(7/13)ハイエンド管球ブランドにみた共通点
2017年 07月 15日
9/1オンエアの「ハイエンド真空管アンプブランドを聴く(フェーズメーション/オーディオノート)」。カタログや雑誌のレビューで見る(読む)ことは出来てもその音を聴く機会は稀。それが自宅に居ながら、自分のスピーカーで機器の音を体験出来、更には機器の開発者自身が語る音作りやポリシー、また製品の特長や強みなどを理解できるチャンスは今まで、そしてこれからもまずあり得ないからです。私自身にとってもこれほどエキサイティングなことはありませんでした。
スタジオ標準装備のSV-192PRO,SV-192A/Dは一旦撤収し、今回はカートリッジからパワーアンプまで全てゲストメーカー一色の音に染め上げてその”生音”をお届けします。
フェーズメーション斎藤部長
オーディオノート芦澤社長、マーケティング担当堀部さん
前半はフェーズメーション。
プリはCA-1000。
パワーはMA-2000(300Bパラシングル)。
フォノからパワーまで全てモノラル(×2)構成。更にフォノ,プリは電源別筐体という徹底ぶり。フルセットで約700万。増幅系すべての設計に携われる斎藤さんのポリシーは明快。直熱三極管がベスト。NFBは一切かけない。音のトランジェント(立ち上がり)と鮮度と音場こそが命。
そしてその言葉通り極めてリニアリティの高い音。極めてフラットレスポンスでありながら特に高域の情報量とスピード感は今まで体験したほどのない鮮烈さで、これはもう半導体だ真空管だの議論を全く超越したスーパープレゼンスというべき表現。何曲か聴かせて頂いてフェーズメーションサウンドの鍵を握っているのはCA-1000(プリ)ではないかと思いつつ、この尋常ではないSN比の高さを以てこの価格を妥当だというフェーズメーションファンが多数いらっしゃることが大いに納得できる結果となりました。日本刀でスパッと切ったような切れ味と広大な音場が極めて強い印象をとして残っています。
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後半はオーディオノート。
カートリッジはIO-M。昇圧トランスはSFz。フォノEQはGE-1。
プリメイン Overture PM-2(EL34 ULプリメイン)。
機器間の接続はLS-41を使用。
オーディオノートの製品はまず市場で見ることがない幻のブランド。ケーブルは勿論、カートリッジからアンプの内部配線材、そして出力トランスの巻き線まで純銀の線材を使用。カップリングコンデンサーにまで銀箔を使用し、それらを全て内製(手作業)で一つ一つ作りあげる、まさに工芸品的モノづくりこそがオーディオノートのオーディオノートたる所以。最もシンプルなこの組み合わせで500数十万。
銀の音…それは今まではイマジネーションの世界。極めて繊細で、でも細身の音…そんな先入観がなかったといえば嘘になります。しかしその出音は意外なほどナチュラル。芦澤さんによれば目指すは”自然”で”響きの美しさ”があり”静かな音”。Overtureから紡ぎ出される音はEL34ppとは思えないほど弱音のニュアンスに富んだ静謐さが極めて印象的です。
Overtureがデビューする迄は全て直熱三極管を使ってきたオーディオノート社がEL34を使って三極管に迫るサウンドを目指した力作です。僅かにNFBを掛けることで音に落ち着きが出て活き活きとした感覚を損なわず安定性を確保したということでした。
続いて登場したのはセパレートシステム。
オーディオノート社内では”プリティセット”と呼ばれるそうで、最上機種KAGURAの価格を以てすればプリ+パワーで約600万はプリティな価格と言えるかもしれませんが、その真意は音にあるとのこと。まずリファレンス曲を聴かせて頂いて私も膝を打ちました。
なんとチャーミングで豊かな響き!自然な倍音そして余韻、空気感…聴く側を寛ぎに導く音の魔法。芦澤さんによれば”側にいて欲しい彼女のような存在”なアンプになったとのこと。横で聴いておられたTさんも”これは素晴らしい。三極管の極致”と喜んでいらっしゃいました。因みに高級機で211を専ら採用するのは、そのリニアリティの高さと竹を割ったような鮮度感が欲しいからだそうで、こんどTさんと一緒に会社にお邪魔させて頂いて試聴させて頂こうという話になりました。スピーカーは現代ハイエンドが主流で、多くのオーディオノートユーザーがいわゆる真空管アンプでは鳴らし難いものを使い楽々ドライブしておられるとのこと。その制動力の高さも大きな魅力だろうと思います。
今回日ごろ滅多に聴くことが出来ない超高級セットで音を聴かせて頂いた訳で、フェーズメーションとオーディオノートの音はかなり傾向の異なる音でしたが、両社の音に共通するのは音の静けさ。”極めればSNに至る”というのが私にとっての今回の最大の収穫だったかもしれません。開発者自身の主張も併せて体験できた今回の収録で私にとっても忘れられない体験になりました。斎藤さん、芦澤さん、堀部さん、本当に有難うございました!