2017年 10月 21日 ( 2 )

(10/20)スピーカーの聖地へ

立ち位置は開発主体のメーカー的立場でありながら暇さえあればお客さんの音を聴かせて頂いていただくことが何よりの楽しみ…そんななかでここ数年、或るスピーカーブランドの名前をしばしば聞くようになりました。例えば千葉のFさん。例えば東京のYさん。そういえば昨日のアンソニーさんも…。海外のビッグなブランドではありません。主にJBLのレストアを中心にしながらカスタマイズなども手掛けるそのビルダーが30代の若者と聞いて一度会ってみたいなあ、とずっと思っていたのですが、今回縁あって工房をお邪魔させていただけることになりました。
b0350085_09032107.jpg
その名はケンリックサウンド。業界の大先輩であるS社長が一緒にいかない!?と誘って下さって訪問が実現しました。
b0350085_09033070.jpg
Sさん(右)とSさんがメーカー勤務時代の先輩Kさん(左)。Kさんはケンリックの縁の下の力持ちとして現役バリバリで活躍中。こういう重鎮の皆さんが活躍されるのは私たち後輩としても一番嬉しいこと。

早速音を聴かせていただきました。最初の写真のシステムは一見JBL4343のようでいて中身は全く別物です。ウーハーが替わっているだけでなく、ネットワークも全くの新設計。まず驚いたのが位相特性の良さ。オリジナル4343は良くも悪くも独特の音でウーハーのF0が低いことからサブウーハー的に重く鳴り響きが残る感じ。ミッドバスとの間に聴感上おおきなデイップがあってピアノの左手などは音像が動く鳴り方が個性的です。あとはミッドバスとミッドハイの音色がかなり異なり、多くの場合金属的な尖鋭感が気になるのですが、このオリジナルシステムはユニット間の位相の揺らぎが全くなく、まるで巨大なフルレンジのように2つのスピーカーの間にポッカリと音像が浮かぶような鳴り方。音量を上げるとまさにそこにドラムがいるような、ピアノがあるようなリアリズムが展開しました。
b0350085_09210639.jpg
これが専用ネットワーク。Kさんの力作です。感心したのがミッドバス/ミッドハイの繋がりの良さ。ダイレクトラジエーターとコンプレッションドライバーの発音方式の違いからなかなか上手くいかないものですが、このネットワークではコンデンサー,コイルのヴォイシングを重ね完璧なまでにシームレスに整合しています。システム価格285万(ペア)も納得のサウンドでした。
b0350085_09033964.jpg
左のシステムはオリジナルでしょう。4355のレイアウトを縦型に替えた感じなのかもしれません。15インチのダブルウーハーはオーデイオマニアの憧れですね。
b0350085_09034885.jpg
試聴室にはパラゴンが3セット。レプリカも手掛けられるそうですがこれはオリジナルをカスタマイズしたもので、ネットワークは上の4343改と同じくイチから設計し直しされたとか。ユニットも完全リビルドで着磁からやり直して完璧を目指したもの。価格は驚きの800万オーバーとのことですが既に売約済で納品待ちとか。凄いです!
b0350085_09034310.jpg
そのほか試聴室に現行ハイエンドからヴィンテージまで銘機が勢揃い。そんななかにウチのSV-192Sも並んでいました。

私が今回一番感銘を受けたのはバックヤード。つまり現場です。中古ショップでのスピーカーの売られ方にも色々あって中には買い取って音を出して鳴ればOKという店も現実にありますし、パーツ類を替えて元の音とすっかり変わってしまっているものも少なくありません。正直ケンリックという店がどんなプロセスでモノづくりをしているか全く知らなかったのですが、現場を見て単なるメインテナンス屋ではなく、揺るぎないポリシーと妥協の一切ないオンリーワンのモノづくりをしていることが分かって非常に心打たれました。
b0350085_09452007.jpg
ユニットのメインテナンスは単なるエッジの張替えにとどまらず完全バラバラの状態からスタートする徹底ぶり。
b0350085_09471897.jpg
塗装は塗る前に剥がす…当たり前のようでいて、ここまでやるところはそうはありません。
b0350085_09455200.jpg
これはKさんのワークベンチで撮ったネットワークのバラック。出来上がるまでに気の遠くなるような時間と工数がかかっていることをどのくらいの人が知っているのか分かりませんが、それはお客さんの為であると同時に自分たちの志(こころざし)でもある訳で、こういう光景を見られるのは本当に嬉しいものなのです。

