ギターアンプに求められるもの
2014年 09月 14日
みなさん、こんばんは。
先週に続いて今日もライブでした。
名古屋ではかなりの大箱ですが、満員で凄い熱気。
家庭と違い1000人近いオーディエンスにきちっとした音を聞いてもらうのは演る側も裏方さんも含め大変なことだろうと思いますが、今日はとても良い音で楽しむことが出来ました。手前味噌を恐れずに申し上げると私が関わらせて頂いている上手(かみて)のギターアンプの音はキレの良さでホール最後尾までしっかり飛んでいて大満足。
同じ真空管でもオーディオアンプとギターアンプでは設計のあり方そのものが全く異なります。オーディオアンプは如何に歪ませないかが大前提な訳ですが、ギターアンプ(特にロックでは)如何に「美しく歪ませる」かが重要ですので。
「美しく歪ませる」・・・考えてみれば妙な言葉のように感じるかもしれませんが、これは非常に重要な事です。今日のアンプはMarshallだったのですが、他のギターアンプでも多くの場合、電圧増幅段をオーバードライブさせることで、いわゆる「ディストーション」サウンドを作り出しています。一番最初に「アンプの球を換えたいんだけど・・・」と相談を受けたとき、そのプレーヤーの音から直ぐにあるイメージが浮かびました。つまり電圧増幅段はなるべくハイゲインな球を選び、出力段はプレート電流的にヘッドルームの高い球を用意する、というものです。
ギターアンプの音に関しては自論として「ラウド(大音量)であるほどクリーンでなければならない」というポリシーがあります。つまり、今日のようにエアボリュームの大きな空間ほど大音量が求められるのは当然ですが、そういう時ほど音の芯を残しながら遠くまで音の鮮度を落とさずに飛ばす為には、必要以上に音を潰さず、芯を残して一つ一つの音と音の間を見えるようにしておかねばならないという事。歪ませ過ぎると音が混濁して腰砕けとなり、他の楽器の音の間に埋没して音飛びが著しく損なわれます。
これはまさに「上方リニア」の発想そのものに通じるもので、ギターアンプが何故多極管出力段を持つかも先日の話と符合します。多極管の個性である「音をあげてもうるさくない」は此処でも極めて重要なポイントであり、一次関数的な歪率の推移を示す真空管ギターアンプが、或る入力電圧から二次関数(というよりも直角的に)歪む半導体アンプよりもプロに好まれるのはこの為であります。
オーディオの世界では真空管は残念ながら少数派ですが、ギターアンプ(特にプロの世界)においては圧倒的シェアと支持の高さを誇っています。それは「歪み」という要素に対しても美しさを求める人にとって、真空管が必要欠くべからざるデバイスといえるからです。