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(11/29)蓼科へ

店舗を持たない通販稼業…店がないなら自分が店になろう、と思って幾年月。今まで何百回となくお客さんの家をお訪ねし、音を聴かせていただいてきました。

今日もそんなリスニングルーム訪問。真空管オーディオフェアでご縁をいただいたWさんの別荘にお邪魔してきました。場所は蓼科(長野)です。
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中央高速諏訪ICを下りてビーナスラインを上がっていくとドンドン景色が変わっていきます。Wさんの別荘地は標高約1300m。澄み切った空気の丘陵地に建つ瀟洒な洋館です。
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外は摂氏数度という寒さながらWさんの部屋は暖かく快適そのもの。グリーンとブラウンで統一された広々としたリビングは北欧の雰囲気。
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Wさんの休日のためのオーディオセット。従来単独でお使いになっていたマッキンのプリメイン(MA6800)のプリアウトから私どもの真空管パワーアンプに接続する方法です。スピーカーはTADのユニットを搭載した国産のハイエンド機。
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左からSV-8800SE(KT120仕様)そしてSV-91B。Wさんはパバロッティの大ファン。声の質感に大変こだわりをお持ちで、以前から真空管アンプを使ってみたいと思っていらっしゃったそう。

SV-8800SEのKT88とKT120比較で言うと、このスピーカーではKT88の方が高域の倍音の絡み合い方が複雑で、やや賑やかに鳴る感じであるのに対しKT120はエッジがクリアになり、パバロッティの声が伸びやかに部屋全体を満たす感じが爽快そのものでした。対して91Bは300Bならではの量感と厚みで小音量時のリアリティはサスガ!という感じです。

Wさんは”アンプを真空管にしたら今までの音にヴェールが一枚被っていることが分かりましてね。やっぱり音の鮮度が違うんです。これでスピーカーをタンノイのウエストミンスター辺りに替えたらどうなるんだろう、と思っちゃいますね”と仰っていました。このインテリアにウエストミンスター…さぞピッタリだろうな、と思いながらWさん宅を後にしました。今後Wさんの音がどう変わっていくかがとても楽しみです。

考えてみると、キット屋に店はなくても全国津々浦々に何千という皆さんのリスニングルームがあり、私どものアンプやスピーカーが今日も音楽を奏でている…言い換えれば日本中にキット屋ショールームがあると言えるのかもしれません。そう考えただけでも嬉しく誇らしい気持ちになります。
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Wさん宅を後にして目指すは女神湖。今から30年弱前オープンに関わらせて頂いたリゾートホテルをちょっと覗いてみようと思ったのです。当時このプロジェクトで私が担当したのは調度品類のセレクト。カナダ人の空間プロデューサーを招き、当時まだ一般的でなかった長期滞在型リゾートの走りとも言える施設として大いに注目を浴びた場所です。

変わらない外観。まさか当時と同じ内装である訳がない…と思いながらも、ひょっとして…という期待がなかったと言えば嘘になりますが、あいにく冬のハイシーズン前の改装中で閉館しており、中には入れなかったのが残念でした。ただ年内もう一度Wさん宅を訪問させていただく予定ですので、タイミングが合えば27年前に時計を巻き戻して泊まっていこうかな、とも考えているところです。もういちどWさんの音を聴かせていただくのと同じくらい楽しみです。



by audiokaleidoscope | 2015-11-29 22:51 | オーディオ | Comments(0)

(11/28)楽しかったプチオフ

土曜の午後、第二で行われたプチオフのレポートを…。
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元々は東京のFさんSV-300LBの二次試作(量産仕様)の音を聴きたいと仰ったので、いい機会だから皆で集まらない?と近場の仲間にSNSで呼びかけたところ、ちょっとしたオフ会みたいになったという訳です。
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これが今日の主役。SV-300LBの二次試作です。初段管をEF86→12AT7(パラ)に変更。出力トランスのプライマリを4kに上げて更にドライブ力と300Bらしい厚みと音色の豊潤さを狙った私ども初の300Bプリです。
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後ろの方では交流(雑談)の華ひらくなか、Fさんはオートグラフの前に鎮座し、非常に真剣にSV-300LB+LM91Aの音を聴いておられます。最初はWE300B,そして標準仕様のPSVANE 300Bに替えて試聴。解れた中低域の厚みを感じるWE300Bに対してクリアで軽やかなPSVANEにFさんが”これ、いいじゃない!”とひと言。

