(12/18)白鳥の歌

いつもと同じ番組収録なのに…曲を聴いていて涙が零れそうになったのはこれが初めてかもしれない。

ジャズ喫茶Pitch地元のジャズ喫茶のマスターとそのジャズ喫茶の常連でもありオーディオマニアでもあるSさんと私の鼎談の形をとるようになって1年あまりである。いつもお互いの選曲を持ち上げてみたり落としてみたり、あたかもジャズ喫茶でのマスターとお客の会話のような番組。元々ローカル番組ながら多くの方がネットで聴いて下さっている由。忙しい日常からヒョイと非日常へ迷い込んだような私にとってかけがえのない楽しいひと時である。

今日は18年1月オンエア分の二本録り。この番組は”フルアナログ,フル真空管”を標榜していて音源は全てLP。スタジオでターンテーブルを回し、その出力を真空管プリ/パワーに入れて真空管サウンドをダイレクトに収録するという特異はスタイルを貫徹してきた中で今回初めてSさんがスタンゲッツのCDを持参された。何千枚というジャズLPのコレクションを擁するSさんからすればLPから選曲することに何ら問題はない…さすればよほどの理由と動機があったに違いない、と踏んだ。

そのCDは1991年リリースのスタン・ゲッツ「People Time」。
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Sさん曰く、スタン・ゲッツが不治の病で死期を悟り、死の僅か三か月前にケニー・バロン(p)とコペンハーゲンのカフェ・モンマルトルで最後の命の灯を燃やしたライブ、という説明であった。或いは弱弱しく儚い演奏かも…と思いながら始まった演奏を聴くうち胸が詰まるような、何とも言えない苦しいような気持ちに囚われた。

白鳥の歌という言葉がある。白鳥が死ぬ前に(美しい)歌をうたう…という言い伝えである。まさにこのスタン・ゲッツの演奏は残された命の全てを燃焼させるようなフルトーンの極めて美しいパッセージを展開させている。そしてケニー・バロンのピアノがその哀愁を一層際立たせている。聴いた曲は”First Song (For Ruth) ”…この”最初の歌”というタイトルが更に哀しさを倍加させるようだ。

曲が終わってマスターに話を聞く。何となくマスターの目頭も熱くなっているように見える。収録という特異な環境がそうさせたのか、偶然マスターも私もセンチメンタルな心境だったのかは分からない。しかしあたかもスタン・ゲッツが目の前で最後の全てをふり絞って吹くようなテナーが全身を貫いたのは紛れもない事実。この瞬間がオンエアという形で記録されていることが奇跡のようにも思えた。オンエアは1/20(土)22時~。是非この感動を共有いただきたい。
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by audiokaleidoscope | 2017-12-19 02:00 | オーディオ | Comments(0)

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