社長のHさんといろいろとお喋りしながら感じたことは、この人は自分に対して全くブレと妥協がない人なんだな、ということ。物事をやっていると”まあ、こんなもんでしょう…”という妥協点が誰にでもあります。そのレベル感こそが人としての生き様に現れるのだと思いますが、Hさんの静かな語り口、真っ直ぐな視線、そしてHさんの真摯な想いを受け止めて真剣に、でも楽しそうに働くスタッフの皆さん…ケンリックサウンドは会社という形をとりながらオーディオが大好きな人たちの夢を結集した、素晴らしいチームなんだと思います。

HさんとKさんから”タマでウチのスピーカーを完璧にドライブできる物がないですか?”とオファを頂いたので、近いうちにまたお邪魔させていただくことになりそうです!楽しみでなりません!!




by audiokaleidoscope | 2017-10-21 10:19 | オーディオ | Comments(0)

(10/19)”SV-8800SE大研究”と”youtuber初めての真空管アンプ選び(プリ編)”

今回の収録は12月オンエア分の二回録り。思えば今年も色々なテーマで真空管アンプの楽しさ,奥深さを放送を通じて感じて頂こうと知恵を絞ってきました。来年も頑張ります!

その師走一回目(12/8放送)は「SV-8800SE大研究」。多極管プッシュプルの高級モデルの魅力を掘り下げています。真空管は3種類を用意。GoldLionKT88,TungSolKT120,TungSolKT150の三種類。
b0350085_06282245.jpg
これは現行KT88で最も人気のあるGoldLionKT88です。SV-8800SEは固定バイアス(出力管を替える場合は必ずバイアス調整が必要)ですので少々敷居は高いように感じられるかもしれませんが、デジタルテスターとドライバー一本で誰でも出来ますし、出力管の持ち味(性能)を最大限引き出せるという点において、車でいえばマニュアルトランスミッションの大型クーペような存在。
b0350085_06395265.jpg
収録ではカップリングコンデンサーの交換実験をやった関係でアンプを90度倒した格好でバイアス調整していますが、通常はシャーシ上からテストポイントにテストリードを挿入すればOKです。

今回オンエアで是非聴いていただきたいのが固定バイアスアンプならではの実験。GoldLionKT88を使用し、市場の一般的な多極管ppの標準的Ip(プレート電流)=40mA~45mAの状態の音とSV-8800SEの標準設定値での音の違いを体験していただけます。前者はAB2級動作。対してSV-8800SE標準設定値は常用出力A級動作になります。A級とかAB級とか言われてもピンと来ないかもしれませんが、A級の方がプレート電流を多く流し出力管を最もリニアリティの高い領域で動作させることになりますがAB級と比べて最大出力が下がる,発熱が大きくなる等のデメリットはありますが音質的には明らかに有利です。多極管ppはどちらか言えば最大出力を優先する側面がありますので、市場の製品の多くがAB級でプレート電流を低く抑えています。電源トランスのB電流巻線容量を低く抑えることができるのでコストダウンにもつながり、多極管ppは大パワーの割に値段が安いという評価にもつながって市場でも人気があるものと思われますが、私どもでは出力よりも音質を優先するというポリシーからプッシュプルでも常用出力ではA級動作であることを条件に設計を行っています。