プリで真空管を替えてこれだけ音が変わるというのは、私もSV-300LBが初めてですが、WE300B的な太い倍音が好みであればPrime300B ver.4、繊細でスカッとした音を狙うのであればPSVANEが良いでしょう。今回はプリ/パワーとも300Bでしたが、直熱三極管パワーアンプとのマッチングが極めて良いプリになりました。
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音を聴きながら自己紹介や近況報告などで盛り上がってます!オーディオという共通の趣味で繋がる嬉しさ、楽しさを皆が満喫しているよう。
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かと思えば、Tさんはご自身のLPをじっくり聴いていらっしゃいます。フルニエの”白鳥”素晴らしかったですね!
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こんな刺客も!フルデジタルアンプVS真空管アンプの一騎打ち!!スッキリと整理された音場が現れてオートグラフの違う一面を垣間見た気がします。ずっと前に使っていたムンド29.4にタッチが似ている気が…。暫く預からせていただいて久しぶりに非真空管の音を味わってみようと思っています。

あっという間の4時間が過ぎて楽しいひと時も終わってしまいました。また皆で集まりましょう!!



by audiokaleidoscope | 2015-11-29 12:57 | オーディオ | Comments(0)

(10/23)差はローレベルの再現性に現れる

今日,明日とクローズドの展示会。
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以前から北米は多極管プッシュプル系,欧州は大型三極管シングル系が主流(あくまでウチの傾向)なのですが、今回はイタリアの方からJB-320LM+SV-284Dの購入依頼をいただきました。さすが情熱の国…845がよく似合います。

この284Dというアンプの本質…以前から申し上げている通りですが、再度繰り返します。パワーアンプ(たとえば300Bシングル)単体で5Wで出ていると仮定します。これに284Dを加えて同じ5Wを得たと仮定すると前置されている300Bシングルの出力は1W前後になるでしょう。つまり単体ドライブ時よりも遥かに歪みの低い(=言いかえれば91Bのもっとも美味しい)領域で、三極管シングルの最大の特質である透明感が一層際立った音質で楽しむことが出来るという訳です。

これまでいろいろな前置アンプやスピーカーでSV-284Dの本質をチェックしてきましたが、最近特に痺れたのはTさん宅で聴かせていただいたB&W 800 Diamondの音でした。元々お使いだった半導体アンプで音が薄い、音楽の抑揚が感じられない…ということでSV-91Bをお持ちしたのが2012年。元のアンプの出力と比べて1/30(10W)しかない91Bの方が遥かに躍動感があると仰られていたのですが、先々月、284Dを試してみたいということで持ち込み試聴に臨んだところ、音量そのままでもローレベルの解像度,音場の再現性,気配の表現が全く別物になりました。

アインザッツの瞬間の一瞬の静寂感、僅かな空気の揺らぎ、指揮者が棒を振る瞬間の吸い込む息の緊張感…言い換えれば”気配”の再現性において284Dありと無しでは比較にならない表現力の差異がありました。”差はローレベルの再現性に現れる”…これはハイレゾ音源の最大のメリットであることは番組や試聴会のデモでも何度も繰り返してきたことですが、この”下に効く”感じはまさにSV-284Dの最大のメリットであるといえます。

言い古された言葉ですが”この音源にはこんな情報まで入っていたのか!”という驚きが遠くイタリアまで届く日が来るといいのですが…。



by audiokaleidoscope | 2015-11-23 22:59 | オーディオ | Comments(0)

(11/20_3)京都で舌鼓

兵庫を出て京都へ向かいます。日帰り関西出張のシメはEさんのステーキ店へ。京都御所から歩いて5分という好立地です。
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夕暮れ迫る御所。凛とした空気が流れていました。歩いてもすぐのEさんのお店はこんな感じです。
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住所: 京都市上京区上京区北小路室町401

