(2/29_2)禁断のフォノイコライザー聴き較べ!

今回の収録、2本目はレギュラーコメンテーターTさんをお迎えしてオーディオ機器のなかで最もマニアックかつ繊細な機器選びが必要と言われるフォノイコライザーの比較試聴をオンエアで行ってみようという企画でした。何もかもが初めて尽くしの”大放談!”のなかでも今回は最も深いテーマに挑戦という訳です。

フォノイコライザーはあらゆるオーディオ機器のなかで最もゲインが高いコンポーネントであることから回路構成,音作りによって表現が大きく変化します。例えばMCポジションのゲインが60dBとします。これは単純に言うと利得1000倍…つまり入力1に対して出力1000という世界ですから如何にクリティカルであるかは誰の耳にも明らかで、ある意味オーディオの総仕上げともいえる極めて重要な要(かなめ)な訳です。今回私自身も実際さまざまなフォノイコライザーの音を総まくりしてみて、音というより音楽そのものの迫真性が随分違うものだということを改めて理解できた気がします。家や会社ではここまでやることはありませんから(笑)。

リスナー諸兄のご意見に従って”聴き較べ対象以外の機器,ソースは変えない”ことを原則に早速公開試聴を開始します。
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トップバッターはHC-5EQ(アドバンス)です。先日行った”廉価帯キットアンプの聴き較べ”でも好評を博したEL34プッシュプル/プリメイン(最大出力30W/ch)。このHC-5EQはナカナカの優れモノで真空管プリメインでは希少なフォノイコ(MM/MC対応)内蔵モデル。フォノ部はFETヘッドアンプ+OPアンプの構成で真空管ではありませんが、トータルな音色の纏め上げ方は見事です。いわゆる半導体臭さは微塵もありません。中低域の量感を稼いで豊かな音に…という米田師匠の遺志はしっかりとHC-5EQに受け継がれていると申し上げておきましょう。近日中に当社サイトでも販売開始予定です。

続いての登場はプリ特集に引き続き2回目の登場、エレキットTU-8500です。
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このプリのバランスの良さについてはこれまで何度も述べて参りましたので繰り返しませんが、今回の特集で採用したのはフォノ(MM/MC)内蔵というポイントだけなく、フラットアンプのゲインにおいて3倍(約10dB)と1倍(0dB)を選択することが出来るところ。つまりフォノ入力を使い、フラットアンプのゲインをゼロにすれば見かけ上単体フォノイコと同じ使い方も出来るじゃないか!と気づいた訳です。この方法でフォノ出力をHC-5EQのLINE INに入力すれば変わるのはフォノ部のみということが言えます。これなら毎回真剣に聴いて下さっているマニアの皆さんにも納得頂ける筈です。

申し遅れましたが、今回のリファレンスLPはマイルスの”Round Midnight”。
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そしてエリック・フリードマンのチゴイネルワイゼン。
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この2曲を全モデルの課題曲として聴いた訳ですが、マイルスのミュートtpの先端部の輝きとシズル。そしてフリードマンのVnの撓り(しなり)と黄金色の音色。更には全体のエア(空気感)がポイント。HC-5EQは全体に包み込むような円やかさで聴かせる印象だった訳ですが、TU-8500は良い意味でスッキリした明るい音。クオリティ感も十分でOPアンプ+CR型イコライザーの素性の良さがしっかりと感じられる音でした。

因みにフォノイコにはNF型とCR型があります。昔からどっちが良いとか、どっちが上だという議論もありますが、他のオーディオ機器と同様、回路形式で優劣が決まるほどオーディオは単純ではありません。大切なのは自分にとって自然で、聴くほどに音楽との距離感の縮まる…そんな音。料理の味が材料の産地だけで決まるなら、そんなに簡単なことはありませんし、生涯の伴侶を健康診断結果だけで選ぶ人もいないのと同じです。

