすひと時がこの上なく大切なものに感じられるプライムタイム。例によって今日も夜更かし、というか間もなく夜明け。

最近は試聴室でこれが鳴る日が多い…という試作機をご紹介。
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夏に発売を予定している新しいフォノイコです。SV-284D(845シングルステレオ/バランスドシングルモノ)をリリースしたのが去年の9月。元々はパワーアンプとスピーカーの間に入れる”ブースターアンプ”という現行オーディオでは他に例を見ないフォーマットでデビューした後に、284Dを直接ドライブ出来るだけでなく、汎用プリとして最高峰を目指したSV-300LBを投入したのが先月。284Dと同じくらい個性的な当社初の300Bを使ったプリとして高い注目を集めることが出来ました。

パワー,プリと来て次に来るのは当然フォノイコ。300Bプリと845パワーに名前負けしない球を使うだけではなく、音質的にも際立ったものでなければいけません。現在そのチューニング中という訳。6月の試聴会までには練り上げて正式発表に漕ぎ着けたいと考えている284Dシリーズの棹尾を飾るキーモデルに仕上げたいもの。品番”396”の意味はいずれお知らせ出来る日がくると思いますのでお楽しみに!

オーディオは組み合わせの妙を楽しむもの。いわばアラカルト的な面白さこそがオーディオともいえる訳ですが、時は純正組み合わせというか、シェフのお奨めコースもご賞味あれ!このお肉にはこのワイン…そんな一例としてSV-310EQ/SV-310/SV-91Bの組み合わせのように284Dシリーズもサンバレーのリファレンスとして大きく育ってほしいものです。

そういえば今日、Oさんの家で拝見したTrusonicのスピーカー。ユニットは206AXA(15インチ同軸)でしょうか。
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LM86B(5/13オンエア)との2ショットを撮らせていただきました。是非またゆっくり聴かせて頂きたいなあ…と思っていたら外がすっかり明るくなっているのに気づきました。これからシャワーを浴びて会社へ行って月イチのショールーム開放日。良い一日になりますように!



by audiokaleidoscope | 2016-04-16 05:29 | オーディオ | Comments(0)

(4/7_2)いまCDを一番良い音で聴くための幾つかの選択

収録2本目は久々のデジタルコンテンツ。ハイレゾという新しい文化が特殊なものではなくなった現在でも、私たちが一番所有し、これからも最も数多く流通していくに違いないCDというフォーマットに改めて注目し、今こそCDを一番良い音で聴く方法を一緒に考えてみようじゃないか、という企画です。

オーディオは一般に”出口ほど音が変わる”と言われます。オーディオの主役はスピーカーで、これを車のシャーシに例えれば、パワーアンプはエンジン,プリアンプはトランスミッション…という風にチューニングが進められて一つのパッケージとしてのオーディオシステムが完成される訳ですが、例外的にLP再生におけるカートリッジの選択がシステム全体の成否を分けるように、デジタル再生においてはD/Aコンバーターに何を選び、どう使うかが極めて大きな分岐点となります。

今回はスタジオ常設、SV-192PROを使ってCD高音質化の3つのアプローチについて実際OAで音の違いをリアルタイムに体験していただくことにしました。曲の再生中にアサインを変えて音の違いを確認するなんて、今まで誰がやったでしょうか。今まで何度となく比較試聴をやってきた私も少々緊張が走る収録となりました。
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まずはCDスルー(バイパス)と192kHz/24bitのアップサンプル時の音質比較です。今回のリファレンスソースは高音質で知られる”MA recordings"(間レーベル)サンプラーCDをリファレンスに使用しました。まずバイパスでトラック1を再生…再生中もマイクを生かしていただいた状態で曲間で”アップサンプリングします”、”バイパスに戻します”を何回か繰り返します。

この差はSV-192SあるいはSV-192PROをお持ちの方は日々その違いを聴いておられる訳ですが、スタジオのモニターでも明らかな音の違いを確認できました。いや音が変わるというのは正確ではないかもしれません。エアが変化するいうのか、音の拡がる空間の大きさが格段に変化するというか、いわゆる奥行感の再現において誰もがアップサンプル後の再生音の方がオーディオ的に優位であることを理解頂けると思います。これはヘッドフォンでなく、是非スピーカーでチェック頂ければ幸いです。情報量が増えて音量が1dBくらい上がって聴こえるほどの差異をご確認いただけるでしょう。勿論電気的なレベルに変化はありません。
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続いてはマスタークロックジェネレーターが登場します。マスタークロックというとその時点で意味不明と言われそうですが、要はデジタル機器内部で時間軸を制御している水晶発振子には一般に10ppm~数十ppmのゆらぎを持っています。SV-192PROでは数ppm以下の選別水晶を採用していますので、一般のデジタル機器より遥かに有利な訳ですが、今回持ってきたマスタークロックMC-3+(MUTEC)は公称精度0.1ppm以下ですので、この差を大きいと見るかどうかはシステムのトータルレベル如何に掛かってくる筈。カメラに例えると僅かにずれていたフォーカスが完全に決まった時の快感と言いますか、微かな音の曇りや滲みが除去されて一層クリアになる効果はシステムレベルの向上と共に無視出来ないファクターになる筈です。Tさんはスタジオのプレイバックを聴かれて”柔らかくなった”と仰いました。いわゆるデジタル臭さ(尖鋭感)が低減された結果といえるかもしれません。