京町屋の一階がEさんのお店、二階は奥さまのフラワーアレンジメント&アロマの教室です。Eさんのお店では輸入牛肉を独自のルートで入れておられるのですが、これが安い!旨い!詳しいことは覚えていませんが、とうもろこし等穀物類で飼育した牛のリブアイとサーロインを低温熟成しておられるということで、いわゆる輸入肉のイメージが変わること間違いなし!です。京都へ行かれた際は是非観光コースに加えて頂きたいお店です。
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Eさんのお店では真空管アンプでBGMを楽しめます。何も知らずに入られたお客さんが耳を傾けられることも多いとか。
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スピーカーはランドセル&SUONO。TL-51X,SV-192S/MC-3,SV-722(C22),SV-310,SV-91Bなどをカウンター席から臨むことが出来ます。またいつか関西の仲間と一緒に集って心行くまで呑み、ステーキを食する夕べを開きたいですね!とEさんんと盛り上がりました。

…という訳で大急ぎの関西出張でした。SNSを通じて”近くに来てるなら寄ってよ”というメッセージも頂きながら時間の都合でゆっくりできず心残りでしたが、久しぶりの関西はとても心地よく、是非またゆっくりお邪魔したいと思わせる何かがありました。とても楽しい一日でした。




by audiokaleidoscope | 2015-11-21 11:29 | オーディオ | Comments(2)

(11/20_2)TeNさんの新譜

Sさん宅を出て向かったのが同じ兵庫県内のTeNさんのプライベートスタジオ。
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彼女と知り合ったのはもう5~6年前?…Mさんと一緒にショールームにいらっしゃったのがTeNさんでした。パッと見たときオーラのある人だなあ…と思った後に、テレビCMであの”さよならの向こう側”を歌っている方と伺って納得。SV-3+TU-879を自宅で使って下さっている私たちの”仲間”です。

そのTeNさんが新譜”2,134km”を出されたと伺い、インタビューがてら近況を伺ってきました。オンエアは”ようこそオーディオルーム”12/5(土)22:00~(ネットで聴かれる方はこちら)。是非TeNという素晴らしいアーティストの魅力を満喫いただきたいと思います。

彼女の音楽にはいつも”風”が吹いている…不思議な浮遊感と揺らぎ。それでいて心に刺さる声の質感。今回の新譜は”さよなら”と”high-low"(2009年)の間をつなぐ一本の糸のようなアルバムだと感じました。”ワゴンに乗って”という曲を聴きながら不覚にも涙が零れました。子供の頃から家で家族みんなで歌を歌うのが習慣で原点に唱歌や童謡があるという彼女の原点に通じる歌心を感じる素晴らしいアルバムです。

番組の中では等身大のTeNさんのコメントとともに、彼女のプライベートに関する重大(?)発表がオフィシャルベースで初めて出されます。私も最初この話を伺った時は驚きましたが、サテどんなお話が飛び出すやら…(笑)。どうぞお楽しみに!
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※写真はTeNさんのご了承のもとアップさせていただいています。



by audiokaleidoscope | 2015-11-21 10:32 | オーディオ | Comments(0)

(11/20_1)絆

今日は関西方面へ日帰り出張でした。最初に向かったのは兵庫。神戸の少し先。ここには私にとって恩人ともいうべき大切な方が住んでいます。15年以上前、まだ実質的に独りでキット屋をやっていた頃のこと。急速に忙しくなって出荷で手いっぱい。完成品の組立や修理作業にまで全く手が回らなくなりました。どうにもならなくなって助けを求めたのが兵庫のSさんだったのです。

元々私どものキットを沢山買って下さるお得意さんだったのですが、そのうち昔に作ったという自作のアンプやスピーカーの写真を送って下さるようになりました。聞けばもともと電器店を経営されており、昭和30年代から真空管ラジオやテレビの修理をずっとされていた方。真空管アンプの設計や組立はお手のもの…と仰るので、何とか助けて欲しいとSOSを出したのがきっかけでした。