話を戻してフォノイコ(笑)。これから出てくるのは全てMC昇圧はヘッドアンプでなくトランス、イコライザー部は全て真空管といういわゆる高級モデルの登場です。登場するのは人気モデルSV-722EQ。722EQにはマランツ7typeマッキンC22typeが用意されています。元々はSV-722(プリアンプ)に内蔵されていたフォノ部の評価が高く、ぜひフォノ単体で!というご要望を頂いて製品化したものです。中には持っているSV-722がマッキンtypeなので722EQはマランツtypeにして真空管二大プリの音を両方楽しむ、という方も多数いらっしゃいます。結果的にスタジオの小型モニターでも両者の差異は明確に現れました。
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電源部,シャーシ,機構部品は共通なので外観上の差異はフロントのカラーリングのみ。マランツ(上)がブラウンでマッキン(下)がチャコール(グレー)です。
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SV-722(複合プリ)との差異(改善点)はフォノ入力が2系統に増設されたこと。更にいえばシャーシレイアウトの自由度の高さから残留ノイズが複合モデルより大幅に下がっています。更にいえばカップリングコンデンサーのブランドも複合モデルと異なり、音質的個性をより際立たせているところがSV-722EQの存在価値といえるでしょう。

マランツtypeで印象に残るのは冴え冴えとした高域の輝きと伸び。高域の倍音成分が豊かで拡がりのある表現が得意です。対してマッキンtypeは中低域に厚みと余韻があり、骨格感も明確であることからマランツ7ファンがどちらか言うとクラシック指向,マッキンC22がジャズ指向という大きな流れと共に多くの方に愛用されてきたのも頷ける話です。ただマランツtypeでジャズはだめとかマッキンtypeでクラシックは不得意という事は全くなく、敢えて言えばオールラウンドに楽しまれる方はマッキン,弦の高域を特に美しく、という方はマランツという感じかと。聴感上のダイナミックレンジは僅かにマランツtypeが有利ですが、余裕度という点ではマッキンtypeと申し上げた方が分かりやすいかもしれません。

少々お楽しみでマッキンtypeにTさんご持参のテレフンケン(ダイヤマーク)ECC83を使ってみました。そうすると低域の弾力性が増し、音像が更にクリアになる感じをオンエアでも感じて頂けると思います。ゲインが高い分、球の違いにも敏感に反応するところがフォノイコの楽しいところです。

そして最後に登場したのが私どもの不動のリファレンスモデルとして君臨し続けているSV-310EQ。このモデルはSV-310(プリ),SV-91B(300Bシングル)のシリーズモデルとして開発されました。開発にあたって”是非WE310A(当時)を使ったフォノイコを!”というオファを踏まえ、310Aを三極管接続し整流管を使って設計しようと決め、最終的にECC88(6DJ8)を増幅段に加え、橋本電気でMCトランスを別注し音を熟成させたモデルです。一時期WE310Aの調達が途絶えたのち、LM310Aの製造に漕ぎ着けて製造再開しただけあってSV-310,SV-91Bともども極めて愛着の深いモデル。
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まず今回のリファレンスのHC-5EQに接続してマイルス、そしてフリードマンを聴いてみた訳ですが、何と言うか、どこと言って際立った個性がある訳でもないのに、音全体の密度感というか存在感というか、迫真性というか、全てにおいてクオリティが上がってTさんも大満足。発売開始から10年以上を経てもなお、これ以上のフォノイコは考えられないと仰って下さっている方が多数おられるのも事実です。

折角なので…ということで聴き納めに登場したのが純正組み合わせ。SV-310EQにSV-91Bを組み合わせてみました。Tさんと私で”とびっきりのLPを!”と選んだのがこれです!
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私はヨーヨー・マのバッハ無伴奏(3枚組)。TさんはジャシンタのAutumn Leaves(45回転)でした。今回のフォノイコライザー特集のフィナーレを飾るこの2枚、リスナーの皆さんにはどんな音でお届け出来るか…楽しみにしています。オンエアは4/15(金)20時~22時です!




by audiokaleidoscope | 2016-03-03 11:17 | オーディオ | Comments(0)

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