余談ですがマスタークロックを使う場合のノウハウとしてソースの周波数の整数倍クロックにアサインすることが重要です。MC-3+を使う場合、CDであれば44.1kHzの4倍である176.4kHz。48kHz系の音源(例えばハイレゾ)では192kHzを選ぶことによって最良の結果が得られます。
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そして最後の音質向上策はバッファ段の真空管の交換。元々SV-192PROは完成品でご提供しているものですし、搭載されているECC82/12AU7はノイズ,ゲイン選別された球を使っていますので、中途半端な球であれば替えない方が良いとも言えますが、今回は珠玉のCV4003で聴いて頂くことにしました。

Tさんが選んだのはアリス=紗良・オットのピアノ,私は諏訪内晶子のヴァイオリンで総仕上げの音、つまりマスタークロックあり、アップサンプリングあり、CV4003仕様で聴く極上の音はいわゆるCDの音のキメを整え、音のヘッドルームを上げ、更に奥行き,拡がりを改善した一つの終着点ではなかったかと思います。

デジタルオーディオにおける危うさは音質でなく量子化レート競争が主体になっていること。現在の主流は192kHz/24bitですがR&Dレベルでは768kHz/32bit,11.2MHz/1bitに対応したチップも出始めています。この収録の最後に参考試聴として
CD音源を768kHz/32bit,11.2MHz/1bitまでアップサンプリングした音を聴いて頂きます。では音はどうなんだろう…これは聴いていただく皆さんの判断に委ねたいと思いますが、理論値よりも音楽性の方が遥かに重要であることを開発側の私どもは決して忘れてはいけないということを最後に改めて確認できた収録でした。

オーディオは決して特性だけで語れない…それが今回の結論であったかもしれません。OAは6/10(金)20時~です。是非お聴きください!


by audiokaleidoscope | 2016-04-09 05:23 | オーディオ | Comments(0)

(4/7_1)英国系名出力管の競演

昨日からふたたび東京。まずは神楽坂で某プロジェクトのキックオフミーティング。成就すれば、私がキット屋というビジネスモデルではお見せできなかった別の一面(成果物)を年末にお見せできるかも…。新しい何かを始める時に乗り越えなければならない様々な懸案があるのは当たり前。それをリスクという言葉で正当化して逃げることも簡単。要は”何が問題か”ではなく、どうやったら出来るの?”というマインドにかかっている訳で、今回の案件もそこが成否を分ける気がします。期待して下さい。

98年以降、独立系ネット通販という形態でやってきた私たちの大きな礎であった旧店主日記を失って4年。一時は失意のどん底にいた訳ですが、逆にこれをきっかけに自分に手を差し伸べてくれる人たちの存在を知るきっかけにもなりました。MUSIC BIRDの番組もそう。今から3年半くらい前?…”放送で番外編店主日記みたいなことやってみませんか?”と特番の枠をいただいて、それが一つのきっかけになってレギュラー枠を頂けるようになりました。今回もそんな”拾う神”から頂いたチャンスを無駄にしないよう収録に臨みました。
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今回のテーマは”英国系名出力管を聴く”というテーマでKT66,KT88,PX25の魅力を掘り下げようという企画。ゲストはいつものTさんです。前回LM91A,LM86Bで聴いたアメリカンシアターサウンドの流れとは一線を画する品格を感じさせるブリテッシュサウンドを満喫いただけると思います。OAは5/27(金)20:00~です。