とにかく”気のいいおっちゃん”という感じの方で、短納期の仕事も厭な顔ひとつせず、”よっしゃ、任せてや!”といつも引き受けてくれたSさんに最後にお会いしたのは確か二回目の大阪試聴会の時。もう7~8年前のことだと思います。その後、技術スタッフが入社しSさんに助けて頂いて窮場を凌がないといけないことも少なくなって、時々”元気でやっとるか?”という電話を時々いただく関係になっていきました。

そのSさんから久しぶりに電話をいただいたのが10月初め。当時30代半ばだった私が50歳を過ぎたように、Sさんも昨年傘寿を迎えられました。そしてSさんから”最近体調を崩した。元気なうちにもう一度会いたい”と言われ、関西に仕事でいく時に必ず伺います!と申し上げて今日再会を果たすことが出来ました。

一瞬で時計が巻き戻って…いろんな思い出が次から次へ湧き出てきて昔話に華が咲きました。今日はSさんに一つお土産…というかお願いをしようと思って車に積んできたのがこれ。
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その昔、Sさんから譲っていただいた白黒ブラウン管テレビ。VHSビデオにつないで"独り映画館”用として時々自分でメンテしながら特に不具合なく使ってきたのですが、せっかくお会いするので”あと20年使わないといけないからチェックして下さいよ”とお願いしたら、Sさんは”よっしゃ、任せてや!”と言ってニカっと笑っていました。

再びまた二人の絆が繋がった気がしました。行けてよかったです。



by audiokaleidoscope | 2015-11-20 23:29 | オーディオ | Comments(0)

(11/19)Stirling HW+2A3プッシュプルはいかが?

キット屋ショールームは単に製品の音を聴く場所ではなく、時にお客さん同士の交流の場として間もなく12年になろうとしています。恒例となりつつあるショールーム開放日では音を聴くのと同じくらいオーディオ仲間との交流を楽しむ目的でいらっしゃる方も少なくありません。そんな中で自然発生的に始まったスワップミート。時に物々交換であったり愛機の売買で盛り上がったり。そんな中、今日は”欲しい方がいらっしゃったら是非”というアンプとスピーカーの持ち込み物件をご紹介します。

まずはこれ。Tannoy Stirling HW(’88年頃:定価396,000円)です。
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ハカマ(専用スタンド)はありません。StirlingはTWW('90年代終わり頃)まで専用スタンドと本体がセパレートできる仕様となっていましたが、この専用スタンドは使いこなしが難しく、しばしば共振が発生し音のクリアネスが後退したり数百Hzでブーミングが起きたりして別のスタンドに替える方が多いことでも知られています。Fさんもハカマは使っておられませんでしたので本体のみの譲渡となるそうです。

当時のStirlingは簡単に密閉/開放(スリット)をモード変更出来るところが大きな特徴でした。タンノイらしい間接音が欲しい場合は開放,締まった音が欲しい場合は密閉モードがお奨めです。
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ユニットの状態。昨日お話に出たウレタンエッジではありませんのでピンピンです。40Hz~10kHzのワーブルトーン/20Hz~20kHzのシングルトーンをスウィープして確認しましたが、同軸ユニットに見られる高域側の偏心も見られずビビリは皆無ですし、クロスオーバー周波数の左右偏差も認められませんでした。

ペアになるアンプはTriode VP-20 Anniversary(新品同様:定価216,000円)です。
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トライオードさんの20周年記念製品(120台限定)で確か予約で完売になってしまった2A3プッシュプル。出力管は”2A3C”で300Bと同じ外観ですから、パッと見ると300Bプッシュプルと見間違う方もおられるかもしれません。
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VP-20+Stirling HWの組み合わせは意外なほどフレッシュでありながら紛うことなきタンノイサウンド。直熱管アンプでしか味わえない解れ感と透明感を味わっていただけます。一年間頑張った自分へのご褒美セットとしてもお奨めですね!

