2015年 07月 21日 ( 1 )

(7/21)”高音質”の落とし穴

皆さん、こんばんは。昨日からセールが始まり、その準備やご開帳後の超バタバタで更新が遅れてしまいました。

今日は前回の”宅録”ネタの続きですが、幸いタイミングが合って来週スタジオが取れました。その一方でフル真空管アナログシステムの自前録音にチャレンジ出来なかったのが少々心残りだったりするのも本音です。

前にも書きましたが”ようこそ!オーディオルーム”のスタジオ機器が変わったのは半年ぐらい前からでしょうか…それまでのアナログミキサーからデジタルミキサーに変わって音がすっかり変わり、少々違和感を禁じ得ないということも何となく書いた記憶があります。

何もデジタルが全て悪いという訳ではありません。フルデジタル録音でも素晴らしいものは幾らでもありますから。ただアナログと違い、デジタルにはピークマージンがありませんので宿命的に深めのコンプ/リミッターをかけて如何なる状況においてもピークを越えないようにする必要があります。私が新しいスタジオで録られた音に違和感を拭いきれなかったのはこのリミッティングされた音に対する生理的違和感だったと言ってもいいかもしれません。

一方でスタジオという環境を考えるとコンプを使わざるを得ない背景も大いに理解できます。人によって声の大小もありますし、マイクとの距離の取り方にも個人差があります。マイクに接近するが余り”吹かれ”といわれるブレスノイズが大きい人もいる・・・喋る人によって状況がかなり変化することを前提とすれば或る意味コンプ/リミッターは必要不可欠な機材と言えるでしょう。しかし過ぎたるは猶及ばざるが如し…もまた事実です。

皆さんはFM放送を聴かれるでしょうか…聴いていて民放局とNHKで音量が違うな…と感じたことはありませんか?NHKの方が音が小さい…という。実はこれがコンプによるものであることを知る方は少ないかもしれません。

最近はFM放送を車で聴く方が多くなりました。車という空間は予想以上に暗騒音が多く、タイヤを介して伝わるロードノイズも盛大です。その為ローレベルの信号を持ちあげ、その代りピークを潰すコンプ/リミッターによって明瞭な放送が出来る反面、音質的には粗さが目立ち元々の音楽波形がかなり変形されているのです。NHKはそれを嫌い、基本的に必要最小限のコンプしか掛けません。特にクラシック放送などで私たちはその恩恵を少なからず受けているという訳です。チョイ聴きすると元気があって音圧感の高いコンプ音源に私たちの耳が慣らされてしまっている部分も少なからずあります。

実はこれはFM放送に限った話ではありません。少々ショッキングな画像ですがご覧ください。トップエンジニアによる高音質レーベルと宣伝され販売されている或るハイレゾ(96k/24bit)音源のピーク波形です。
b0350085_20065880.jpg
前半は辛うじてセーフですが、後半が見事に波形の頭がぶった切られて潰れているのが誰の目にも明らかです。ローレベルを持ちあげた分ピークが潰された…これがコンプ/リミッターの功と罪です。音圧感とバーターにこんなに変形した音を聴いていると一体どれだけの人が気づいているでしょうか。

そしてもう一つ。これは別の高音質レーベルと言われているところの音源。
b0350085_22032409.jpg
実に見事な波形です。全てのピークが美しく屹立して山と谷がはっきり分かります。これが真のダイナミックレンジというものです。

今日スタジオの責任者の方とお話する機会があったので失礼かもしれないが…と断ったうえで、今のスタジオになってから音について何らかの指摘をされたDJはいませんか?と正直にお尋ねしたところ、誰もいないとのことでした。そこで間違っているかもしれないが…と前置きしながらどうも新しいスタジオの音が馴染まない、ひょっとして深めのコンプが掛かっているのではないでしょうか…私の収録時だけでもコンプを外して頂く訳にはいかないでしょうか…と正直に話させていただきました。素人が何を!とお叱りを受けることを覚悟しながら。

そうしたら、話を聞いて下さった方が、”確かにそうかもしれない。今まで誰からも言われなかったので気付かなかったですが、次回大橋さんの収録の時はミキサーが内蔵しているコンプをオフにして収録できるよう勉強しておきます”と言って下さいました。音に関わる仕事をしている者として貴重なオリジナルLPや高音質なハイレゾ音源を元の鮮度のまま皆さんにお届けするためにも、どうしても何とかしたかったというのが本音でしたので理解いただけて本当に嬉しかった…。

デジタル機器のパラメーターの変更はかなり複雑で慣れた方でないと上手くいかないことも往々にしてあります。収録は一週間後ですが、それまでに良い方策が見つかればいいなと思っています。音源も特別なものを用意しなければいけませんね!それが私の出来る唯一の恩返しですから。




by audiokaleidoscope | 2015-07-21 21:44 | オーディオ | Comments(2)

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