少々理屈っぽいですが、同じアンプ,同じ出力管,同じ出力で違うのはバイアス調整値のみという条件で音を聴き較べていますが、これが音の潤いや聴感上のダイナミックレンジが大きく変化することに気づいて頂ける筈です。
b0350085_07054507.jpg
続いては恒例カップリングコンデンサーの交換実験。SV-8800SEでは標準でもビタミンQオイルペーパーコンデンサーを採用していますが、これを更にグレードアップしてJENSENの音も聴いて頂いています。
b0350085_07083936.jpg
カップリングのみ直ぐ交換できるようにアンプに手を入れてあります。ミノムシクリップの赤が高圧側(前段プレート側)ですのでJENSENの推奨極性に合わせて試聴。同じオイルコンでもやっぱりJENSENは特別な存在。レベルの違う音をぜひ聴いてみて下さい。

そして最後は恒例ヴィンテージアワー。ゲストTさんのGE6550A(マッキントッシュ向けOEM品)とGECのKT88オリジナル。初段はテレフンケン12AU7,ドライブ段はTungSolオリジナル12BH7A。このアンプは私どもでも独特の存在で現行ハイエンドスピーカー(低能率,低インピーダンス)を真空管アンプで鳴らしたい…という方の指定銘柄。数値上の最大出力を遥かに超えるドライブ力を有しています。今回の収録ではそのSV-8800SEのフルチューンの音を楽しんでいただける絶好のチャンス。ぜひお聴き逃しなく!

二本目(12/22OA)はユーチューバー”アンソニー”さんをスペシャルゲストにお迎えしました。
b0350085_07202369.jpg
チャンネル登録者46,000人。オーデイオ好きなユーチューバーが居るんだけどゲストにどうですか?とお奨めいただいたのが2か月ほど前だったでしょうか。既にMusicBirdには二度出演されているということで私の番組が3回目。テーマはアンソニーさんのリクエストでプリ比較。タイトルは”アンソニーの真空管アンプ選び(プリ編)”ということに。現在は半導体パワーアンプをプリなし(直結)で聴いておられるアンソニーさんにプリとは何なのか、プリはなぜ要るのか、実際音にどんな変化が出るのか…を実際音を聴いて確認していただき、その印象を自ら言葉で語って頂く流れにしました。

まずはプリなしとプリありの比較。SV-192PROからSV-8800SEへダイレクトに信号を送るのとスタジオ常設のSV-192A/Dを通した音の聴き較べからスタート。話に熱中して写真を撮ることも忘れていましたが、オーディオは好きだけど知識がない…と仰る言葉とは裏腹に、それぞれのプリの個性を客観的に理解され、的確な言葉で表現するその姿勢にダテに何万人ものファンを集めている人ではないなということが直ぐ分かりました。

今回登場したプリはSV-Pre1616D,SV-722(C22),SV-300LB,SV-310の4機種であった訳ですが、例えばSV-300LBの音を聴いて”特に個性があるという感じではないけれど、様々なアンプ遍歴を経て最後にたどり着くのがこんな音なんでしょうね”というコメントやSV-Pre1616Dのカソフォロ段12AU7/整流5AR4を聴いて”いつかは違う音に行き着くのかもしれないけれど、回り道してでも聴きたい音ってあるじゃないですか。このプリの熱気はそんな気持ちにさせられます”といった言の葉の選び方にアンソニーという名前を語るこの若者のポテンシャルの高さを感じました。逸材です。

アンソニーさんのチャンネルはすぐ検索できると思いますが一つ実例を。

また機会があればゲストにお迎えしてアンソニーさんのシステムがすべて真空管になるまで見守りたいものです(笑)。



by audiokaleidoscope | 2017-10-21 08:28 | オーディオ | Comments(0)

本ブログ掲載内容は私人の見解であり、(株)サンバレー(ザ・キット屋)の立場,戦略,意見を代表するものではありません。


by Ohashi
プロフィールを見る
画像一覧