半年ほど前にIIILZを紹介したときと同様、直接(当社を経由せずに)セットで27万(+送料がかかる場合は実費)で譲れれば…とのこと。ご興味ある方は下のコメント欄に返信用メールアドレスを添えてご一報頂ければ幸いです。非公開で対応しますので。



by audiokaleidoscope | 2015-11-19 19:43 | オーディオ | Comments(0)

(11/18)実は一番多いトラブル

冷たい秋の雨がそぼ降るなかTさん宅へ。伺うのはこれで3回目です。最初にお邪魔したのは2か月余り前。当初と比較すると本当に別物の音になりました。

実は最初に伺った時、アンプの前に別の問題を発見しました。この仕事を始めて何百というリスニングルームを訪問させていただいてきましたが、今まで最も多かった問題点の一つを今日はご紹介します。ちょっとショッキングな画像ですが、皆さんのなかにも知らずに似たような状態になっている方が必ずいらっしゃる筈。サランネットを今すぐ外してみて下さい。
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見ぬもの潔し…とでも申しましょうか。これは別のお客さまから預かったJBLのウーハーですが、スピーカー製造の長い歴史のなかで最大のミスジャッジの一つが、この”ウレタンエッジ”の採用であったと言われています。

抗張力や耐摩耗性、耐油性に優れるものの耐熱性や耐水性は他の合成ゴムに比べて低く、水分による加水分解や空気中の窒素酸化物、塩分、紫外線、熱、影響で徐々にエッジが分解されるという大きな欠点があるウレタン。特に高温多湿な我が国においては10年ほどで弾性が失われ、15年~20年で上の写真のようにボロボロに朽ちてしまいます。'70年代~'80年代のスピーカーに非常に多く採用されたウレタンエッジですが、劣化の進行がきわめて緩やかであるため異状に気付かず、なんとなく音がヘンだなあ…ということになってサランネットを外したらアレレ!こんなことに!!というパターンが過去何度あったでしょうか。TさんのXRTもミッドバスが同じような状態でありました。

当然のことながらエッジが破れている=スピーカーユニットのピストンモーションが正しく行われない訳ですのでエッジ交換あるいはリコーンが必須となります。昨今は自分でエッジ交換が出来るキットも売られていますが最低共振周波数(F0)が変わってしまったりL/Rで特性がバラついたりして改善のつもりが改悪になってしまうケースも多々ありますので、信頼できる業者(できれば製造元あるいは正規輸入元)に委託すべき事項です。

Tさんの場合はエッジのメインテナンス後、スピーカーの調整が大変でした。XRTシリーズには”MQ107”というEnvironmental equalizer(パラメトリックイコライザー)が付属しており、極めて調整パラメーターが多いことから、多くのユーザーが”ナニをどうしていいのか分からない”ということで単に繋がっているだけ…というパターンが多くみられます。Tさんが国産半導体セパレートシステムを使ってこられて、どのような不満をお持ちかはお話を伺って十分理解できておりましたので、XRTらしく、それでいてネガティブな要素を除去するのに時間がかかりましたが、満足のいく結果が得られました。

そして今日、三回目。パワーがSV-8800SE,プリがSV-310に代わって音の世界観が別物に。Tさんが一番ケアされていた高域(4kHz~6kHz前後)の尖鋭感、耳に刺さるような痛い音は基音と倍音のバランスが崩れている証左ですから、真空管の最大の魅力(特質)である適切な倍音感によって”鈍らすのでなく音全体を"整える”ことが極めて重要であった訳です。

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優先順位はパワーの次ですが、音のキメや質感を作るのはプリ。Tさんの長年のお悩みを劇的に改善したのはSV-310だったと言える結果でした。平板で抑揚感に乏しかったXRTから更なる奥行感と余韻が聴こえてきたようだとTさんも喜んでくださいました。
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外観は初めて伺った時となんら変わっていません。しかし音は本当に別物に。年明け頃にもう一度お邪魔してMQ107の再調整を行って私の仕事が終わるんだろう…そう思った今日でした。



by audiokaleidoscope | 2015-11-18 21:09 | オーディオ | Comments(0)

(11/17)フィラメント定格に注意

昨日の整流管に関するポストに対して大きな反響がありました。予想以上に誤った情報によって誤った使い方をされている方が多い事、そしてそれ以上に正しい情報の提供が必要であることを痛感しています。

