人気ブログランキング | 話題のタグを見る

SV-EQ1616Dを聴いて分かったこと

真空管機器で最も設計,音決めが難しく奥深いもの…それがフォノイコライザー(通称フォノEQ)です。あらゆるオーディオ機器のなかで最も入力電圧が低く(MC入力でコンマ数mV)、ゲインが最も高い(MC入力で約60dB=1000倍)機器であるから。極めて緻密で繊細な、言い換えれば最も技術力が要求される機器がフォノEQです。

私どもにとって単体フォノEQは20年余の歴史の中で4機種目。フォノEQ内蔵機種まで含めると6機種目ということになります。フォノEQにはNF型とCR型がありマッキントッシュC22やマランツ7などヴィンテージ系はNF型が主ですが、現在高級フォノEQはCR型が主流となっています。私どもでもSV-310EQSV-396EQはCR型です。

そんななか来週のヨドバシカメラAKIBA試聴会を来週に控え、私どもの技術力の集大成であり1616シリーズで唯一ラインナップされていなかったCR型フォノEQの新作”SV-EQ1616D”のデモ用試作が上がってきました。
SV-EQ1616Dを聴いて分かったこと_b0350085_01321463.jpg
左がSV-EQ1616D。右がSV-Pre1616Dです
SV-EQ1616Dを聴いて分かったこと_b0350085_01321828.jpg
SV-EQ1616Dのスペックについて改めて書いておきますと

・回路形式:CR型フォノイコライザー
・入力:2系統
・出力:1系統(STEREO/MONO切替可)
・対応カートリッジ:MM(47kΩ),MC(50Ω)
・MC昇圧:FETヘッドアンプ
・ゲイン:MM36dB~40dB,MC+25~32dB(試作にて決定)
・真空管:増幅段:12AX7(2),カソフォロ段:12AX7,12AU7,12AT7から任意に選択可
・整流器:標準/ダイオードモジュール,オプション/各種整流管(5AR4,274B,5R4等使用可)
・ターンオーバー周波数調整:切替式(RIAA,EU系SP盤,US系SP盤,AES,NAB,COLUMBIA等に対応)
 ※ターンオーバー周波数だけでなく低域特性も各EQカーブに合わせて同時可変
・高域ロールオフ調整:ON/OFF選択式(ON時:連続可変 RIAAほか各種カーブに対応)
(仕様は予告なく変更される可能性があります)

となっており1616シリーズの開発理念である”イロイロ”を満たすためSP盤までもカバーする、ほぼ全てのEQカーブに適合するだけでなく最高の音質で楽しんで頂くことを目的に開発してきました。従来機種よりも遥かに長い開発期間を要したのもこの為です。

上の写真を改めて見て頂くと分かりますが高域ロールオフならびにターンオーバー周波数をフルディスクリートで正確に可変できるフォノEQは今まで殆んど存在しませんでした。RIAAだけでなく各種録音特性(EQカーブ)に適合させているのは勿論、システムに合わせてロールオフ機能を使いトーンコントロール的に最適な音質にアジャストできる快感は他の機種では味わえないものです。
SV-EQ1616Dを聴いて分かったこと_b0350085_01322103.jpg
これがSV-EQ1616Dの心臓部ともいえるロールオフ調整回路。これをキットという形態で実現させるのが最大の関門でした。
SV-EQ1616Dを聴いて分かったこと_b0350085_01475260.jpg
これが門外不出の実測各種EQカーブ特性です。実はこの試作を通して大きな発見、言い換えれば学びがありました。

本機ではRIAA,NAB,AES,COLUMBIA,LONDON,SP(USA/EU)等各種EQカーブを技術資料に基づき正確にトレースしている訳ですが、思った以上にその差はデリケートで極めて微妙なものであるということ。特にSP盤再生に関しては今まで聴いてきたイコライザーで聴いた音とSV-EQ1616DのSP盤ポジションの音があまりに違う(思った以上に実はRIAAに近い音だった)ので最初は戸惑ったほどです。

そこで試しに今まで使っていた某社製のSP盤用フォノEQの特性を実測してみたのが上のグラフの赤線(実線ロールオフ最大/破線ロールオフ最小)です。本来のSP用EQカーブ(青/茶破線)との差異に注目して下さい。今まで信頼して聴いてきたフォノEQのカーブがこんなにおかしなものだったというのは大変ショックでした。”見ぬもの潔し”という言葉がありますが、まさにそんな心境です。この試作を聴いて改めてフォノEQとは如何にあるべきか…について学んでいる、そんな心境です。

音のチューニングについてはこれから。試作機は二種類存在し、真空管に供給する電圧の最適化と音色の適正化を今後行っていきます。価格を含め詳細はまだ白紙といっても良い状態ですが、ヨドバシ試聴会では大いにこの音を聴いて頂きたいと思っているところです。

最後に写真を何枚か貼っておきますのでご覧ください。
SV-EQ1616Dを聴いて分かったこと_b0350085_01325505.jpg
SV-EQ1616Dを聴いて分かったこと_b0350085_01323764.jpg
SV-EQ1616Dを聴いて分かったこと_b0350085_01324528.jpg
SV-EQ1616Dを聴いて分かったこと_b0350085_01325888.jpg

by audiokaleidoscope | 2019-02-13 23:59 | オーディオ

SUNVALLEY audio公式ブログです。新製品情報,イベント情報などの新着情報のほか、真空管オーディオ愛好家の皆様に向けた耳寄り情報を発信して参ります。


by SUNVALLEY audio