(5/25)”遺す”使命
2017年 05月 27日
特に後半のSV-300LB,SV-310はちょっと世界が違う音。トランス出力ならではの表現力にTさんも私も改めて納得!という音だったように思います。この二機種はオマケでTさんのヴィンテージ球バージョンの音も収録していますので皆さんもどう違うのか、ご自身の耳で確認してみてください。
今回二日間、3本の収録を通して強く感じたことがありました。それは単にビジネスという観点でなく、私は真空管アンプを少し大袈裟ですが一つの”文化”として遺すことが自分のミッションなんだと思っている事に改めて気づいたと言い換えてもいいかもしれません。
今回の上京前日、あるメーカーの社長さんと電話で話していた時のことです。真空管機器専業メーカーとして20年近いお付き合いのある会社ですが。”これから何を作ります?”と伺った時に”いやもうね、CDプレーヤーを買う人いないでしょ?D/AコンバータにはUSBだけついてりゃ良いんですよ。同軸も光も必要ないし、パワーアンプももういいんじゃないですか。ヘッドフォンアンプですよ。ウチの倅もスピーカーで音楽なんて聴いてないしね。ヘッドフォンで5万円ぐらいのものが売れるんならヘッドフォンアンプも5万ぐらいまでは大丈夫じゃないんですか…”とお話されているのを聞いて唖然としたというか非常に寂しいなと感じました。
ビジネス的に売れるもの(市場があるところ)へ向かうのは間違っていないし、ビジネスとしては当然であるともいえるでしょう。一方でみんなが売れるものだけを見てそれだけを創っていたのでは音楽を聴くオーディオという奥深い文化が歪(いびつ)なものになってしまう。私は売れる、売れないよりも、真空管アンプで音楽を聴く歓びと真空管アンプそのものの音の気持ちよさを絶対に残す(遺す)べきと思っているからこの仕事をしてるのかも…ふとそんな風に気づいた気がします。
売れる、売れないよりも大切なこと、それは利益や効率という概念から程遠いものであることは何より自分が一番分かっています。でも(だからこそ)、次の世代の方にオーディオの楽しさと真空管アンプの魅力を伝えたい、それは自分の最大の目標なのかも…と感じた今回の収録でした。