まずはKT66。突出した個性はありませんが中庸の美を感じさせる破綻のなさが魅力の球です。アンプはSV-4(製造終了)を選びました。
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イギリスを代表するアンプQUADIIをリスペクトし私どもの味付けで作り上げたKT66プッシュプル。とりわけ弦の表現の美しさが魅力の球です。300Bと比較すると全体に端正で音の輪郭も明確。それでいて耳に引っ掛かる尖った感覚は皆無で長く聴き続けられる落ち着いた音のアンプです。最初は標準球(ロシア/中国混成)で試聴しました。続いてTさんが日頃自宅でSV-4用に使っておられるGEC KT66(1976)に載せ替え。
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GEC KT66は現行球よりも中域的で円やかで実にエレガント。ビーム管はエッジが立ってシャープという先入観を覆すような円熟の音を聴かせてくれました。往年のQUADもかくや…という美音が実に印象的。

続いて登場したのはSV-128B
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このアンプはKT88/KT120/KT150の限界性能を引き出すべく開発したもので、殆どの方がKT120あるいはKT150で聴かれているアンプです。その力感漲ったハンマーを打ち下ろしたようなパワー感は並みのプッシュプルアンプも蹴散らすようなすさまじさですが、実はKT88で鳴らすと全く別の一面が現れます。このアンプは内部でB電圧を切り替えられるようになっていてKT120/KT150用のオペレーション(+B=430V)とKT88用のオペレーション(+B=400V)で音そのものが大きく変化します。今回は目下大人気、Gold Lion KT88で試聴してみました。バイアス調整はKT88の標準値65mAに設定。

Tさんも”SV-128Bってもっと強い音だと思ってましたが意外ですねえ”と仰るほど鷹揚で伸びやかな音。一般的なKT88シングルの倍(以上)の出力的余裕も然ることながらローレベルの解像度の高さが番組でも感じて頂ける筈です。
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ついでTさんの GEC KT88(1978)にチェンジ。日頃SV-8800SEでバリバリ鳴らしておられるという常用球ですがアンプに実装してバイアス調整してみると極めて良好なペアであることが分かり、さすが全盛期に作られた球は違うね!という一幕も。

GEC KT88はSV-4におけるGEC KT66と同様、一番違うのは音の深み。清々しさと共に見通しの良い音場が心地よく、どちらか言えばパワー一辺倒で使われることの多いKT88とは異なる別の一面を見せてくれました。初段管EF37Aは英国版310Aとも言われる名球。今は安いですが10年後,20年後にはトンでもない値段になっているかもしれません。日本ではあまり作例のない球ですが要注目であると申し上げておきましょう。

最後に登場するのはVP-2500SE(製造終了)です。このアンプ、私がオートグラフを一番良い音で鳴らそうと思って企画した代物で当社で手掛けたアンプのなかで最も典雅な音を聴かせてくれるエレガントなアンプです。
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プッシュプルでなく敢えてパラシングルにしたのもPX25がシングルオペレーションの時に出す冴え冴えとした透明感と奥行感を大切にしたかったから。そしてモノラルにしたのは音場的表現を完璧にしたかったから…そんな一品。LM91Aのような濃厚さはありませんが、喉ごしの良いシャンパンのような爽やかな音に英国系スピーカーユーザーの皆さんから大きな支持をいただきました。

最初は標準球(中国/チェコ混成)で試聴したのち、初段をMullard CV4003へ。ECC82/12AU7系のハイエンド球であるCV4003によってVP-2500SEの品格が更に高まるのを是非OAでも体験して下さい。収録後のプロデューサーが”音にも土地柄なんていうのがあるんですね”と仰っていましたが、まさにその通り。そして更に重要なのは、その個性を十分理解して、その持ち味を十全に引き出せるような環境を用意する(回路設計を行う)ことです。

人もオーディオも同じ…こう動け!って押さえつけても良さは出ません。その人なりモノなりの魅力がどこにあるのか…今回の収録では、或る意味音というよりスピーカーやソースも含めた使いこなしの妙にまで踏み込んだ内容といえるかもしれません。



by audiokaleidoscope | 2016-04-08 08:16 | オーディオ | Comments(0)

(4/2)今日のようこそ!オーディオルーム

3年目を迎えたようこそオーディオルーム。変わらず今回もミキサーアウトにSV-192A/Dを接続し、真空管のオーバートーンによる高音質源をノンジャンルでお届けする音楽ファン,オーディオファンのための60分です。

今回の構成は…

・スペシャルピックアップアーティスト: Carol Kidd
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・ようこそオーディオルームが選ぶジャズ名盤100(新コーナー): John Coltrane

・ハイレゾ新譜コーナー: 溝口肇

・懐かしのあのアルバム: TOTO

今回も曲良し,音良しのひと時を是非お楽しみ下さい。PCで聴かれる方はこちら、スマホの方は新しくなったアプリをご利用頂ければ幸いです。では午後10時にお会いしましょう!
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by audiokaleidoscope | 2016-04-02 09:57 | オーディオ | Comments(0)

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