今日は"差換えられそうで注意が必要な出力管”について少し書きます。誤解のないように書きますが、品質上問題があるという話でなく、勘違いし易い球ということで理解頂きたい内容です。皆さんはKR Audio Electronics社をご存じでしょうか?チェコスロバキア時代にあった旧TESLA社の施設を使用して手造りで直熱3極出力管を製造しているブランドです。



中国球の数倍のプライスタグがつき、海外のハイエンド真空管アンプに搭載されることもある高級ブランドですが、皆さんが差替えを検討される場合には少し注意が必要なケースがあります。例えばKR845
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実売でペア10万円を超える非常に高価な球で、845アンプをお使いの皆さんが次なるターゲット球としてKR845をイメージされるケースも多々あろうかと思います。その場合注意が必要なのが、いわゆる845とはフィラメント定格が異なることです。

真空管の呼称(例えば300Bとか2A3)というのは規格番号の一種ですから、本来はどこのメーカーが作ろうと同じ動作条件であると理解するのが普通です。しかしながら現行球のなかには管種名のみ同一で定格が異なっている真空管もあるのです。これが10%とか15%の差であれば或る意味誤差範囲と言える訳で実害もないのですが、大きく異なる場合には注意が必要です。

KR845はその一例です。元々845のフィラメント定格は10V/3.25A(=32.5W)です。対してKR845は公称値10V/1A(=10W)。昨日の整流管の理屈で言えば小なりイコールだからOKじゃないか?と思われるかもしれませんが、相対値としては実に1/3(以下)。ここで何が起こるかというと多くの845アンプにKR845を使うと本来10Vであるべきフィラメント電圧が上がり、真空管の寿命が非常に短くなるケースがあることを覚えておいて下さい。

輸入元はきちんと情報を発信していますが、店頭で知らずに買われてしまった方は大変です。フィラメント電圧が上がるということは寿命だけでなくアンプそのものの動作(例えばプレート電流)も想定値から外れる可能性もあり、副次的な問題となるケースもありますから、アンプの改造を想定されていない方は十分な事前検討が必要です。もっと言えば仮に世の中にKR845専用アンプがあって、知らずに普通の845を挿して使ったらどうなるか…考えるだけでも恐ろしい気がします。

同様に"KR300BXLS”については通常の300Bのフィラメント電流が1.2A(~1.4A)であるのに対し、1.8A流れることを事前に知っておく必要があるでしょう。
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僅か0.6A/本の差異と考えるか150%と考えるかはアンプのヒーター巻線の設計余裕度に否応なく依存します。仮にこれがプッシュプルアンプでしたらトータルの差異は無視できるものではありません。繰り返しになりますがKRは非常に造りもよくどっしりとした重量感のある工芸品的な逸品で所有の歓びに満ちている素晴らしい真空管ブランドです。だからこそ余計に使いこなしも正しく行っていただきたいと切に願います。

KRばかりではありません。最近は"一見同じ。でも実際は別のタマ”が散見されます。使いたい真空管が自分のアンプにマッチしているかどうかは使う側の知恵。よく情報を集めて正しく使ってあげましょう!

そういえば今日の夕方”New 樽スピーカー”をアップさせていただきました。
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10月の真空管オーディオフェアのウインズデモで好評をいただいて、アップをお待ちになっていた方から早くもご予約を頂いて喜んでいるところです。樽スピーカーはキット屋オリジナルスピーカーの出発点(2004年~)。私どもの原点回帰のもう一つのシンボルとして大切にしていきたいと思っています。久しぶりに仲間入りを果たした”新しい樽”を是非よろしくお願いいたします!



by audiokaleidoscope | 2015-11-17 21:02 | オーディオ | Comments(0)

(11/16)気をつけよう!タマの差換え

唐突ですが、皆さんは自分のカラダからのサインを見逃していませんか?私の場合、10月が休みナシで11月に突入して騙し騙しやってきましたが、ついにそのサインが現れました。"ちょっとヤバいことになってますよ”という自分にしか分からないメッセージ。とは言うものの、今からが剣ヶ峰。マラソンも30キロ過ぎが一番つらいといいますが、年末に向けてお互いに頑張りましょう!

