(7/24)若き挑戦者

今日は午前中試聴のお相手。午後は”FMジャズ喫茶”の収録という一日。
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今日の試聴のお客さまはショールームオープン(2003)以降、最年少では…?と思われるほどの若者。最近の若い人は(という時点で自分が如何に年齢を重ねたか分かりますね)、何か言葉のボールを投げても「…あ、はい」とか「いや、まあ、とりあえず…」的な曖昧で(良くいえば慎ましやかな)ハッキリしない方が多く、もっと自分をストレートに出せばいいのにな…と思うことが少なくない訳ですが、今日いらっしゃったMさんがオーディオが好き!というピュアな気持ちが伝わってきて、とても爽快で嬉しいひと時になりました。

MさんのターゲットはVintage S12。訊けばS12に搭載しているユニット(Sica/Z007360)をすでに所有しておられ、密閉,バスレフでエンクロージャーを自作されたものの満足な低域が出ずに困っておられるとのこと。このユニットは96dB以上/w/mという超高能率と指向性を絞った深鉢仕様のユニットの特性を生かすために、なるべく大きく響きの良い材料でエンクロージャーを作ることが非常に重要であることを説明し、ウチのユニットは高域側のサブコーンは独自のダンピング剤を塗布して高域の荒れを抑えていること、シナ合板ではこの響きは出ないので素材選びには十分気を付けてということも申し上げました。

それでアンプはどんなものを使っているんです?…と伺うとアンプも自作とのこと。この若さにして溢れるクラフトマンシップに感心していたら”アンプ持ってきてます”ということなので、じゃあそれでS12を聴きましょうよ!ということに。
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Mさんの自作アンプ(右)と音質比較用のSV-S1616D/300B。MさんのアンプはクラスD(デジタル)アンプで出力は確か400W(!)。対してS16は8W。試聴ソースはマイルスのKind of Blue。
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言わずとしれたJAZZの名盤中の名盤。おそらくこれまで数えきれないほどのリイシューを重ねてきて正直音質も玉石混交な訳ですが、これは安くて音質もGood!です。

私も球アンプ以外でS12を聴いたことはありませんでしたが、同じオーディオアンプでもクラスDと真空管では音の根っこからの差異をより明確に出す辺りは高能率ユニットならではかもしれませんが、特に高域の質感…独特の粒子感と時に感じる先鋭感がクラスDアンプの音質的特徴と言えるかもしれません。

一つのサンプルをお見せします。上のサイン波が或るクラスDアンプ(Mさんのアンプではありません) 。下がS1616D/300Bです。
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1W出力時(1kHz)の波形です。著しい差異はないと言って差支えありません。
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こちらは同じく1W出力時(10kHz)の波形です。クラスDアンプに僅かな波形の乱れが発生しているのを確認出来ます。もちろん全てのクラスDアンプがこうだとは言いませんし、被検アンプが偶々こうだった可能性もありますが、一般にクラスD増幅ではパルス幅変調(PWM)出力波形からオーディオ信号を抽出するためにローパスフィルタを外付けする必要があり、この設計で音質ならびに特性に大きな差異が出ます(最近のアプリケーションでは外部フィルタリングが不要なもものも多いようです)。

人間の耳はこの僅かな差異も鋭敏に感じる訳ですが、Mさんも”音の質感そのものが全然違うんですね”と仰りながら興味深そうに聴いておられます。最近はクラスDアンプを出力部に持つアンプでも電圧増幅段に真空管を用いるケースがかなり出てきており、Mさんのアンプもこうすることでアナログ的滑らかさを得られる余地が十分にあることをお伝えしました。若者のピュアオーディオ離れが懸念されるなかで、Mさんのような意欲ある若者にはこれからも大いに腕を磨いて頂いて再び道場破りに来ていただきたいものだと思いながら、Mさんには折角同じユニットを持っているんだからS12の寸法を測って自作されては?よかったらまた遊びにいらっしゃって!…と提案してお見送りしました。

収録が終わって会社に戻りメールチェックと共に受注データを確認するとMさんからS12のご注文が…。短い時間でしたが何かを感じて下さったんだな、ととても嬉しい気持ちになった一日でした。




by audiokaleidoscope | 2017-07-25 00:52 | オーディオ | Comments(0)

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