(3/9)或る極致

昨日に引き続きTL3 3.0。急遽ライターS氏が大阪行きのところ途中下車して参戦してくれることになって一緒にあれこれやってます(笑)。これから縷々書くとしてS氏曰く"CD再生における或る極致かもね"と言った言葉が印象的でした。私は逆に"これがCDの音という事を忘れる意味においての或る極致"と感じています。それほど自然で滑らかな音。
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場所は第二。今日のプリはSV-722(C22)。パワーはS氏のリクエストでLM91A。D/Aは定番SV-192PROです。今日の目的は

1.TL3 3.0の内部アップサンプリング効果検証
2.MC-3+USB(マスタークロック)によるクロック同期効果の検証
3.クロック同期とRe-Clock(クロック洗浄)の効果比較

というもので、かなり集中力を要し正直かなり消耗している部分もありますが、簡潔に要点をレポートしたいと思います。因みにTL3 3.0のスタビライザーは標準品でなく7cmの従来品を使ってテストしています。

1.TL3 3.0の内部アップサンプリング効果検証

まずはTL3 3.0単独の状態で、内部アップサンプリング効果を検証してみることにしました。メーカーHPにはサラッと「CDの常識だった44.1kHzを、選択により88.2kHzまたは176.4kHzへアップサンプリングして出力します。高いサンプリング周波数に特有の緻密さや滑らかさが更に加わります」とだけ書かれていますがトランスポートの内部でアップサンプルするという発想は比較的新しいもので、最近ではSWD-CT10の大ヒットが記憶に新しいところです。TL3 3.0ではCDの基本クロックである44.1kの逓倍(整数倍)周波数である88.2k/176.4kのみを出力しているところに音への拘りを感じます。

製品情報では公開されていない(と思いますが)、このアップサンプリングに使用されているチップはTI社SRC4382。SV-192PROに採用されているSRC4792より僅かにスペックは劣りますが各種製品で採用されてきた実績のあるチップです。
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検証時のSV-192PROのアサインはClock Source=Bypass(入力クロックをそのまま受ける設定)としてCD再生中にTL3 3.0のUPSAMPLEボタンを押しながら44.1k→88.2k→176.4k→44.1k…を繰り返しつつ音質変化を聴いていきます。ひと昔前のSRCはレートを上げると上は伸びるが音が痩せる傾向があったのですが、SV-192PROに接続する限り、そのような傾向は皆無で聴感的にはレートが上がるごとにデジタル的なハードエッジな感覚が後退し繊細さ、滑らかさが増す印象。DAC側に88.2k/176.4kを受ける能力があるなら是非お試し頂きたい有用な機能といえます。

2.MC-3+USB(マスタークロック)によるクロック同期効果の検証

次のステップとしてマスタークロックを追加してTL3 3.0とSV-192PROのクロックを同期してみましょう。ここで飛躍的な音質改善が現れました。
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SV-192PROのアサインはClock Source=External,マスタークロック(MC-3+USB)側はMode=Internal,Clock Out=44.1k,Clock Multipliers=×1(44.1k)→TL3 3.0,×4(176.4k)→SV-192PROとなります。この状態はTL3 3.0,SV-192PROそれぞれの内部生成クロックのppmレベルの誤差によって生ずる時間軸の揺らぎが一台の、それも極めて高精度なマスタークロックに同期されることで全く無くなり、極めてクリアで曇りのない澄み切った音場が現れることを意味します。

まだハイレゾという言葉すら定着していなかった2008年、SV-192S(当時)の内部アップサンプリング効果は大きな衝撃を市場に与えた訳ですが、同時にクロックの音に与える影響の大きさもSV-192Sが広く伝えることとなりました。それまで殆どスタジオでしか使われることのなかったマスタークロックが家庭に入る大きなきっかけを作った製品と自負している訳ですが、一般のデジタル機器が持つと言われる20ppm~50ppmのクロック誤差がMC-3+USBによって0.1ppm(公称値)に改善され且つ同期された音は私どもが家庭で聴くCDの音質の概念を全く越えるもので、これにはS氏も"すごい!!"と目を丸くしていました。複数のマイクの僅かな位相差までも聴こえてくるような精緻極まりない世界です。

3.クロック同期とRe-Clock(クロック洗浄)の効果比較

最後に試したのがMC-3+USB独自の機能であるRe-Clockです(Re-Clockについてはこちらを参照ください)。リクロック=極めて正確なクロックをMC-3+USBの内部で生成しDACへ供給するという離れワザをMUTEC社が実用化した訳ですが、特にPCオーディオ(USB入力)には絶大な音質改善が見られることで世界的にヒットしているだけでなく今後のスタンダードを形成しつつあるリクロック…これがTL3 3.0でどうなるか試してみたという訳です。
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上記2とは接続自体が大きく異なります。2ではクロックのみを外部から供給していた訳ですが、リクロックモードではTL3 3.0のデジタル出力(AES/RBU)をMC-3+USBにダイレクトに入力します。上の写真でClock Multipliersが全て×1にアサインされているのはTL3 3.0を176.4kに上げているからです。少し細かい話になりますが、このモードではMC-3+USB→TL3 3.0のクロック同期はDEFEAT(無効化)されていますがSV-192PROへの176.4kの同期は生きている状態となります。

興味深いのはこのリクロック+同期モードの状態の方が上記2よりも音が滑らかなこと。よりアナログ的な質感が表出し、音のグラデーションが増し抑揚感が加わるイメージです。2のハイディフィニッション&クリアネスの世界も捨てがたいオーディオ的快感に満ちていますが、S氏も私もTL3 3.0のダブルベルトドライブ+SV-192PROの真空管バッファ付きD/Aという個性を最も美しく描き出すのは、このリクロックモードであろうという結論に達した次第です。

冒頭に書いた"CD再生における或る極致"、そして"CDの音という事を忘れる意味においての或る極致"の両方を体験できたひと時でした。気がつけば27時。S氏は予約したホテル代が無駄になったと横で笑っています。



by audiokaleidoscope | 2017-03-10 03:02 | オーディオ | Comments(0)
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