今日は最初にちょっとご注意いただきたい話です。最近"真空管差替えブーム”が非常が流行(定着)し、それ自体は非常に結構なことですし大いに楽しんで頂きたいのですが、一部で明らかに定格オーバーのタマを差換えてアンプに異常を来すケースが見受けられることを少し心配しています。

300Bアンプに2A3を挿してタマが壊れることは皆さん知っています。電圧的に×ということまでは分かっていても電流的にどうかということまでは知らずに使ってしまって後で痛い目に遭うことがあるようです。特に最近整流管アンプでトラブルを伺うケースがありますので、具体例を示しながら説明します。

(Q)元々整流管が274Bのアンプに5U4(G)が使えるか?

(A)アンプの設計を確認する必要があります。元々274Bのフィラメント定格は5V/2Aです。対して5U4系は5V/3Aになっています。私どものSV-91BやSV-310のように元々5V/3Aの巻線を持っていて5V/2Aの274Bを使うような設計になっていれば5U4系もOKな訳ですが、電源トランスのヒーター巻線が5V/2Aのアンプに5U4系を使うというのは過負荷となり、最悪の場合、電源トランスの過熱,巻線の焼損を起こします。

(Q)では元々整流管が5U4(G)のアンプに274Bが使えるか?

(A)基本的には×です。上記の逆でヒーター電流的にはOKでも、コンデンサーインプット容量(uF)の不適合が生じ、整流管の寿命が著しく短くなる可能性があります。整流管はフィラメント(ヒーター)が立ち上がった直後、一時的に突入電流が流れます。この電流値に大きく影響しているのが整流出力後、最初に置かれたコンデンサーの容量(uF)なのです。ちなみに274Bは4uF~10uF(前後)、5U4系は30uF~40uF(前後)が目安です。それぞれの整流管の定格インプット容量(uF)よりも大きな値のインプット容量をもつ回路で使用すると、一時的に過大な突入が生じ整流管にとっては極めて大きな負荷となることに注意しなければなりません。

※補足:SV-310, SV-91Bは5V/3Aの巻線をもち、インプット容量は10uFですので5U4系,274B,5R4系いずれも使えます。

まだ他にも最大尖頭電圧や電源トランスのB巻線抵抗値など注視すべき指標があります。これは音が良いとか悪いとかの次元の前に安全に長くお使いいただくための重要な規範ですので、もし自分なりに考えがあれば事前に設計者に確認する必要があるでしょう。少なくとも"○○は差換えてOKですよ!"と言われていないタマを使うということは何らかの背反事項があると思う方が賢明です。

以前あるメーカーのアンプで頻繁に整流管(5AR4)が憤死するトラブルが起こりました。回路を確認すると適正インプット容量40uF~50uF(前後)のところ220uFが置かれていた事例があります。これでは過大な突入電流が発生し、5AR4が壊れても仕方ありません。訊けば残留ノイズレベルを改善するため、気づかずに設変したとのこと。メーカー製アンプでもこういう事がありますので、中古品や改造品には一層の注意が必要です。確認せずに安易に変更するのは危険であることを改めて申し上げておきたいと思います。

今日はそんななか、安心できるアンプの新発売をお知らせします。先日告知させて頂いたTU-8200の上位モデル、キット屋専売のTU-8200SVが今日からホームページにアップされました!
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出力よし!波形よし!
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整然とした基板配置。素晴らしい!

TU-8200は元々出力管のヒーター巻線2A。対してKT88は1.6Aですので安心してお使い頂くことが出来ます。メーカーリリースにも書いてありますが、更に上位のKT120/KT150は2Aですのでギリギリセーフともいえますが、メーカーは現在推奨しておりません。これこそが設計者の良識と言えると思います。

エレキットさんとは長い付き合いで設計,販売,サポートいずれをとってもサスガ!と唸らせられる素晴らしいメーカー。今回私どもの為に専売モデルでコラボしてくれたことを本当に嬉しく思っています!



by audiokaleidoscope | 2015-11-16 20:19 | オーディオ | Comments(0)

本ブログ掲載内容は私人の見解であり、(株)サンバレー(ザ・キット屋)の立場,戦略,意見を代表するものではありません。


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